「プリンス・トラスト・インターナショナルから、今回の賞を授与するプレゼンターに指名されたことを光栄に思います。同時に、社会に変化をもたらす若い女性をバックアップできることをとてもうれしく思います。この賞の受賞者たちは、世の中の固定観念や間違いに真っ向から立ち向かい、あらゆる障壁を打ち破ってきました。そして、過酷な現状を受け入れることを拒否し、すべての女性と障がいのある人たちのために闘い続けています。弱きものに光をもたらす彼女たちが、今後もさらに光り輝くことを願っています」
2022年、イギリスのチャールズ国王により創設され、世界18カ国の若者の就業問題に取り組む慈善団体プリンス・トラスト・インターナショナル(Prince’s trust international)とのパートナーシップのもと、社会に変革をもたらす若い女性たちにスポットライトを当てる「プリンス・トラスト・インターナショナル アマル・クルーニー 女性エンパワーメント賞」を立ち上げ、その式典でこう語ったクルーニー。
今回の受賞者であるパキスタン出身のタンジラ・カンは、生理に対するスティグマをを剥がすべく「Girlythings.pk」を設立。生理になると学校を休まなければいけない環境を変えるために、月経用品へのアクセスを容易にするアプリを開発し、リプロダクティブヘルスに関する性教育を国内に広めるほか、マタニティ関連の製品を匿名で女性に届けるなども行ってきた。また、デリケートな話題をオープンにできる場づくりも積極的に展開し、これにより、女性の健康をめぐる意識を飛躍的に変化させたことから、 今回の受賞に至った。
女性が輝く社会の創造に向けて
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「私たちは、不公平な法律を覆し、不当に女性を虐待する加害者の責任を確実に問います。そして、女性が直面する不条理を是正して行きます」
と、かつて自身の財団立ち上げの際にこう語ったクルーニーは、これまでウクライナの前首相ユリア・ティモシェンコや、ISISに拉致・性奴隷化後に脱出し、2018年にノーベル平和賞を受賞したイラク人権活動家のナーディーヤ・ムラード、そして同賞を受賞したフィリピン出身のジャーナリスト、マリア・レッサら拘束されたジャーナリストの代理人として世界的に高い評価を得ている。
2023年5月10日に開催された2023年カルティエ・ウィメンズ・イニシアティブ賞の授賞式では、“カルティエ・ヴォイス”に起用され、クルーニーが壇上で披露したスピーチが話題を呼んだ事も記憶に新しい。
「私は、これまで弁護士として女性の地位と権利の向上に努めてきました。世界人口の半分は女性です。ですから、女性たちに焦点を当て、あらゆる不当なことから解放することは、非常に価値あることだと思います。私の目標は、すべての人に平等に正義をもたらすこと。ですが、正義とは必然的なものでも、自然に発生するものでもありません。正義は、“遂行されなければならない”というのが私の哲学です。そのためにも、私たちは闘わなければならないのです」
トップメゾンとのイニシアチブで女性の地位向上を目指す
2006年、カルティエによって創設された同賞は、女性主導の企業を対象に、女性リーダーにビジネスとスキル構築のための支援を提供することを目的としている。そして、これまでこのプログラムを通じて63カ国297人の女性起業家たちに累計$740万ドルの資金を提供してきた実績を持つ。
国や業界を超えて社会に大きな影響を与える女性起業家たちを讃える同賞はまた、食糧安全保障や難民問題、そして女性と幼児の医療を改善し、危機に瀕している女性たちに緊急支援を提供する一方、学生のためのオンライン研究室や教師向けのテクノロジープラットフォームの設立などの活動も展開している。
不公平な法律を覆し、不当に女性を虐待する加害者の責任を確実に追求することで、女性が直面する不条理を是正することこそが自身の使命だと公言するクルーニー。そんな彼女は、今回の授賞式のスピーチをこんな言葉で締めくくった。
「最新のデータによると、女性と男性が同等の賃金を得られるようになると、世界経済に12兆ドルの追加に値すると試算されています。ですがその一方で、女性のエンパワーメント運動に充てられる慈善助成金の割合はわずか一桁にすぎません。ここにいる皆さんの共通点は、多くの人に影響を与え、目に見えている成果以上の功績を残しているということ。みなさんは、間違いなくより良い未来のために闘う世界市民であり、世界に変化を起こすための原動力です。私は、そんな皆さんと同じこの場に立っていることをとても光栄に思います」
Text: Masami Yokoyama Editor: Mina Oba