大きな話題を集めていたティム・バートン監督の最新作「ウェンズデー」が、Netflixにて配信中だ。『アダムス・ファミリー』のウェンズデー・アダムスを主役に据えた青春ファンタジーホラーは、11月23日の配信から現在に至るまで、Netflixグローバルトップ10のテレビ(英語)部門で3週連続1位を獲得する人気を博している。
「ウェンズデー」は不気味なトーンとセットデザイン、キャストたちの演技、ひねりの効いたプロットが高く評価されているが、このシリーズを覆う陰鬱さの背後には、さまざまな小ネタやレファレンスが意図的に隠されている。はたしてあなたはこのシリーズに隠された、映画『アダムス・ファミリー』(1991)、あるいはティム・バートン監督作品にまつわるネタや秘密のメッセージをすべて発見することができただろうか? ウェンズデー・アダムスのような超能力がない人のために、見逃しているかもしれないすべての秘密をここに記しておこう。
1. セットにはティム・バートン映画の引用が散りばめられている
美術監督のマーク・スクルートンが、米エンタテインメント誌『バラエティ』やNetflixのファンイベント「Tudum」で語ったところによると、ドラマのセット、特に普通の人間たちが住む町ジェリコには、多くのレファレンスが仕込まれているという。「ジェリコの町の商店の名前は、(『アダムス・ファミリー』の原作者である)チャールズ・アダムスの漫画に描かれているものをそのまま使用しています。花屋、靴屋、古着屋などがそうです」
原作への言及だけでなく、ウェンズデーが通う臨床心理士のオフィスの窓には、本シリーズのショーランナーであるマイルズ・ミラーとアルフレッド・ガフの名前も。また、本作を手がけるティム・バートン監督作品に関する引用も多々ある。タイラーが働く風見鶏カフェにはいくつも金属製の風見が壁にかけられているが、その中には『スリーピー・ホロウ』(1999)の首なし騎士や、『チャーリーとチョコレート工場』(2005)のウィリー・ウォンカの帽子も。また、骨董品店ユライアーズ・ヒープでは、過去のティム・バートン作品から引用された衣装を着たネズミたちのはく製が売られている。さらにネヴァーモア学園のウィームス校長のオフィスには、『ビートルジュース』(1988)のシュランケンヘッドが飾られている。
2. ウェンズデーがピルグリム(巡礼者)を嫌悪する理由は『アダムス・ファミリー2』を観ればわかる
ウェンズデーは第1話で、開拓者であるピルグリム憎悪からカフェで乱闘騒ぎを起こしてしまう。彼女がジェリコの町にある巡礼がテーマのアミューズメントパーク「ピルグリムワールド」とピルグリムを嫌うのは、弟のパグズリーとともに「キャンプ・チペワ」に送られた『アダムス・ファミリー2』(1993)に直接言及している。
同作でウェンズデーを演じたクリスティーナ・リッチは、キャンプのハイライトである感謝祭の劇で巡礼者の非情で残酷なさまについて独白をし、舞台に火を放っている。また、今作で描かれているネヴァーモア学園でのウェンズデーのアーチェリーシーンは、映画『アダムス・ファミリー2』でウェンズデーと弟がアーチェリーを練習しているシーンの引用だ。
3. 指を2回鳴らす秘密のスナップは、オリジナルのテーマソングがネタ元
ネヴァーモア学園の秘密結社「ナイトシェード」の集会場に行くには、隠し通路を通らなければいけない。その扉を開けるのは魔法の言葉ではなく、魔法の音。パチン、パチンと指を2回鳴らすと集会所へと続く入口が開くのだ。このアイデアは1964年のオリジナル版のテーマ曲が元になっている。
4. ガーゴイルは学園の派閥を象徴
美術監督マーク・スクルートンは、『バラエティ』やNetflixのファンイベント「Tudum」で本シリーズのプロットに関する大きなヒントを語っている。ネヴァーモア学園には怪物をかたどった彫刻、ガーゴイルがたくさん飾られているが、これらは校内の4代派閥を表すようにデザインされているという。「だからヴァンパイア、ゴルゴン(髪が蛇の怪獣)、セイレーン(海の怪物)の形をしたガーゴイルがいるんです」
