スーパーモデルで女優のカーラ・デルヴィーニュ。彼女が母パンドラから受け継いだのは素晴らしい遺伝子だけではない。「ママはよく私たちに言ってたの。『退屈だって言う人が退屈な人なのよ』って」と話すカーラは、デルヴィーニュ三姉妹の末っ子だ。母の教えは明らかに生き続けている。それは、ロサンゼルスに完成した新居が見事に証明しているように、カーラ・デルヴィーニュは退屈とは程遠い。この家はサントロペ、コニーアイランド、コッツウォルズのコテージ、モンテカルロが融合したような感じだ。クラクラするような組み合わせだが、カーラにとっては自分らしい家に出来上がったようだ。
「仕事柄、いろんな帽子や衣装を身につけることが求められる。多彩なキャラを演じるのが大好きだから、自分の家でも違うテーマやムードを表現したいと思ったの」と話すカーラは、豪勢な暮らしを好むことに悪びれてはいない。
プライベートな娯楽施設とも言える新居を実現した建築家のニコロ・ビニー(ライン・アーキテクチャー)は、彼女の派手な要望にやる気満々で応えている。
まず、「自然」というテーマだ。ビニーはこのテーマを数多くのデザイン表現を用いて目に見える形にした。特大のサギが描かれたグッチの壁紙で覆われた壁、ビリヤード室には巨大なヘビが描かれた絨毯が敷かれ、上階に続く階段に敷かれた絨毯には、階段を上るヒョウが描かれている。メキシコ人アーティスト、セルヒオ・ブスタマンテによる鳥の群れの彫刻作品、シダ、ヤシ、庭木など莫大なお金が投じられたグリーンにも注目したい。
そして次のテーマが「お楽しみ」だ。天幕を張ったポーカールーム、気分が上がるボールプール、奇抜な帽子が展示された壁、コスプレ・パーティー用の衣装部屋、浮き輪やフロートが浮かぶプールの側には地面に埋め込まれたトランポリンが2つ。
「ゲーム大好き。ジェスチャーゲーム、ビールポン、ポーカー、カードゲームの『カード・アゲンスト・ヒューマニティー』、綱引きゲームとか、楽しいって思えるものなら何でも好き。友達が来るとここは障害物コースみたいになるの。『不思議の国のアリス』的な遊び場って感じね」とカーラ。さらに「嫌なことがあった日はボールプールにダイブする。ボールプールの中じゃ、泣くのはムリよ」と付け加える。
今回のリノベーションで最も興味深い特徴の一つが、前オーナーが使っていた家具の大半をそのまま残していること。
「全部捨ててしまうのはもったいないと思ったの。手もとにあるものを活かすこと、それがサステナビリティに繋がることだってある」とカーラは言う。「リビングにある大きなクリスタルシャンデリアは私の好みとはちょっと違っていたから、真ん中にミラーボールを置いてカラーライトを加えてみたの。いきなり私っぽくなった」
名目上は英国風カントリースタイルのこの白煉瓦の邸宅は、スーパーマーケットチェーン、ボンズを創業したフォン・デア・アーエ一家のために1941年に建てられた。信仰心の篤い一族であるフォン・デア・アーエ家は、1987年にロサンゼルスを訪れたローマ教皇ヨハネ・パウロ2世をこの家でもてなしたといわれている。
屋根裏部屋には、鏡張りの天井、タッセル付きのブランコ、クレージュのロゴにインスパイアされたS字形に配置されたソフトシート、手首・足首用拘束具、そしてお約束のポールダンス用のポールが完備されたパーティー部屋もある。もしローマ教皇がこの部屋を目にしたなら、思わず二度見していたかもしれない。
「カーラは、純粋な楽しみを身をもって示している人。ここは彼女にとって究極の家を表現したもの。つまり、彼女を夢中にさせる物事がいっぱい詰まったカーラ流ファンタジーなんだ」とビニーは説明し、自由奔放なクライアントと、彼女を取り巻く国際色豊かな女子たちのクレージーな要求を叶えてあげることに喜びを見出していたことを強調した。
「ちゃんとしたダイニングやリビングがあるし、素敵なキッチンだってある。けれど、ある種のジャーニーでもある。深く入り込めば入り込むほど、宝物をたくさん発見する旅」とカーラが主張する家には、シャネルのサーフボード、デヴィッド・ボウイを追悼してデザインされたバスルーム、何千錠ものエクスタシーが透明アクリル板に同心円状に埋め込まれたケミカルXの作品など、贅を尽くした豪華な装飾品で飾られている。
結局のところ、「カーサ・カーラ」の成功の秘訣はそこにある。つまり、華やかで、いたずら好きで、ぶっ飛んだユーモアの持ち主であるオーナーを完璧に反映しているように思える家ということだ。「『開いた口がふさがらない』をデザインで表現するとこうなるの。誰の家にいるか間違えようがないでしょ」とカーラは結論づけた。
Photos: Laure Joliet Text: Mayer Rus Stylist: Amy Chin
