「母は子どもの頃からとにかくよく褒めてくれました」
映画でも表現されていますが、お魚が大好きという気持ちを貫いてこられたのは、家族や友達、先生そして漁師さん、周りのみなさまの応援があったからこそ。特に母は子どもの頃からとにかくよく褒めてくれました。小さい頃はトラックが大好きで夢中になって絵を描いていたら「すごいね! 動きだしそうだよ」。タコやお魚の絵などを描くと、「お魚が生きてるね! 飛び出してきそう♪」と。それがものすギョーくうれしくて、「わーい、もっと描くよー!!」という気持ちになっていました。
お魚を大好きになってから、飽きたと思ったことは一度もありません。お魚はギョ(五)感の喜びを与えてくれます。感謝の気持ち“大漁”です。知れば知るほど奥が深く、全部を知ろうと思っても不可能。それでも1種でも多くのお魚を見たい、描きたい、食べてみたい、住んでいる場所に行ってみたい……。小学生のときは大きな図書館やお魚屋さんを探して自転車で知らない町を走りまわり、二十歳の頃には日本にいないお魚に会いたくてニュージーランドやモナコまで一人旅をしました。いつもお魚が、元気と勇気と好奇心で心を満たしてくれます。
「実はさかなクンにはお魚の次に好きなものがあリます」
実はさかなクンにはお魚の次に好きなものがあリます。中学生のときに「吹奏楽部」を「水槽学部」と勘違いして部活見学に行って出合った音楽です。ドンドン・プカプカと音がして、「スイソウ違いだ!」と思ったんですけど、アンモナイトのお化けみたいな形の大っきなチューバが地響きみたいな音を出したり、ちっちゃい巻貝みたいなピッコロがピュってかわいい音を鳴らしたり。大小さまざまな形の楽器たちがいろんな音色を奏でていました。その個性的な姿がお魚の世界のように見えて面白いなと思い、音楽や楽器にも夢中に。楽器を見たい好奇心から、パリへ一人旅もしました。
好きなもの、熱中するものが見つからないという人へのアドバイスでギョざいますか? 好きの度合いは違うかもしれませんが、「好きなものがない」人なんてきっといないです!!心が癒される音楽、やって楽しいスポーツ、作って楽しく美味しいお料理。それが「好き」な宝物でギョざいます。ずっとずっと、「好き」を大切にしていきましょう。
さかなクン/東京海洋大学名誉博士・客員教授、画家
東京都出身、館山市在住。全国各地での講演や執筆を中心に活動。2010年には絶滅したと思われていたクニマスの生息確認に貢献。海洋生物の普及・啓発活動の功績が認められ、2012年に「海洋立国推進功労者」として内閣総理大臣賞を受賞した。メディアでも幅広く活躍し、現在はNHK「ギョギョッとサカナ★スター」にレギュラー出演中。
Interview & Text: Rieko Shibazaki Editor: Yaka Matsumoto
