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韓国のオルタナティヴR&Bとヒップホップ界、注目の若手は彼らだ!【韓国カルチャー最前線 vol.2】

韓国の音楽と言えば、K-POP。しかし、この数年で アンダーグラウンドとメジャーシーンの架け橋となるサウンドが進化中だ。特に、ナムジャ(男性)シンガーの活躍が目覚ましい。 
CrushやZICOetc.、韓国におけるオルタナティヴRBとヒップホップの台頭。【韓国カルチャー最前線 vol.2】

EDMにキャッチーなサビを乗せ、独自の進化を遂げたK-POP。世界基準となったシンガーとしてBLACKPINKが挙げられるが、彼女たちのデビュー曲「Whistle」(16)が、ミニマムなヒップホップを基軸とした楽曲だったように、韓国音楽シーンではブラックミュージックを下敷きにしたものが多い。

「伝統国楽である民謡のリズム感が、ブラックミュージックと近いグルーヴを持っていて、韓国人はロックよりもR&Bやヒップホップに反応しやすい」と分析するのは、韓国音楽を紹介する「Bside」を運営し、音楽プロデューサーでもあるキム・ソニ。

その証拠に、多くの韓国人は裏拍でリズムをとるなど、ブラックミュージックの本質的なものがDNAに組み込まれている。そんな性質があるせいか、ザ・ウィークエンドやフランク・オーシャンなどが2012年頃から構築した“オルタナティヴR&B”が、韓国で広く浸透している。

シルキーなオルタナR&Bが韓国音楽のトレンドに。

Crush/ドライなファルセットとしなやかなリズムの取り方が特徴的なR&Bシンガー、クラッシュ。「愛の不時着」の劇中歌「Let Us Go」(19)が主要チャートの1位となるなど、高い音楽性をキープしながらメジャーシーンとコネクトする重要人物だ。 Photo: ©P NATION

オルタナR&Bとは、従来のR&Bよりもシルキータッチだったり、90年代に流行ったモダンなビート使い(アリーヤやディアンジェロに代表される)を織り交ぜた浮遊感ある音楽を指す。韓国では2015年からトレンドとして盛り上がりを見せてきた。  

シーンの先駆者と呼ばれるZion.Tに見出されたCRUSHはその代表。元ラッパーなだけあり、リリックの紡ぎ方に細かなリズムが刻まれ、チョコレートがとろけるような甘いヴォイスが特徴だ。

ZICO/アイドル要素の高い7人組ユニットBlock Bのラッパーとしてデビュー。2015年あたりから多くのシンガーとのコラボや楽曲提供を行い、ソロとしてもコンテンポラリーなサウンドで第二のブレイクを果たした。彼も歌うラッパーとして知られる。 Photo: ©KOZ Entertainment

また、徹底してメロウなミッドテンポをキープし続けることも忘れてはならない。同じくヒップホップをルーツに持ち、歌とラップの二刀流で人気を博すのがZICO。今年発売した「Any Song」は米ビルボードに注目され、韓国内ではダンスチャレンジがSNS上で話題となった。

オーディション番組が生んだヒップホップ界のスター。

CODE KUNST/都会の侘しさと希望をモダンなトラックに落とし込むコード・クンストは、まだ知られていない若い才能を発掘することに長ける作曲家。大人のための新しいヒップホップ・スタンダードとの呼び声高い最新アルバム『People』(写真)は必聴。 Photo: ©AOMG   

そして、これらの男性シンガーが支持される理由の背景として、とあるサバイバル・オーディション番組が存在する。

「2012年から始まった『SHOW ME THE MONEY(SMTM)』のヒットで、ラップやR&Bが、大衆的なジャンルとして認識されました。ZICOやCODE KUNSTなどはプロデューサーとして参加し、K-POPアイドルたちからも尊敬される存在になっています」(キム・ソニ)。

pH-1/NY出身の韓国系アメリカ人のラッパー、PHワンは、多様性や個性を賛美するリリックを多用し、USトレンドと密にシンクロ。やわらかな高音ラップと文化系ヴィジュアルとの組み合わせ、楽曲によって“歌う”柔軟な姿勢で、キャラを確立。 Photo: ©H1GHR MUSIC    

バトルのセミファイナルまで残ったpH-1は、ジャズやファンク、フューチャーバウンスなど、トレンドの音色を絶妙にツイストさせる韓国ヒップホップシーンを牽引する一人となった。

幼少期をグアムで過ごし、英語と韓国語を織り交ぜたラップを武器とするDPRライヴ。グルーヴ感あふれるトラックに重なるまろやかなフロウは、いつまでも聴いていたくなる心地よさ。まずは「Jasmine」(17)のスイートな気だるさを、ぜひ。Photo: ©UNIVERSAL BROTHERS KOREA  

そのほかにも、DPR LIVEやReddyといったシーンを代表する若手ラッパーたちが続々と増えている。  どんなときでもそっと寄り添ってくれるスムースなタッチ。

大人の耳にもなじみやすい。ガールパワーが炸裂する今のK-POPシーンだが、メジャーの水面下でじっくりと音を奏でるのは、声も顔もほんのり甘い男たち。聴かないわけにはいかない。    

CHECK>>現地音楽通もチェックする、コリアン・サウンドのプレイリスト。

紹介した5人以外にも、このジャンルのアーティストは数えきれないほど存在する。欧米のトレンドを独自の解釈で再構築したDEANや、ソウル大出身の文化系オーラでヒップホップを“普通の女子”たちに広めたBeenzinoなどのマークすべきトラックをプレイリストに。

Editor: Toru Mitani