FASHION/TREND

今、改めて考える「現代における女らしさとは?」【Vol.5/舟山瑛美、アシュリン・パーク、レジーナ・ピョウ】

さまざまな分野で多様性が進む現在において、もはや女らしさや男らしさを定義すること自体が時代遅れかもしれない。だが、現実にはジェンダーの格差はまだまだ縮まらず、おのずと女性、男性としての性差を意識することも多い。そこでヴォーグ ジャパンでは、国内外のジャーナリスト、ファッション関係者らに緊急アンケート。さまざまな視点を持つ彼女たちの言葉をヒントに、あなたも現代における女らしさ/男らしさ、さらには自分らしさについて最考してみては?

「ニットドレスは、自己愛につながる」(舟山瑛美)

ーあなたが今考える女らしさとは?
自分自身を慈しみ、丁寧に扱うこと。

ーここ数年の時代の流れとともに、ご自身が考える女らしさに何か変化はありましたか?
対外的なことだけではなく、自分自身に向き合い肯定し、他者への理解を深めようとする人を女性らしく魅力的だなと感じるようになりました。年齢を重ねてきたことで感じるようになったことです。

ーあなたの考える男らしさとは?
今まであまり、男性らしいなと感じることにポジティブな場面がありませんでした。強いて言えば、お互いの得手不得手を自然に補完しあえる相手とは居心地が良いなと感じます。

ー身につけたとき女らしいと感じるファッションアイテムは?
ニットドレス。自分の身体のシルエットをやわらかい線で出すことで、姿勢や身体への意識が向き、背筋が伸びます。モデルのような体型である必要はないと理解し、自分のシルエットをファッションの一部にすることは自己愛につながるなと感じます。フェティコでも毎シーズン必ず作っているアイテムのひとつです。

日系移民の両親のもと、アメリカに生まれたルース・アサワ。メキシコでワイヤーを編んだバスケットの造形に出会ったことをきっかけに、ループ状のワイヤー作品の制作を開始。繊細かつ大胆な抽象彫刻表現で知られる。

ーあなたの憧れの女性を教えてください
ルース・アサワ。初めはその複雑で繊細な作品に惹かれました。ホイットニー美術館で実物を見ることができたのですが、工芸とアートが融合したような独特の作品や世界観を、アジア人女性がアメリカで築いたという異色さにも興味を持ちました。彼女はアーティストでありつつ母親でもあり、家族との暮らしも制作と同じように大切にしていたことを知り、ひとりの女性の生き方として素敵だなと思いました。人生の意義や幸せは、人それぞれ違うし、ひとつを選ぶ必要もないんだなと、彼女の生き方に背中を押された気持ちになりました。

舟山瑛美
Emi Funayama/「FETICO」デザイナー
https://www.instagram.com/emi_funayama
高校卒業後渡英し、帰国後エスモードジャポン東京校に入学。コレクションブランド等で経験を積み、2020年にフェティコを立ち上げる。コンセプトは、「その姿、女性的」。2022年、「JFW ネクスト ブランド アワード 2023」と「東京ファッションアワード2023」を受賞。

「理不尽と闘い続けている女性たちに勇気を与える存在になりたい」(アシュリン・パーク)

Ashlyn Park

ーあなたが今考える女らしさとは?
自分自身、娘たち、私が率いるチームのために、自分にできることすべてを実現するために絶えず努力し、最重要課題について変革を求めて闘うこと。東京で大学を卒業し、山本耀司氏のもとで指導を受け、過去15年間にわたり仕事の拠点にしているニューヨークでは、子育てをしながらアシュリンの個人経営者兼クリエイティブ・ディレクターを務めています。少女時代を過ごしたソウルでは、高等教育を受け、海外で生活するには、人一倍努力し、最高の成績を修め、並外れた才能と能力、そして忍耐強さを示すことが必要でした。これが絶えず私のモチベーションとなり、人生で独自の道を追求する次元にまで高めました。

ーここ数年の時代の流れとともに、ご自身が考える女らしさに何か変化はありましたか?
私が敬愛するルース・ベイダー・ギンズバーグに関する本を娘と一緒に読んだことがあります。長女のヘイリーはこの本に非常に感動したようでした。ある日突然、彼女は「ママ、私は女性だから自分が賢いことを隠さなければならない。なぜなら、ルースがそうだったからだよ」と言ったのです。私は驚きました。世界が急速に変わる中で、私たちがこれまでの概念をすべて変えてきたように自分の視点から学び取ったのだと感じました。私は再びヘイリーに教えました。女性性と男性性は、生物学的な違いに過ぎないと。でも、昔はそうではなかったんだと。ヘイリーが過去の理不尽な状況を振り返り、社会を否定的な視点で見ないようにしたかったのです。今や女性性と男性性は境界線が曖昧になりつつあり、生物学的な違いに過ぎないように思えます。

