シェミナ・カマリ率いる新生クロエ(CHLOÉ)は、2024-25年秋冬コレクションで優美なラッフルドレスをニーハイブーツにインしたり、ゴールドのベルトをアクセントに効かせたスタイリングを前面にフィーチャーし、ボーホーを正式にカムバックさせた。しかし、このトレンドを魅力的に見せたのは、ほかの誰でもないカマリ自身だった。
シルキーなキャラメルブラウンのボタンダウンシャツに、ヴィンテージのミッドライズフレアデニム、そして白スニーカー。ランウェイに現れたデザイナーの姿は、ショーに登場した服を実際に着たいという気持ちと、彼女のように気楽で無邪気なアティチュードを漂わせたいという気持ちの両方を掻き立てた。
ボーホーの鍵を握る「ブラウス」
カマリはクロエでのデビュー前に行われたインタビューで、ヴィンテージのブラウスを集めていることを明かしている。その数は600〜700着にも及び、白やオフホワイトから、ベージュやブラッシュトーンといった具合に、色別に整理されているそうだ。こだわりはとても強く、「クロエらしいアイテムといえば、ブラウス一択」と断言するほど。
しかし、ブラウスはフェミニンでガーリーなイメージがあり、それよりもボタンダウンシャツやTシャツ、タートルネックといった着まわしの効くアイテムを支持する人は多い。そんななか、カマリがランウェイに送り出したホワイトのフリルとレースの一枚は、今シーズンのマストハブのひとつになると思わせるほどの魅力があった。そこで私は、このトレンドピースをいち早く押さえるために、ヴィンテージショップをのぞいてみることにした。
ヴィンテージディーラーたちが肌で感じ取る、“今”のムードとは
今月初めにブルックリンで開催され、全米から60以上のヴィンテージディーラーが集ったヴィンテージフェア「A Current Affair」では、ボーホーの影響が形を成し始めていたが、私が予想していたものとは少し違った。そこにはイヴ・サンローランが手がけた水玉模様のオフショルダーブラウスなどのアーカイブピースもたくさんあったのだが、今私のワードローブに加えるべきは、ヴィクトリア朝やエドワード朝時代を想起させるコットンやレースのブラウス、1920年代、30年代、40年代のシアースリップやガウンのようなアンティークスタイルだと感じたのだ。
出展者の一人、Toots Vintageのマイケル・フィリップスは、「4年前にヴィンテージの販売を始めたとき、私が持っていたのはすべて30年代と40年代、あるいはエドワード朝時代のブラウスやドレスでした」と回想する。「そこからY2Kのムードへと発展しましたが、今はもっとリラックスしたスタイルが求められているように感じるので、以前のようにエドワード朝のものを復活させようとしています。クロエのコレクションにあったティアードラッフルを見て、『あれが欲しい』と思ったんです」。彼のラックにかけられたシルクやサテン製の色とりどりのドレス(なかには手染めのものも)たちは、クロエのデザインと比べるとフリルは控えめだが、その雰囲気に近いものがある。
Here Studio Californiayのオーナーであるレイチェル・キュブラも、ボーホーファッションのゆったりとした、しかし着実な盛り上がりを感じている。「人々の装いを毎日目にしていて、復活を予期しました。でも、私はカリフォルニアに住んでいるので、ニューヨークとは(ムードが)少し違うんですけど」と彼女は説明する。「私はいつもブラウスやシアー素材のアイテムを販売してきました。以前はデニムにゴージャスなブラウスを合わせるのが流行っていたのですが、今はエアリーなドレスを着て、よりフェミニンな着こなしをしている女性を見かけます」
一方、2006年からSwaneeGRACEを経営しているジーナ・ジョンソンにとって、彼女のショップは自身のボーホーテイストを反映したものである。「(高級デパートの)バーグドルフ・グッドマンで働いていたことがあるのですが、いつも『それ、クロエですか?』と聞かれていました。私のヴィンテージの世界では、ボーホーはいつだってそこにあったのです」と彼女は言う。「A Current Affair」で展示されたジョンソンのセレクトは、ホワイトとベージュの色調で、ジャカードや刺繍、レースなど、ありとあらゆる質感と仕上げのドレスとブラウスでいっぱいだった。しかし、1970年代のものはどれも売れてしまったそうだ。「私の肌感ですが、あの時代のアイテムを求める人は多いので、本当にいいものを見つけるのが難しくなってきたと感じています」。ヴィンテージのボーホーピースを手に入れるのは、これからかなりのチャレンジとなりそうだ。
Text: Laia Garcia-Furtado Adaptation: Motoko Fujita
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