LIFESTYLE / CULTURE & LIFE

鏡リュウジが解説、今こそ「個」の意識を育てる準備期間。【2021年鏡リュウジの下半期占い】

西洋占星術では、今後200年続くといわれる「風の時代」に突入。すでに世の中は、さまざまな面で激変の時代を迎えている。はたして、この変化はどこへ向かっていくのか?2021年下半期の星の動きを踏まえ、時代の流れとともに、一人ひとりがそれらをどのように受け止め生きていけばいいのかを鏡リュウジが解説。これからも安心して前へ進むために、星からの道しるべを受け取って。

Photo: Khaichuin Sim / Getty Images

誰もがこんなに長く続くとは思っていなかったコロナ禍の中での暮らしも、気がつけば1年以上。少しずつワクチン接種が進み、希望の兆しが見えてきたとはいえ、まだまだ安心はできない状況に、不安を募らせている人もいることでしょう。

西洋占星術では、2020年末に「幸運」と「拡大」の星・木星と「試練」の星・土星が重なる位置を変え、風の時代が始まったと言われています。これは200年以上にわたって新しい価値観が育まれる時代の到来を告げるもの。その幕開けとして、二拠点生活やテレワーク、5Gなど通信の発展が進むことは予想されていましたが、まさか世界を揺るがすウイルスがこんなにも世の中を変えてしまうとは、思いもかけないことでした。

2021年は、情報やコミュニケーションに長けた風の星座の一つである水瓶座に木星、土星が滞在。木星は「拡大」、土星は「収縮」を象徴するため、ネットでの情報拡散など、より高度な情報化社会へと進化していく一方、コロナでのソーシャルディスタンスやマスク生活によって、顔を合わせて話すからこそ伝わる、表情や声のトーンなどによる非言語コミュニケーションは希薄に。強制参加の飲み会などがなくなることは歓迎され、そうしようと思えば、周囲とのやりとりはすべて間接的にすませられるようになりましたが、この大変な世の中で、大切な人が苦しんだり我慢したりしていないかを知る術が減ってしまったのも事実。また、人と会うこと、街を自由に行き交うことへの欲求は、かえって強まったのではないでしょうか。

水瓶座は「個」を表す星座。その守護星である天王星は「変革」を象徴する天体です。そのため、このコロナ禍が始まったとみるや、IT企業などはこぞってオフィスをたたみ、社員は個々の家で仕事をこなす働き方へと方針を転換しました。

この流れは不可逆なもので、今までと同じような働き方に完全に戻ることは、もうないでしょう。正社員が減り、社員であった人々は個人事業主として仕事を請け負い、自由な横のつながりを得て、幅広くさまざまな会社、個人と仕事をしていけるようになりそうです。

しかし、組織がなくなるというのは、誰もが自主性、独立性を持つインディペンデントな生き方にならざるを得ないということ。会社などのコミュニティに属して上司や先輩に過去の経緯や既存の方法を教わり、そのカルチャーに合わせて生きるやり方から、個人としての意識を確立させ、それぞれが違いをより際立たせていくことを世の中が認める。つまり、社会全体の大きな構造改革が始まるのです。これは、非常に大変なこと。時間や場所から自由になって働けるメリットを享受するのと同時に、組織という後ろ盾を手放すデメリットや、社会全体が組織内部で受け継ぎ、保持していた歴史、文化の連続性をどう保つかについても注目が集まるでしょう。

個々の責任と今後の生き方。

これからの個人のありよう、集団の形については、2021年後半にあわただしく動く木星の動きが一つのヒントを与えてくれるかもしれません。2020年末から水瓶座を運行していた木星は5月半ばに魚座へ移動し、7月末には魚座から再度、水瓶座に戻ります。さらに年末にはまた魚座に入り、2022年5月には、牡羊座へと急ぎ足で移動を繰り返すのです。

今までは木星水瓶座の先進的な動きが強く、家の中ではロボット掃除機や食洗器に家事を任せ、スマートスピーカーで情報を得て、外の世界とはリモート会議やオンライン飲み会をし、というように人間の移動は最小限に、合理化の動きが進んできました。しかしその裏では、リモートの設定やオンラインでの新しい会話術、ハイテク機器の使い方など、覚えること、慣れるべきことが加速度的に増えて、人知れずストレスをためてしまうことも多かったのではないでしょうか。

