イネスの着こなし
ベーシックなカジュアルアイテムを、サイジングで遊んで。
――あなたはパリ・シックを代表するスタイルアイコンとしても注目を集めていますね。今日のファッションのポイントを教えてください。
「今日はそんなに難しい着こなしじゃないわ。シャツ、Tシャツ、デニム、ベルトまで全てユニクロなの! シャツをジャケットのように着こなしているのだけど、これは日本のSサイズ。とっても小さいんだけど、それも面白いと思っているの。サイズをあえて外して着こなすのが楽しかったりするじゃない? わざと大きいデニムをチョイスしたり、トップスをあえて小さいサイズにしてみたりね。若い子がフリーマーケットで買ったサイズが合わないような、アイテムのような遊び心をいつまでも忘れないようにしたいと思っているの」
イネス流スタイルTIPS
――ご自身が書かれたスタイルブックの中で「スタイリングにはあえて外しを」と語っていますが、あなたにとって“定番の外し方”は何でしょう。
「そうね、コム・デ・ギャルソンにヒールを合わせるみたいなものよ。例えば背が低いからといってヒールを履くという概念ではなく、そのファッションに適しているから履くの。ボロボロのデニムにVネックのセーターを着ていても、ヒールを合わせればグラマラスになるようにね。いつも心がけていることは、いろんなことをミックスすること。プラスしたり、マイナスしたり。服と遊んで自分らしく着こなすのが大切ね」
――年齢を重ねるにつれて、ファッションスタイルも変化していきますが、あなたの20代、30代、40代にスタイルの変化はありましたか? あったとすれば何をきっかけにどのように変化していったのでしょうか?
「20代のころは、時代は70年代の終わりから80年代の前半だったので、大きなイアリングを身につけて、チークをたくさんつけて、ビッグヘアにして……。みんなが私のファッションを見ていると思って必死だったわ。ファッションもクレイジーだったしね。肩パッド入りの大きなジャケットを着たり、シャネルのビッグチェーンを身につけたり。ファッションスタイルや、自分がよく見られる方法は、人生をかけて見つけるもの。だから今は昔より“マッチベター”よ!」
――あなたのファッションポリシーは何ですか?
「ロックなアイテムをいつも身につけるようにしているわ。今日ならこのブーツね。あとは、全てを取り入れる必要はないけれど、ファッショントレンドをフォローすることは大切だと思っているの。少しだけそれをプラスすることで、新鮮な着こなしにブラッシュアップされるからね。昔では考えられなかったビルケンシュトックを、今はたくさん所有しているようにね」
イネスのバッグの気になる中身は?
今日のブーツと揃えたというバッグは、ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)のもの。世界を旅する彼女のコミュニケーションツールとしてマストなiPhone、iPhoneチャージャーもバッグにIN。パリで購入したというラウンドシェイプのサングラスに、赤のレザーバンドが女性らしいジャガー・ルクルト(JAEGER-LECOULTRE)のウォッチ、カラフルなコム・デ・ギャルソン(COMME DES GARÇONS)のポーチをお財布替わりに。自身のブランドのミラーとノートブックに、お決まりの万年筆、ポップなティッシュがお茶目!
4度目のユニクロコラボ
――ユニクロとのコラボも、今回で4度目ですね。毎回どのようにコラボレーションが作られているのでしょう?
イネス:「UNIQLOのデザイナー、直己(滝沢直己氏)が生地サンプルとムードボードを、私もムードボードを用意してディスカッションをするんだけど、そこまで話し合わなくても大体お互いの好きなことが共通しているの」
滝沢氏:「最初にイネスに会った時に、お宅に訪問してクローゼットを見せてもらいました。なので、彼女がどんなテイストが好きかわかっていたので、彼女のデザインしたいものが手に取るようにわかりました。
イネス:「まるで、カメラを家に張り巡らしたように、彼は私がやりたいものをわかっているのよ!」
――そのインスピレーションはどこから来るのですか?
イネス:「フリーマーケットで見つけたファブリックからアイディアを得たりすることが多いわ。直己は私が大好きなものを見つけてくる天才よ! お互いにいろいろなものを見つけてきてはめ込む、まるでゲームみたいなの。たくさんのアイディアからアイテムを絞り込まなくてはならないのが残念だけど(本当の贅沢は選べるということだと思っているから)、でも直己と一緒のテイストを持っているから、厳選するのも難なくできるわ」
インスピレーション
――このコレクションのインスピレーションは?
「“セルフィッシュ”ね。私が欲しいもの、欲しくても探せないもの、実際に身に付けたいもの。大体の女性は1時間という限られたランチタイムに30分で洋服を見つけることが多いと思うんだけど、試着もしないで気軽に買えるものが揃っているわ。コラボレーションアイテムは、宣伝がきちっと行われるのでお客様は発売日に行列を作って入り、買い漁るように商品を購入する、そして4日後にはお店がすっからかんということも多いけど、このコラボレーションはアイテムが70ピースとたくさん揃っていることが何よりも幸せなことね。カジュアルにも、フォーマルにも、着られるコレクションよ」