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シャネル、パリ国立オペラ座のガルニエ宮で奏でるシアトリカルな洗練【2024-25年 秋冬クチュール】

ヴィルジニー・ヴィアールシャネル(CHANEL)のクリエイティブ・ディレクター退任を発表して以来、初めて発表されたコレクション。メゾンと深いつながりがあるパリ国立オペラ座にて、舞台装飾やバレリーナの衣装を反映した華麗なルックが踊り出る。

シャネル(CHANEL)2024-25年秋冬オートクチュールコレクションの会場は、パリ国立オペラ座のガルニエ宮。客席を囲む回廊には、フランス人演出家のクリストフ・オノレがこの日のためにデザインした赤いベルベットのオペラボックスが再現された。

恒例のグラン・パレは改修工事を終えたばかりだが、オリンピックとパラリンピックの舞台となるため新たな会場が必要だったそう。とはいえ、パリ国立オペラ座でシャネルがオートクチュールを発表するのは、メゾンとフランスの豊かな文化との長い結びつきをたたえるのにふさわしい。

ガブリエル・シャネルの時代からメゾンとダンスの関係をつなぐ場所、パリ国立オペラ座。シャネルはここのオープニングガラのスポンサーを務め、同バレエ団とパリ国立オペラ座をサポートしている。さらに、ヴィルジーニー・ヴィアールが2024年春夏オートクチュールで表現した水彩画のような風景は、ガブリエル・シャネルが1924年上演の『青列車』のために初めて衣装を手掛けてから一世紀という節目を祝して、バレエとの関係性にフォーカスしたものだった。

2019年にカール・ラガーフェルドの後任としてアーティスティック・ディレクターを務めるヴィアールがメゾンを去るというニュースが流れてからまだ3週間ほどしか経っていないが、今シーズンはシャネルのファッション・クリエイション・スタジオが手がけたものだそう。

チームは舞台芸術からデザインのインスピレーションを手繰り寄せ、その感性を際立たせた華やかなソワレを披露。ブラック、ゴールド、シルバー、フューシャ、アイボリーなどリッチなカラーパレットが中心となり、さらにタッセル、カボション、ブレードなどグラマラスで重厚感のある装飾が印象的なコレクションに仕上がっている。

ボックスシートの木製扉から登場し、ショーの開幕を告げたのは、ラガーフェルド、ヴィアールと信頼関係を築いていたモデルのヴィットリア・チェレッティ。ダークネイビーのタフタ製オペラケープを纏い、『青列車』のコスチュームを彷彿とさせるスポーティーなボディスーツを覗かせる。

フィナーレのマリエは、ペチコートスカートのホワイトのシルクタフタのオペラ風ガウン。トップには花、スパンコール、クリスタルの刺繍が全面に施され、パフスリーブにはプリーツと刺繍のブレードがあしらわれ、メゾンが誇るサヴォアフェールが純白の世界に宿る。

メゾンのコードを忠実に表したルックには、バレリーナのワードローブのようなディテールが随所に散りばめられている。ツイードジャケットのパフショルダーには、"ブラックスワン(黒い白鳥)”のような羽が舞い、襟と袖口にフリルがあしらわれたトップスや、ルマリエが制作したピエロのようなラフカラーが登場。

さらに、クラシカルなショート丈とロマンティックなフル丈にカットされたチュールのチュチュは、モデルの身体をやさしく包み込み、身体と衣服が奏でる軽やかな優雅さを表現している。

モデルのヘアアクセサリーやコレクション全体に見られたリボンは、ガブリエル・シャネルにとってしやなかで自由な生き方を象徴するシンボルであり、ヴィアールがこよなく愛したモチーフ。シャネルはこれまでも、そしてこれからも、自分の人生という舞台を踊るかのように軽やかに生き抜く女性たちに魅了され、魅了し続けるのだろう。