ーあなたの考える男らしさとは?
昔から世の中には、男性たちを頼もしく感じる強いイメージがあります。ファッションはイメージを作り上げ、そのイメージを通じてコミュニケーションをとる作業です。私にとって、男らしさは、私が好きな強い女性のイメージを作り出すために頻繁に投影する要素の一つのように感じます。

ー身につけたとき女らしいと感じるファッションアイテムは?
やわらかなシルキーな生地、高いハイヒール、そしてコルセット。ただ、これらは慣習から生まれた既成概念のようです。

ーあなたの憧れの女性を教えてください
歴史の中であらゆる分野で最高峰として認められた女性たち、理不尽だと考える世界を変えようと努力した女性たちに尊敬の念を抱きます。過去の時代において、女性がトップに立つためには、男性がその地位に上るための何十倍もの努力が必要だったでしょう。そうした実例があったから、私たちが公平にチャンスを得ることができる世界で生き、努力すればすべてを達成できるという勇気を与えてくれています。ですが、世界中で闘い続けている女性たちはまだまだ多い。私も彼女たちに勇気を与える存在になりたいです。

Ashlynn Park
アシュリン・パーク/CEO兼クリエイティブ・ディレクター「アシュリン」
https://www.instagram.com/ashlynn.park/
韓国の大学でファッションデザインを専攻後、日本に留学。ヨウジヤマモトのデザイナー、パタンナーとして経験を積む。2011年渡米し、アレキサンダー・ワン、ラフ・シモンズ体制のカルバン・クラインを経て2019年に「アシュリン」を設立。フェミニンでタイムレスなコレクション、また廃棄や環境負荷を最小限にとどめる生産工程が評価され、2022年の「LVMHプライズ」でファイナリストに選出される。

「女性らしさはまるで複雑なモザイク。多様性をセレブレートしたい」(レジーナ・ピョウ)

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ーあなたが今考える女らしさとは?
私にとって女性らしさとはパワー。強さと弱さ、そして喜びの絶妙なバランス。女性は多くの役割を体現していて、それはアイデンティティの複雑なモザイクのよう。私がデザインするコレクションには、女性であることの多様性を誇りに思い、セレブレートし、色やフォルムを通して自己表現をするという、自由を謳歌してほしいという願いを込めています。

ーここ数年の時代の流れとともに、ご自身が考える女らしさに何か変化はありましたか?
子どもを持つことで、私の女性観が永続的に変わりました。これは当たり前のことのように思われるし、妊娠・出産の前から周りの友人たちから聞いていたことですが、実際にその瞬間が訪れたとき、それはやはり想像以上の大きな変化でした。家族と仕事とのバランスに苦労し、自分がやりたいことを続けることに対し大きな罪悪感を感じました。この感情は私だけではなく、多くの女性が同じような経験をしています。けれど私たちが一緒に闘えば、女性に課されている困難を変えていけると信じています。

ーあなたの考える男らしさとは?
女性らしさに対する認識が変化してきているのと同じように、男性らしさも変容してきています。私が考える男性らしさとは、強さと弱さに対してオープンでいること、思いやりの気持ち、ステレオタイプな性別の役割に縛られず様々な責任を受け入れること。従来的な男性らしさをはるかに超えた性質を持っています。
デザインするとき、私は女性らしさと男性らしさのバランスを意識しています。女性らしさ・男性らしさに紐付けるよりも、個々の人に共鳴するアイテムを作り上げたいのです。

ー身につけたとき女らしいと感じるファッションアイテムは?
どんなファッションアイテムでも女性らしさと考えられます。スタイルは個人の表現であり、伝統的な見方に縛られる必要はありません。レジーナ ピョウのシグニチャーである「Greta」ドレスなどのボリュームのあるセンシュアルなドレスから、「Johanna」ジャケットや「Sonia」トラウザーのようなメンズウェアにインスパイアされたテーラードアイテムまで、私のデザインプロセスでは女性らしさを現代的な視点で捉えています。デザインを女性らしくするのは、女性が日常生活でどのように着用するかを理解すること、実際に着用する女性たちがをどのように感じるかを考えることだと思います。

ドイツに生まれ、裸体の自画像を描いた最初の女性画家とされるパウラ・モーダーゾーン = ベッカー。 Photo:Getty Image

ーあなたの憧れの女性を教えてください
アート界に革命を起こした、パウラ・モーダーゾーン = ベッカーを心から尊敬しています。女性のヌードを描いた最初の女性とされる、勇敢な女性アーティストです。特に好きなのは、1906年の作品「Mother with Child on Her Arm, Nude II」。産後の体を驚くほどありのままに描写した作品で、彼女はこの当時の社会通念に挑んだのです。

Rejina Pyo
レジーナ・ピョウ「レジーナ ピョウ」デザイナー
https://www.instagram.com/rejinapyo/
ソウル生まれ、セントラル・セント・マーチンズで学び、ロンドンで自身の名を冠したブランドを立ち上げる。エフォートレスなエレガンスをベースに、色やプリント、ディテールで遊び心を効かせたデザインが特徴。

Coordination: Tomomi Hata, Maki Saijo

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