シトラス みずみずしく弾け飛ぶ、柑橘のフレッシュさ
ビタミンカラーのイエローをイメージカラーとするシトラス。フランスではギリシャ神話の“黄昏の娘たち”を意味するヘスペリデスと称されるファセットで、神々の園に実る黄金の果実を想像させる、ひたすらに軽やかで明るい、歓喜の香りだ。ベルガモットやグレープフルーツ、オレンジ、マンダリン、レモンなどの柑橘で構成され、つんと鼻を突くような刺激を孕み、ジューシーで酸っぱさを感じさせる香りは、明朗で快活、フレッシュな印象を与える。
「シトラスの魅力は何と言っても爽やかさ。弾けるようなZestyなフレッシュさから洗練された大人のエレガンスまで、様々な表情の爽やかさがあり、気持ちを持ち上げてくれるのが魅力です。また、伝統的なコロンの香りはシトラスの代表的な用い方ですね」と話すのは、香りの専門家でありフレグランススクール「サンキエムソンス ジャポン」の代表を務める小泉祐貴子さん。香りのビタミンと呼びたくなるようなエナジー溢れるダイナミックさを感じさせ、多幸感で包み込む、喜びに満ちたノートだ。
シトラスのもつ香りの表現力
「爽快で清々しく、凛としたウッディノート」と小泉さんが表現するシトラス ウッディ。「酸の効いた爽やかさとジューシーさが魅力のノート。弾けるようなフレッシュさを表現したり、シトラスとウッディノートを組み合わせて清々しく凛とした表情に仕立てて洗練されたエレガンスを感じさせたり、幅広いニュアンスがあります。最近では、シトラスとニューフレッシュネスという洗い立ての洗濯物のような爽やかな清潔感を持つファセットと組み合わせて都会的な爽やかさを表現するフレグランスも出てきており、パフューマーのクリエイティビティに触れるのも楽しみです」
フルーティ 活気に満ちた存在感と弾けるような高揚感が魅力
シトラスと同様にフレッシュで爽やかさをもち、艶かで活気に満ちた印象をも与えながら遊び心も感じさせるファセットだ。果実を中心とし、みずみずしくもフレッシュさを封じ込めたノートで、アップルや西洋梨、カシス、フランボワーズ、無花果などの香料を用いるのが特徴。ほかのさまざまなファセットと組み合わせることでパワフルな存在感を放つ。フルーティでジューシーなこの香りは屈託のない高揚感を付与。それでいて、穏やかなエレガントさを光らせ得るのも魅力だろう。
「フルーティには、摘み立ての果実のようなフレッシュなものからコンポートを思わせる凝縮された甘さが魅力のものまでありますが、フレグランスに親しみやすさを感じさせます」と小泉さん。この20年ほど、フローラルと組み合わせた香りがトレンドを牽引しているという。
フルーティのもつ香りの表現力
誰もが一度は香ったことがあるのではないか、と思えるほどにスタンダードだ。「男女を問わず、フルーティファセットを使用したものは人気。フルーティ フローラルは柔らかい甘さと爽やかさをあわせ持つ女性らしい香り。可憐で親しみやすいフレッシュさを表現します」。日本人に好まれるファセットで知られるこの香りは、日常に彩りを繊細に与えてくれるはず。
話を聞いたのは……
小泉祐貴子
香りデザイナー。サンキエムソンス ジャポン代表。慶應義塾大学理工学部卒業後、資生堂、香料会社フィルメニッヒを経て、2014年にセントスケープ・デザインスタジオを設立。コンサルティング、香り環境デザイン、香水のプロデュースなどを幅広く手掛ける。近著に『英国王立園芸協会 香り植物図鑑』(Stephen Lacey著 小泉祐貴子訳/柊風舎 刊)。
https://www.cinquiemesens.jp
Text: Akira Watanabe Editor: Rieko Kosai

