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パリ協定 / Paris Agreement

パリ協定とは、2015年11月30日から12月13日までの期間中フランス・パリにおいて開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)にて、「京都議定書」の後継として新たに採択された国際的枠組みのこと。◆その主な内容は、次の通りである◆世界の平均気温上昇を産業革命以前比で2℃以内に抑えるという「2℃目標」を掲げ、できる限り早急に世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半をめどに温室効果ガス排出量と森林等による吸収量のバランスを取ること。◆温室効果ガスの主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること。全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し、そのレビューを受けること。◆枠組み適応の長期目標の設定と、各国の適応計画プロセスや行動の実施、適応報告書の提出と定期的更新をすること。◆各国が強みを有するエネルギー・環境分野において、革新的なイノベーションを創出し、社会的に実装可能なコストを実現するなどの“イノベーション”の重要性を重視すること。◆5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する仕組み(グローバル・ストックテイク)の構築◆先進国による資金の提供に加え、途上国も自主的に資金を提供すること。2国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)も含めた市場メカニズムを活用すること。JCMとは、パートナー国への優れた脱炭素技術や製品、システム、サービス、インフラ等々の普及や対策実施を通じて同国での温室効果ガス排出削減・吸収や持続可能な発展に貢献すると同時に、その貢献分を定量的に評価し、相当のクレジットを当事国が獲得することで、双方が5年毎に提出・更新する義務を負う温室効果ガスの排出削減目標の達成に貢献する仕組みのこと。◆1992年に採択された「国連気候変動枠組条約」をベースに、国際社会が一丸となって気候変動問題に取り組むべく、1995年から現在に至るまで毎年気候変動枠組条約締約国会議(COP)が開催されている。その主な議題は「温室効果ガス排出量削減の実現」だ。しかし、合意されてもすぐに効力が発動するものではないことから、「パリ協定」でこの合意を得るためには会議参加国が55ヶ国以上であることや、世界の総排出量55%達成という条件を満たす必要があった。しかし、採択の翌年2016 年10月5日にこの条件を満たしたことから、「パリ協定」は同年11月4日に発効された。当初専門家筋ではこの条件が満たされるにはある程度の時間を要すると見られていたが、アメリカのオバマ前大統領が中国やインドに対し積極的に働きかけた結果、このスピード発効の実現に至ったと見られている。◆また、「京都議定書」では一部の先進国に温室効果ガス排出削減量に制限があったため、日本が主張してきた「参加する全ての国が取り組むこと」は実現しなかったが、この「パリ協定」の成立により、京都以来の日本の悲願が達成された形となった。加えて、世界各国が新たな枠組みに対する約束草案を国際気候変動枠組条約事務局に提出することになったため、先進国のみならず、途上国の含めた全ての参加国において事実上の取り組みの推進が期待されている。◆一方で、「パリ協定」は歴史上非常に重要かつ画期的な枠組みとして国際社会で高く評価されている。「京都議定書」では、排出量削減の法的義務は先進国にのみに課せられていたが、同議定書採択以降から「パリ協定」まで、途上国は急速な発展を遂げたことから、温室効果ガスの排出量も急増して行った。◆CO2 Emissions from Fuel Combustion 2016の調べによると、2016年時点で世界の温室効果ガス排出量の1位は中国(23.2%)、4位がインドとロシア(5.1%)そして5位にインドネシア(3.8%)と、途上国が国際的に見ても高い割合を占めている。そのため、途上国にも先進国同様削減義務が課せられていないという不公平感が大きな要因となり、「京都議定書」では、当時の世界最大の排出国であったアメリカが批准することなく、この議定書の実効性が大きく危ぶまれた。この点を踏まえ、「パリ協定」では途上国・先進国関係なく、参加する全ての国と地域に2020年以降の温室効果ガス削減・抑制目標を定めることを求め、長期的な低排出発展戦略を作成・提出するよう努力すべきだと規定した。◆このように、様々な国と地域からの削減努力等へのコミットに成功した「パリ協定」の事実上の実現における今後の課題は、公平性と実効性の確保にある。そのため、削減・抑制目標については達成義務を設けることなく、あくまでも努力目標とした。加えて、進捗状況の情報等を定期的に提供し、専門家によるレビューを受ける「プレッジ&レビュー方式」を導入し、参加国は5年毎に更新・提出することが求められている。同時に、途上国に対する先進国の資金援助については、「京都議定書」に引き続き“義務”とされているが、「パリ協定」では途上国にも自主的な資金提供を推奨するなど、一歩踏み込んだ内容となっている。◆この「パリ協定」を受け、日本では中期目標として2030年までに温室効果ガスの排出量を、2013年度の水準からさらに26%削減することが定められた。この目標達成のための核となるのが、再生可能エネルギーに導入量の増加&低排出の“エネルギーミックス”の推進と、さらなるエネルギー効率化の追求だ。そのため、現在進行形で徹底した省エネルギーとともに再生エネルギーを22〜24%、原子力エネルギーを22〜20%とするなど、電力源の構成の見直しが示され、経済と並行して低排出型社会を目指し、現在進行形で様々な取り組みがなされている。