「オーディションで受かるというのは一番うれしいこと」
世界中でロングラン上演されている舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』がついに日本上陸。現在絶賛公演中の本作で、向井理は映画の19年後の世界で3児の父となったハリー・ポッターを演じている。「ハリー・ポッターの世界観が戯曲としてどう描かれ、舞台化されるのか、また父になったハリーとその息子の親子関係が描かれているという点に興味が湧きました。自分が家庭を持っていなかったら、この役を演じていなかったかもしれません」
自身の環境の変化や探求心も影響しているが、それ以上に今作の出演に際し、向井の最大のモチベーションは厳しいオーディションにあった。「最近はオーディションを受ける機会がほとんどないので、海外の方がまったく知らない日本人に対してどういうオーディションをするのかを知りたかった。この仕事をしている以上、オーディションで受かるというのは一番うれしいことですから」
「全身で楽しさが味わえる体験型の舞台」
気になるのは、ステージを駆け回る3時間40分という長時間の舞台を乗り切るための体力づくりだ。「特別なことはしていません。極力外ではなく家で食事をしたり、子どもたちと季節を感じながら旬のものを食べたり。当たり前のことを当たり前にしていることが、規則正しい生活になっているのかもしれません」
映像ではあらゆることが可能な時代に、舞台を観ることの意義を彼はこう語る。「目の前で起きていることが本当の魔法に見えたり、火の熱さを肌で感じたり。全身で楽しさが味わえる体験型の舞台となっているので、芝居とイリュージョンの両方の素晴らしさ感じてもらえるのではないかと思います」
1. ロングランの舞台を乗り切るために聴いている、特別な音楽はありますか?
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』もそうですが、激しい舞台はアドレナリンが出ているので、帰宅してからもすぐには眠れないんです。なので僕の場合は、上がり切ったテンションを下げるために聴いている音楽があります。坂本龍一さんの2009年のアルバムで『out of noise』という作品です。ヒーリングミュージックのような心を落ち着かせてくれる音楽があるといいなと思っていたころに出合い、これだと思った一枚です。
2. 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』のように親子関係が描かれ、強く心を打たれた映画は?
ベタですが、ずっと変わらないのが『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997)です。戦争という激動の時代をテーマにしながらも、コメディとして優れた作品にしている。ロベルト・ベニーニが監督、脚本、主演と一人ですべてをやっているので、その人の世界観ができるというのはちょっとずるい気もしますが、残された子どもにとっても、いいお父さんだったと思える親子関係が描かれていると思います。
3. 若いころ、何度も読み返すほど夢中になった本は?
宗田理さんの「ぼくら」シリーズが大好きで、なかでも『ぼくらの七日間戦争』をよく読み返しました。本というのは頭の中でいろんな想像を巡らせて冒険ができるものですが、その冒険に初めて出会ったのがこの本でした。今でも読み物に関しては完全なるファンタジーが好きで、最近では森見登美彦さんの『夜は短し歩けよ乙女』や『有頂天家族』などを読んでいます。世界観がすごすぎて実写化できないような作品が面白いんです。
4. 語学力やコミュニケーション力アップにつながったと思う作品があったら教えてください。
それこそ今回の舞台をやるにあたり、海外の演出家の方にイギリスの文化を知ることができるからと勧められてTVドラマシリーズの「ダウントン・アビー」を観ました。普段海外作品は字幕ナシで観るのですが、イギリス英語に慣れていないため、字幕付きで観ました。アイロニックな台詞の数々が、いかにもイギリスという感じで楽しめました。
5. 「まるでファンタジーだ」と感じた場所は?
カンボジアのアンコールワットの近くにアンコールバルーンという空から遺跡群を眺められる気球があるのですが、その気球から眺めたアンコールワットの姿には衝撃を受けました。朝焼けだと遺跡全体が見えるのですが、夕方になると太陽が後ろに沈みシルエットだけが見える。その情景を観たとき、まるで一枚の絵画を観ているような感動がありました。1000年以上も前に知恵を使って作ったと思うと、人間ってすごいなと思いますね。
Text: Rieko Shibazaki Editor: Yaka Matsumoto

