Skip to main content

女性のリーダーシップ / Women's Leadership

「リーダーシップ」とは、「統率力」または「組織を率いる力」のこと。組織が向かうべき目標を設定し、その方向に導くための能力のことを言い、これらの能力が備わっているリーダーこそ統率力があるとされる。一方、「マネージメント」は組織のリソースであり、組織のリスクの管理や組織を発展させるための経営手法と言う意味を持つことから、根本的に違うものである。つまり、リーダーシップには目標に向かって物事を進めることができる「攻め」の姿勢が、一方でマネージメントには組織を管理し「守る」姿勢が求められる。ゆえに、リーダーシップを発揮している、またはリーダーとして活躍したいのに違和感があると言う場合は、この両者の違いがきちんと理解できているか根本的に見直すことが重要だ。 国のトップにしろ、オフィスの管理職にしろ、女性リーダーに求められるのはまず「統率力」である。その上で、組織の向かうべき目的地を設定することが求められる。皆が一丸となって向かう方向性を示すことができると、部下に安心感を与えると同時に、信頼感も生まれることが期待される。 次に求められるのが「環境整備力」。意思疎通のうまくいかない組織内だと皆を率いていくことが困難になる。そこで求められるのが、このような環境を整備するための「コミュニケーション力」だ。部下が活発に意見交換をかわすことができる環境は、コミュニケーションがうまく取れていると言うことの証でもある。また、時には組織内のコミュニケーションで潤滑油のような役割を果たすことも、リーダーに求められる。 さらに、組織内のお手本になることも、リーダーに欠かせない資質だ。組織のメンバーは、リーダーを常に観察している。そのため、多くの言葉より確実な行動や姿勢をもって統率する姿は、「強いリーダー」としてメンバーの眼に映る。いくらリーダーが必死になったところで、メンバーの士気が下がってしまえば、思うような成果が得られない。そこで、メンバーのモチベーションを高めることも最重要課題となる。その上で最終的に目指すのがメンバーが自発的に働きたくなる組織作りだ。 転じて政治の世界に目をやると、21世紀に入り新たな変化の兆しが出ている。これまで男性性と結びつけられることの多かった「力強さ」や「決断力」がリーダーの資質として重視されてきたが、昨今では弱い人や困っている人へのケアの重視や、前に出て主張するだけではなく人の話を受け止める姿勢など、伝統的には女性性と結び付けられてきた資質がリーダーシップの一つとして注目される傾向にある。 その例として挙げられるのが、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相だ。就任後に産休を自ら6週間取得し、副首相に代行してもらうことを国民に率直に伝え理解を求めた姿は、他の人に補ってもらうことを厭わず、協力体制を作ることに優れたリーダー像でもある。また、同国は感染症流行の初期段階で抑制に成功していることから、少なくとも女性をリーダーに擁する政治・社会体制の国では、パンデミックのような危機に直面しても柔軟な対処をとることが可能な国として世界中から高評価を獲得している。 一方で、史上最年少の28歳でアメリカ下院議員になったアレクサンドリア・オカシオ・コルテスのように、ポイントを押さえた簡潔でわかりやすく印象に残る話術は「だから私はみなさんの代表にふさわしい」と大きな共感を得たことも、新たな時代の女性のリーダーシップにおいて注目すべき点である。 そして、女性はいつでも出過ぎることなく一歩下がって控えめでいること、言い換えれば「できるだけ場所を取らずにいることを女性たちに期待する文化」が色濃い政治の討論会や組織での会議、また地域のイベント等の集団において、ドイツのアンゲラ・メルケル首相のように、「自分は当然この場にいる権利がある」という姿勢とともに、自分のポジションを獲得──つまり「場所をとる」ことができることも重要な要素である。 その他にも、優秀な女性リーダーに共通するのは、「適切な目標設定ができる」「リーダーシップを発揮しリーダーとしての役割を果たす知識を得るための学習能力がある」「時には正解/不正解かを気にせず決断できる力がある」「メンバーの育成能力の向上を常に意識している」「誠実である」「自分の設定した目標達成に協力をしてくれる同僚や仲間が失敗した時に責任をとる覚悟がある」「反対勢力に対しても寛容である」「業務遂行能力がある」等の要素が挙げられる。 このように、これまで単独で組織を引っ張っていく強さのみを「リーダーシップ」と考えてきたが、社会の脆弱な部分やケアの必要なところを一緒になって考え、協力しながら社会をまとめていく力が女性のリーダーシップであり、昨今はこれに加えて地球や環境への配慮も優れたリーダーに求められる要素となっている。