「違いを恐れるのではなく、違いを祝福することが本作のテーマです」
実写版『リトル・マーメイド』に、エリック王子役で出演する、ジョナ・ハウアー=キングは言う。「とてもバランスのよいラブストーリーに仕上がっていて感動しました。今作は自分と違う人たちを恐れるのではなく、その違いを祝福してお互いに手を取り合うことの素晴らしさがテーマになっています。また、外見だけでなく、内面や人柄に惹かれて恋に落ちる二人の姿にも共感してもらえるのではないでしょうか」
オリジナルのアニメーションではその人物像が深くは描かれていないエリック王子というキャラクターだが、今作ではどう掘り下げられているのか。「今作では、新しくエリック王子の母親というキャラクターが加わっています。彼女の存在によって、王子の人物像や内なる思いがよりクリアになっていると思います。さらに僕が歌う、3分半の楽曲の中に彼の情熱や欲望、輝かしい精神などが見事に表現されているので、そこにもぜひ注目していただきたいです」
「ハリーがプリンセスを演じる意義は大きい」
互いに大作に出演するのは初めてだったという、アリエル役のハリー・ベイリーとはすっかり仲良しに。一方で、アリエルは黒人ではなく白人が演じるべきだという世論があったことについてはこう意見を述べる。「スクリーン上で、自分と似た外見を持つプリンスや・プリンセスを観ることが少ない子どもたちにとって、ハリーのキャスティングはどれほど重要で価値のあることか。その意義を、決して過小評価をすることはできないと思います」
今後は多数の公開作が控えているが、第二次世界大戦をテーマにしたミュージカル作品で脚本家デビューも近い様子。その才能に期待したい。
1. ロンドン生まれ&育ちのあなたにとって、ロンドンでお気に入りのスポットは?
サウスバンク地区です。幼い頃は当時舞台制作の仕事をしていた母と国立劇場に行ったり、テート・モダンに連れて行ってもらったりしていました。その頃はアートを理解していたわけではないけれど、あの地区の雰囲気を感じるのが大好きでした。今はアートの素晴らしさがわかるようになり、ちょうど昨日も散歩がてら、テート・モダンの「ヒルマ・アフ・クリントとピート・モンドリアン」展を観に行ってきたところです。
2. そんなアート好きなあなたにとって、気になるアーティストは?
米フィラデルフィア出身の彫刻家であり現代作家でもあるアレクサンダー・カルダーがとても好きで、今部屋に飾っている絵も彼の作品です。母がプレゼントしてくれました。鮮やかな彩色が特徴的ですよね。また、マーク・ロスコの作品は僕にとって癒し効果があるので、心を整えたいときにはそれこそテート・モダンに行き、音楽を聴きながゆっくりとロスコの絵を眺めたりしています。
3. 人生で衝撃を受けるほど夢中になった本は?
ファンタジー好きなのですが、最初に本の世界に溺れるという体験をしたのはJ・R・R・トールキンの『ホビットの冒険』でした。難解な部分も多々あり挑戦でもありましたが、夢中になってあっという間に3部作を読破しました。6歳頃の話だったと思います……と言ってみたいものですが、あれは確か12 ~ 13歳のときでした。もちろんその後は、『指輪物語』へと読書の波は続きました。
4. 『リトル・マーメイド』以外で、強い思い入れのある、大好きなディズニー作品は?
ディズニー作品は大好きで、幼い頃は全作といっていいほどVHSで持っていました。引っ越しをしても、お気に入りは手もとに残してきました。今僕の部屋にあるのは何だと思いますか? 『美女と野獣』(1991)です。もちろんこの作品も大好きですが、実は一番のお気に入りの『ライオン・キング』(1994)は姉に取られてしまいました(笑)。『ライオン・キング』の魅力はやはり劇中の歌。大好きすぎて、両親にせがんで舞台版も観に連れて行ってもらったほどです。
5. エリック王子役として美声も披露されますが、あなた自身が影響を受けたミュージシャンは?
音楽も映画同様、ジャンルに縛られず幅広く楽しみますが、ずっと変わらず好きで定期的に立ち返るのがレナード・コーエンとジェフ・バックリィです。もちろん、常に新規開拓も欠かしません。最近はロンドンのシンガーソングライターのエロイーズの新作アルバム、それからカリフォルニア出身のスヴェン・ガムスキーのソロ・プロジェクト、スティル・ウーズィにハマっています。
Text: Rieko Shibazaki