EDMにキャッチーなサビを乗せ、独自の進化を遂げたK-POP。世界基準となったシンガーとしてBLACKPINKが挙げられるが、彼女たちのデビュー曲「Whistle」(16)が、ミニマムなヒップホップを基軸とした楽曲だったように、韓国音楽シーンではブラックミュージックを下敷きにしたものが多い。
「伝統国楽である民謡のリズム感が、ブラックミュージックと近いグルーヴを持っていて、韓国人はロックよりもR&Bやヒップホップに反応しやすい」と分析するのは、韓国音楽を紹介する「Bside」を運営し、音楽プロデューサーでもあるキム・ソニ。
その証拠に、多くの韓国人は裏拍でリズムをとるなど、ブラックミュージックの本質的なものがDNAに組み込まれている。そんな性質があるせいか、ザ・ウィークエンドやフランク・オーシャンなどが2012年頃から構築した“オルタナティヴR&B”が、韓国で広く浸透している。
オルタナR&Bとは、従来のR&Bよりもシルキータッチだったり、90年代に流行ったモダンなビート使い(アリーヤやディアンジェロに代表される)を織り交ぜた浮遊感ある音楽を指す。韓国では2015年からトレンドとして盛り上がりを見せてきた。
シーンの先駆者と呼ばれるZion.Tに見出されたCRUSHはその代表。元ラッパーなだけあり、リリックの紡ぎ方に細かなリズムが刻まれ、チョコレートがとろけるような甘いヴォイスが特徴だ。
また、徹底してメロウなミッドテンポをキープし続けることも忘れてはならない。同じくヒップホップをルーツに持ち、歌とラップの二刀流で人気を博すのがZICO。今年発売した「Any Song」は米ビルボードに注目され、韓国内ではダンスチャレンジがSNS上で話題となった。
そして、これらの男性シンガーが支持される理由の背景として、とあるサバイバル・オーディション番組が存在する。
「2012年から始まった『SHOW ME THE MONEY(SMTM)』のヒットで、ラップやR&Bが、大衆的なジャンルとして認識されました。ZICOやCODE KUNSTなどはプロデューサーとして参加し、K-POPアイドルたちからも尊敬される存在になっています」(キム・ソニ)。
バトルのセミファイナルまで残ったpH-1は、ジャズやファンク、フューチャーバウンスなど、トレンドの音色を絶妙にツイストさせる韓国ヒップホップシーンを牽引する一人となった。
そのほかにも、DPR LIVEやReddyといったシーンを代表する若手ラッパーたちが続々と増えている。 どんなときでもそっと寄り添ってくれるスムースなタッチ。
大人の耳にもなじみやすい。ガールパワーが炸裂する今のK-POPシーンだが、メジャーの水面下でじっくりと音を奏でるのは、声も顔もほんのり甘い男たち。聴かないわけにはいかない。
紹介した5人以外にも、このジャンルのアーティストは数えきれないほど存在する。欧米のトレンドを独自の解釈で再構築したDEANや、ソウル大出身の文化系オーラでヒップホップを“普通の女子”たちに広めたBeenzinoなどのマークすべきトラックをプレイリストに。
Editor: Toru Mitani