5. 弟パグズリーの登場シーンは映画とそっくり
いじめられっ子たちにロッカーに閉じ込められ、ウェンズデーに助けだしてもらうというのが、パグズリーの初登場シーンだ。パグズリーは口にリンゴをつめられ、体を縛られて身動きが取れない。この演出は、1991年の映画『アダムス・ファミリー』を意識したもので、同作でもパグズリーは縛られてリンゴを口に突っ込まれていた。唯一の違いはというと、映画版ではウェンズデーが彼に向って矢を放っていたことだ。
6. アダムス・ファミリーの他の面々も、それぞれの形で登場
シリーズには、パグズリー、モーティシア、ゴメス、ラーチ、フェスターおじさん、ハンドと、アダムズ・ファミリーのメンバー全員登場するが、グラニーおばあちゃんや、オフィーリアおばさん、ゴメスのいとこのカズン・イットなど、親戚たちもさまざまな形で出演している。髪の毛だけでできた非人間的生き物で、帽子とサングラスと意味不明な話し方で知られるカズン・イットは、秘密結社ナイトシェードの地下室に肖像画となって登場。モーティシアの姉オフィーリアおばさんとグラニーおばあちゃんは、通りすがりの会話の中で言及され、ウェンズデーの寮はオフィーリアおばさんにちなんで名付けられたことが明らかになる。
7. ガールスカウトを皮肉るセリフは映画版がインスピレーション
第3話の中で、ウェンズデーがタイラーに向かって「朝食にガールスカウトの子たちを食べられる」というシーンがある。この短いセリフは、1991年の映画『アダムス・ファミリー』からきている。映画版では、ガールスカウトの女の子がウェンズデーに「私のおいしいガールスカウトクッキー」を売ろうとする。その際、ウェンズデーは「それって、本物のガールスカウトでできてるの?」と返している。そこから一周回っての答えとなっているのだ。
8. あらゆるところにエドガー・アラン・ポーの引用
エドガー・アラン・ポーはネヴァーモア学園の架空の卒業生。その学園名自体がポーの引用であることに加え(ポーの物語詩「大鴉(おおがらす)」で、大カラスが唯一発する言葉がネヴァーモア)、シリーズ全体を通してポーの引用が見られる。ウェンズデーが不吉だが大切なヴィジョンを見るとき、必ずそこにカラスがいるし、ウィームス校長はカラスのはく製を机に飾り、ネヴァーモア学園で最も誉れある行事の名前もポー・カップだ。そのポー・カップこそ、ポーの文学トリビアメドレーとなっている。
レースに出場する各チームのボートには、ポーの短編小説の名前がつけられている。イーニッドとウェンズデーのチームのボートは「黒猫」、ビアンカのチームは「黄金虫」、ゼイヴィアのチームは「アモンティラードの樽」にちなんで「アモンティラード」、そして4艇目のボート名は「落とし穴と振り子」となっている。
9. ウェンズデーの名前の由来
この作品の生みの親である漫画家のチャールズ・アダムスはキャラクターを名付けていなかったが、作品が人気を博すにつれ、それぞれに名前が付けられることに。ウェンズデーの名前は、1800年代に作られた童謡「月曜日に生まれたこども」がヒントになっている。童謡の全文はこうだ。
月曜生まれの子は器量がいい/火曜日生まれの子は品がいい/水曜生まれの子は悲哀でいっぱい/木曜生まれの子は旅に出る/金曜生まれ子は優しく寛大/土曜生まれの子は働き者/日曜生まれの子は快活で可愛く朗らか
本シリーズの第1話でモーティシアはウィームス校長に、ウェンズデーの名前の由来をこう説明している。「私の大好きな童謡から取ったの。『水曜生まれはの子は悲哀でいっぱい』ってね」
Text: Kaitlyn McNab Translation: Rieko Shibazaki Adaptation: Motoko Fujita
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