魚座には、支配星である海王星も滞在していて、そこへ木星が飛び込むため、この夏は時代の「魚座性」が強調されることになります。魚座は12星座の最後に位置し、すべてを溶かし込む混沌、原初の海のようなイメージの星座です。また、牡羊座から始まったものが還る場所でもあり、すべての始まりと終わりを象徴しています。いろいろな境界線が曖昧になり、人の痛みも自分のことのように感じられるようになりますから、自他の境を超えた愛、ボランティア、助け合いといったプラスの面と、アルコールやドラッグの問題といったマイナス面も浮かび上がってくるでしょう。

個の意識を確立させてきた水瓶座的な動きが一時ストップするため、ずっと頑張り続けてきた人にとっては、少し肩の力が抜ける時期に。もう一人じゃないんだと安心し、息がしやすくなるような感覚を得られるかもしれません。毎回、リモート会議やチャットツールを使わなくてもいい、会議では顔出しもやめようよとか、なんでも自分で解決しようとしなくて大丈夫。そんなに頑張らないで、ちょっとしたことは電話で相談しようよといった優しさや人の温もりを感じる、エモーショナルな空気も、木星魚座期には生まれてきやすいでしょう。

土星と天王星がもたらす緊張関係。

2021年後半のもう一つの特徴は、土星と天王星がスクエアという90度の位置で緊張関係になること。これは、この一年の間では3回あり、2月、6月、そして12月24日のクリスマスイブに起こります。

土星は「社会」「構造」を意味し、天王星は「変革」、そして「反逆」という意味も。2月はアジアンヘイトクライムの問題がニュースになり、年長の男性からの男尊女卑的な発言などジェンダー問題も批判されました。こうした人種、性別への偏見といった古い価値観は、どんどんアップデートされていくべきもの。センセーショナルな報道など、ややピリッとする出来事によって可視化され、そのたびに変化が促されていくでしょう。

12月24日のタイミングでは、「破壊」と「再生」の星である冥王星が滞在する山羊座に、水星、金星、太陽が入っており、29日には木星の魚座への移動も控えている頃。山羊座の象徴する「社会」を揺るがすような動きが、あらゆるジャンルから起こってくる可能性がありそうです。緊張関係による星の配置がもたらす転機は、時に衝撃的でマイナスのことばかりが注目されてしまうかもしれません。しかし、実際にはそこから新たな解決策が生まれたり、今の時代に合った価値観の共有がなされたりして、見えない再調整の動きもあるはず。問題点が浮き彫りになったことをチャンスと受け止め、今後に生かしていくといいでしょう。

ウイルスの脅威と社会の変動によって、今は誰もが自分の足もとが見えない、不安な状態にあるといえます。正解も未来も見えない、そんな感覚に陥ってもしかたがないときです。ただ、だからこそ今は、いろいろな修正、見直しもしやすいとき。正解が見えないのは、世の中の人みんなですから、間違うことがあって当たり前なのです。こんな時代にあって強いのは、後戻り、修正、やり直しをする力。もしあなたが、何かで失敗をしてしまった、間違ってしまったと思うことがあっても、その失敗や間違いのところで立ち止まる必要はありません。何度でもやり直し、試行錯誤し、改めて立ち上がって前へ進んでいきましょう。

来る2022年5月11日の木星牡羊座入りの頃には、みんなが新しいスタートラインに立つことになります。そこで誰より早く未来へ駆け出せるよう、今から少しずつ準備を整えていきたいですね。

Profile
鏡リュウジ
占星術研究家、翻訳家。英国占星術協会会員。10代のころより占星術、秘教などに関心を抱き、30年以上にわたり数多くのメディアで活躍。占いのイメージを一新し、圧倒的支持を受ける。占星術の歴史にも造詣が深い。『鏡リュウジの占星術の教科書Ⅰ~Ⅲ』(原書房)が好評。

Astrologer: Ryuji Kagami   Text: Naomi Asajima at Setsuwasha  Editors: Mihoko Iida, Kyoko Osawa