FASHION/TREND

今、改めて考える「現代における女らしさとは?」【Vol.7/仙波レナ、白石理絵、カレン・ヴァン・ゴッデンノーヴェン、エリ】

さまざまな分野で多様性が進む現在において、もはや女らしさや男らしさを定義すること自体が時代遅れかもしれない。だが、現実にはジェンダーの格差はまだまだ縮まらず、おのずと女性、男性としての性差を意識することも多い。そこでヴォーグ ジャパンでは、国内外のジャーナリスト、ファッション関係者らに緊急アンケート。さまざまな視点を持つ彼女たちの言葉をヒントに、あなたも現代における女らしさ/男らしさ、さらには自分らしさについて最考してみては?

「品格と愛情と信念と包容力を持っている人」(仙波レナ)

ーあなたが今考える女らしさとは?
品格と愛情と信念と包容力を持っている人を女性らしいと感じます。

ーここ数年の時代の流れとともに、ご自身が考える女らしさに何か変化はありましたか?
若い頃は見た目でそう思うことが多かったですが、年齢を重ねていくごとに見た目で女性らしいと判断することが少なくなりました。当たり前ですが……見た目ではその人を判断できないことを実感しているからでしょうか。

ーあなたの考える男らしさとは?
純粋さと行動力と信念があり仲間や家族を大切にする人を男性らしいと感じます。

ー身につけたとき女らしいと感じるファッションアイテムは?
・セットのランジェリー。人に見せびらかすわけではないからこそその人のセンスが出ると思うので。
・パンティストッキング。履く時の仕草が可愛いので。
・ブラックのパンツスーツ。理由は……わからないのですが、似合っている人を見ると美しいと思ってしまいます。
・綺麗にアイロンがかかっていたりふんわりといい香りがしたりするような手入れをされた服たち。服やものにも愛情を持って丁寧に扱っている人だと思うと美しい人だと思うので。
・シルエットが美しいハイヒール。やはり綺麗なヒールの靴はセンシュアルだと私は思うので。

「アメリカ・モダニズムの母」と呼ばれる画家、ジョージア・オキーフ。花や動物の骨をはじめとする自然物や風景、超高層や摩天楼などを主題にした作品で知られる。 Photo: GettyImages

Bettmann

ーあなたの憧れの女性を教えてください
ジョージア・オキーフ。晩年をニューメキシコの砂漠で生活している彼女の写真と作品を見たときに、自分の想いを貫き続けた彼女の人生そのものがかっこいいと思ったことがきっかけです。

仙波レナ
Rena Semba/スタイリスト
https://www.instagram.com/rena_semba/
エッジィな中にもフェミニンなムードが薫るスタイリングを持ち味に、モード誌や広告、セレブリティの広告を中心に活躍するスタイリスト。ジュエリーのコーディネートにも定評があり、2023年はジュエリーブランド「love is you.」をローンチ。

「骨格や姿勢を美しく見せてくれる服が自然と自信を与えてくれる」(白石理絵)

ーあなたが今考える女らしさとは?
時代も変わり、「自分らしさ」へと変化していると思います。

ーここ数年の時代の流れとともに、ご自身が考える女らしさに何か変化はありましたか?
以前からセクシュアリティについて明確に分けて考えるタイプではないのですが、特に最近は、知らないうちに人や自分自身にジェンダーバイアスを押し付けないようにしています。

ーあなたの考える男らしさとは?
女性らしさと同様に「自分らしさ」に変化していると思います。

ー身につけたとき女らしいと感じるファッションアイテムは?
サンローランの「ル・スモーキング」のスモーキングジャケットからもあるように、サンローランのメンズのパワーショルダーのジャケットを着たいです。パワーショルダーは大好きで自然と自信を与えてくれますね。骨格や姿勢を美しく見せてくれる服が自然と自信を与えてくれるのかなと思います。

エレガンスの新たなスタンダードを確立させたガブリエル・シャネル。彼女のスタイル、生き方もアイコンとなった。 Photo: GettyImages

Apic/Getty Images

ーあなたの憧れの女性を教えてください
ガブリエル・シャネル。彼女のフィロソフィーそのものが時代のゲームチェンジャーとなった。シャネルの生き方そのものを称賛します。

白石理絵
Rie Shiraishi/ヘア&メイクアップアーティスト
https://www.instagram.com/rieshiraishi1220/
建築デザインを勉強後、2011年よりヘア&メイクアップ・アーティストとして活動。映画や音楽、アートからインスピレーションを受ける独自のスタイルに、国内外のセレブリティから熱い支持が集まる。

「マリーン・セルやシモーン・ロシャ、コリーナ・ストラーダ、独立した若い女性デザイナーが、ファッション業界に良い変化をもたらす存在になる」(カレン・ヴァン・ゴッデンノーヴェン)

kiggen/keen

ーあなたが今考える女らしさとは?
私にとって女性らしさとは状態、つまり体に刻まれた生きた経験、歴史的・社会文化的な要素によって定義されるものです。また、世代を超えて女性たちに受け継がれる、一種の慣習のようなものだと思います。どちらも体験の連続体であり、絶えず意味を拡大しながら移動する境界線でもあります。

