FASHION / TREND & STORY

アディダス「サンバ」が爆発的にヒットした理由を探る── 世界中を席巻する名作スニーカーの知られざる歴史

細身のレザーアッパーにトゥの切り替え、ガムソール、そしてクラシカルなスリーストライプス──アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)の定番である「サンバ」は、実はブランドの中でも特に長い歴史を誇る。サッカー用シューズとして生まれたこのシューズは音楽やスケートシーンなどでも愛されていたが、2020年以降にはコラボレーションやセレブたちが愛用したことで一躍ファッションシーンの人気者に。今やワードローブに欠かせないモデルとなった「サンバ」の足跡を振り返る。

アディダス創業者アドルフ・ダスラー Photo: Getty Image

当時はハイカットだった!? 70年前に遡る誕生秘話

「サンバ」の歴史は数あるアディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)のスニーカーの中でも最も古く、1950年にまで遡る。原型となったモデル(なんと当時はハイカットだった!)はブランドの本国ドイツにて冬の凍ったサッカーピッチで練習するためにデザインされた。同年に開催されたブラジルワールドカップでのプロモーションにあたり、氷上でも発揮するパフォーマンス性の高さからその名前がつけられた。そこから改良を重ねつつ、着用シーンも室内サッカー用へと変わっていき、現在の形に近いものになったのは1972年のこと。

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その後もマイナーチェンジを繰り返しながら世界中にファンを増やしていった。例えばイギリス。サッカーが盛んなこの国には各地にクラブチームが存在するが、1970年代頃から熱狂的なファンたちは試合観戦のためにヨーロッパ各地まで遠征するようになっていった。その際に、彼らが纏っていたのがジャージやスポーティなジャケット。足もとは「サンバ」に加えて、それと非常によく似た「ガゼル」などのスニーカーを合わせていたという。後にそのファッションはテラススタイルと呼ばれるムーブメントとなっていく。今年、再結成が大きな話題となったオアシスのギャラガー兄弟もかつてはそれらのアイテムを纏っていた。

他にもジャマイカの伝説的なレゲエミュージシャン、ボブ・マーリーも「サンバ」を履いてサッカーを楽しんでいたという逸話があり、これが現在の爆発的人気とも少なからず繋がりがある。また、1990年代までにはその機能性の高さからスケートシーンでも取り入れられるようになる。「サンバ」はそのアイデンティティであるサッカー選手だけでなく、その観戦やエクストリームスポーツを楽しむ人たちの足もとを支えてきた。

ウェールズ ボナーとのコラボで再注目

ウェールズ ボナー 2020-21年秋冬メンズコレクション Photo: Gorunway.com

定番モデルではあったものの、決してファッションシーンで存在感を放っているとは言い難かった「サンバ」。脚光を浴びはじめたのは2020年に入ってから。今や数々のコラボモデルが登場しているが、中でもイギリス発のウェールズ ボナーWALES BONNER)はこのスニーカーの知名度を一気に押し上げた。2020-21年秋冬シーズンで初登場したコラボモデルは、シュータンが通常よりも大きく、スニーカーに足を通すとめくれ上がるキャッチーなデザインだ。アイコニックなスリーストライプスはクロシェ編みで表現している。

このコレクションは、デザイナーのグレース・ウェールズ・ボナーがイギリスとジャマイカという自身のルーツに立ち返ったもので、前述のボブ・マーリーも大きな影響源だ。その後、素材やカラー違いで度々リリースされているが、いずれも二次流通で高値で取引されているほどの人気。ちなみに両者はこれまでに20足近い「サンバ」を発表している。

セレブたちがこぞって愛用し、爆発的人気に

2022年2月のカイア・ガーバー Photo: Getty Image

Arnold Jerocki/Getty Images

2022年3月のベラ・ハディッド Photo: Getty Image

Arnold Jerocki

さらに2022年にはセレブリティがこぞって着用したことで大きなバズを起こした。カイア・ガーバーは、ブラウンのコートにブラックのインナーとパンツというシックな装いに「サンバ」をプラス。一方、ベラ・ハディッドはナードなスクールガールズスタイルを披露。ポイントはダークカラーの「サンバ」と白ソックス。襟もと、ニットやスカートのライン、バッグ、そしてスニーカーのスリーストライプスと随所に白を散りばめることでコーディネートにまとまりを生みだしていた。

今シーズンも各都市のオフランウェイでキャッチ

Photo: Getty Image

Photo: Getty Image

2024年現在も「サンバ」の人気が衰える気配はなく、各都市のコレクションのオフランウェイでもまだまだ見かける。甲がやや低くシャープなシルエットは、ジャケットなどのフォーマルなアイテムとも相性バツグン。革靴ほどカチッとしていないのが良いのだろう。ほどよい抜け感が足もとのスパイスとなってくれるのだ。今シーズンはトレンドカラーのカーキのアウターなどと合わせて、何かと重くなりがちな秋冬のスタイリングを軽やかに演出してみるのも◎。

コラボモデルも続々登場

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今年も様々なコラボモデルが発売された。カナダのデザインスタジオのジョウンド(JJJOUND)とは、ベージュを基調にしながら素材によってグラデーションをつけたモデルを共作。中国出身のデザイナーによる気鋭のブランド、ディンユー・チャン(DINGYUN ZHANG)とのタッグでは、パテントレザーによって近未来的な雰囲気に。スニーカーショップのアトモスとの協業はタキシードがコンセプトで、シルバーとブラックのレザーで上品に生まれ変わった。ウェールズ ボナーとのコラボも継続しており、今季はアッパーにクロコダイルのエンボス加工を施した。カジュアルシューズの枠を超えて多様な進化を遂げている「サンバ」から今後も目が離せない。

今シーズンの最新レギュラーモデルも要チェック

サンバ LT ¥16,500

コラボ以外の新作も続々登場している。デビュー当時、サッカーのトレーニング用として作られたモデルらしく、こちらはスパイクに着想を得たデザイン。ウェールズ ボナーのコラボモデルにも通ずる独特なシューレースカバーがユニークだ。「サンバ」と切っても切り離せないサッカーシーンに想いを馳せるなら迷わずこちら。

サンバ OG ¥15,950

今やストリートスタイルのタイムレスなアイコンとなった「サンバ」。こちらは薄型のシルエットにソフトなレザーアッパー、スエードの切り替え、そしてガムソールとサンバ本来の要素を忠実に踏襲した、シーンを問わず活躍すること間違いなしの1足。この名作が愛される理由を存分に感じられるクラシカルなスタイルだ。

問い合わせ先/アディダスお客様窓口 03-6732-5461

Text: Ryo Todoriki Editor: Reona Kondo

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