ベネディクト・カンバーバッチ主演のドラマ「SHERLOCK/シャーロック」で宿敵、ジム・モリアーティを好演したアンドリュー・スコット。そんな彼はパトリシア・ハイスミスの小説をNetflixでドラマ化した「リプリー」で主人公を演じるが、生粋の悪役である「モリアーティとは異なる」という。BBCの「トゥデイ」でこう語った。
「モリアーティを演じた時は、悪役であることを意識した。けれど、リプリーをヴィランとするのは違うと感じた。彼はアンチヒーローです。視聴者をリプリーの被害者の立場に立たせるのではなく、リプリーのように生きるのはどんな感じかと思わせることができるかどうかは、すべて僕にかかっている。本作の主人公は彼だから、僕らは彼に共感すべきだ」
1999年にもマット・デイモン主演で映画化された本作の主人公、トム・リプリーは裕福な男性に雇われ、イタリアにいる放蕩息子ディッキー・グリーンリーフを連れ戻すよう言いつかる。イタリアで華やかな生活を送るディッキーと対面するものの、やがて彼に対し複雑な感情を抱くようになり、ウソとペテン、殺人の道へと進んでいく。ドラマ版では、ジョニー・フリンがディッキーを、ダコタ・ファニングがディッキーの恋人マージ・シャーウッドを演じ、階級というテーマがより前面に描かれるそうだ。
「これは、大きな才能を持ちながら、貧しい生活に喘ぐ男の物語です。彼の存在は軽く、大勢と同じように生き残るためにすべきことをする。そんな彼が、自分よりも才能のない人たちが、良心の呵責もなくアーティストだと名乗る世界に足を踏み入れる」。ハイスミスの原作の素晴らしいところは、「彼を応援したくさせる」ところだと語るアンドリューは、『ハムレット』のセリフを引用し、こう続ける。「『コミュニティにおける特定の要因を排除したら、デンマークに何かよくないことが起こるのだ(腐敗が起こる)』。伝えたいメッセージはこれです」
Text: Tae Terai