ーここ数年の時代の流れとともに、ご自身が考える女らしさに何か変化はありましたか?
以前は女性であることの意味が拡大し、男女平等の格差が縮まっていくことに楽観的でしたが、自分が母になったことで、女性がいまだに男性と不平等な立場に置かれていることをあらゆる場面で思い知らされました。そのきっかけは私の個人的な体験だけでなく、パンデミックのときにも見られた介護職(保育士、教師、医療スタッフなど)の地位の低さについても目が覚めるような思いでした。悲しいことに、その期間は世界中の女性たちが後戻りを余儀なくされた一方で、私たちがそれをより強く認識できるようになったのはいいことです。ファッションの世界においても、労働人口の大部分を占めながら、平等な労働条件を与えられず、トップの地位に上がれない女性たちの状況は改善されていません。私は6月にベルギーで開催されるファッションと母性に関する展覧会「Mothers&Others」で、これらのテーマのいくつかを追求しています。

ーあなたの考える男らしさとは?
女性らしさと似て、男性らしさとは、生物学的な特徴と結びついたり結びつかなかったりするものであり、行動や世の中での立場と関係するものだと思います。社会的に男性はいまだに「中立」あるいは特権的な立場にありますが、これは彼らの重荷でもあります。願わくばこの世界が、権力闘争、家父長制、競争といった有害な男性性に結びついた典型的なジェンダーの概念を打ち破り、責任感、勇気、尊敬、自立といったポジティブな特質を唱えるようになってほしいものです。

ー身につけたとき女らしいと感じるファッションアイテムは?
ある特定のブランドや美意識をフェミニンだと感じず、私にとってはレザーのバイカージャケットもシフォンのドレスと同じようにフェミニンになりえます。ファッションの歴史やMETの「Women Dressing Women」展に登場するデザイナーについて考えたとき、女性を愛し、彼女たちが美しく、解放され、力を与えられるよう最大限に貢献したのは、マドレーヌ・ヴィオネ(1876-1975)だと思います。彼女の哲学とアプローチは着物のパターンから着想を得ており、その結果生まれたバイアスカットのテクニックは身体と衣服の動きをひとつにしました。

ーあなたの憧れの女性を教えてください
ラグジュアリーグループが席巻するこの業界で、独立した若い女性デザイナーたち(マリーン・セル、シモーン・ロシャ、コリーナ・ストラーダ、エスター・マニャス、グレース・ウェールズ・ボナー、ジェイミー・オクマなど)を尊敬しています。ヴァージニア・ウルフの「女性にとって自分の部屋を持つことは重要」という考えの現代版といったもので、ファッション版では自分のレーベルを持ち、自分のリズムとルールに従って、たいていはコミュニティベースで活動することでしょう。彼女たちは、大手百貨店から解放された1960-70年代のブティック世代のデザイナーたち(ビバのバーバラ・フラニッキ、マリー・クヮント、ザンドラ・ローズ、ソニア・リキエル、ベッツィ・ジョンソン、ノーマ・カマリなど)の足跡をたどり、男女平等、子育てやワーク・ライフ・バランス、包括性、サステナビリティといった問題について、ファッション業界に真の変化をもたらすことができると私は信じています。

Karen van Godtsenhoven
カレン・ヴァン・ゴッデンノーヴェン/ファッション・キュレーター、作家
https://www.instagram.com/karen_vangodtsenhoven/
ゲント大学、アントワープのモード美術館で経験を積み、NYのメトロポリタン美術館のコスチューム・インスティテュートに参画。2023年に開催された女性デザイナーに焦点を当てた特別展「Women Dressing Women」で共同キュレーターを務める。

「セクシュアリティ二元論ではなく、グラデーション」(エリ)

ーあなたが今考える女らしさとは?
ーあなたの考える男らしさとは?
私は生まれたときに割り振られた体が女性でした。なのでこの人生の過程で社会の中の“女性らしさ”と呼ばれるもの、形容されるものに従ったり、翻弄されたり、無意識に刷り込まれていたりしました(していたことに気づきました)。そしてセクシュアリティにはグラデーションがあることを学ぶにつれ、私の中の男女二元論的に語っていた女性/男性らしさ、が崩れていっていることを感じています。自分自身の性についても私は“女性らしく”ありたいのか? それを求めているのか? “女性らしさ”という言葉を使ったときに誰かを傷つけ得るのでは? ということにも疑問を抱くようになりました。なので、女性らしさや男性らしさとは? と問われたときにまだ私の中でまっすぐ返せるものがありません。

ー身につけたとき女らしいと感じるファッションアイテムは?
特にありません。

2018年の下院中間選挙で、米国史上最年少(当時28歳)で当選を果たしたアレクサンドリア・オカシオ=コルテス。富裕層にたいする所得税率の引き上げ、国民皆保険の実現、大学授業料の無償化などを公約に掲げ、マイノリティや労働者階級、ミレニアルズの有権者たちから絶大な支持を集める。 Photo: GettyImages

ーあなたの憧れの女性を教えてください
AOC(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス)。政治分野においてとくに日本はジェンダーギャップが大きいなか、弱者の側に立ち、市民の声を自分の言葉に変えてエモーショナルに政治の場で伝えてくれるAOCはまさに"こんな女性議員が日本にもいたらなぁ……!"と思わせてくれるアイコニックな存在です!

eri
エリ/アクティビスト、「DEPT TOKYO」オーナー
https://www.instagram.com/e_r_i_e_r_i/?hl=ja
アパレル会社経営・プロダクトのデザイン・古着のバイイング/販売を通して、繊維産業、地球の環境課題、気候危機に対してどうアプローチできるかを模索中。またアクティビストとしてあらゆる社会問題に関心を寄せ、またそれをどう市民が課題解決のためにアクションできるのかを考えシェアし、さまざまなプロジェクトを立ち上げ運営に携わるなど、活動は多岐にわたる。

Coordination: Tomomi Hata, Maki Saijo

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