マクシミリアン・デイヴィス率いるフェラガモ(FERRAGAMO)は、ミラノコレクションで最も熱い視線が注がれるブランドのひとつとなっている。4回目となるコレクションでは「SPIRIT」と題し、1920年代の自由な精神性に着目した。
「1920年代において服は、自由を謳歌する手段の代表的なもののひとつでした。そしてその自由の表現は、私自身や私のレガシー、そしてフェラガモと共鳴するのです」とデイヴィスはショーノートで説明している。
人々がこれまでの社会的慣習にとらわれず、着るものを選ぶことにより自身の生き方を表現していた1920年代。芸術文化が花開き、シュルレアリスムが誕生することにもつながった重要な意味合いをもっている。当時、フェラガモは新しい時代の呼吸に合わせながら実験的な手法や素材をシューズに取り入れ、その独創性溢れるアイデアは、デイヴィスに大きなインスピレーションを与えているようだ。
彼の得意とするテーラリングは今シーズンも健在であり、シャープで彫刻的なラペルを通してシュルレアリスムの精神を表現。ワイドショルダー、重厚なウール、しなやかなレザーは、男性的なシルエットを好んだジョーン・クロフォードやグレタ・ガルボといった当時の女優たちのワードローブを反映している。
その巧みなシルエットは、頭からつま先まで単色でまとめ、可能な限りミニマルなルックを形成することで強調されている。オリーブグリーンを中心にダークトーンが広がり、シグネチャーの赤など鮮やかな色彩が差し込まれる様は、極めてロマンティックだ。
テクスチャーをより自由に取り入れたアプローチも今シーズンの特筆すべき点。フラッパーガール風のフェザーやスパンコール刺繍、フェミニンなシアー素材、ラッカー仕上げのオーガンジーがコレクションに麗しさを添えて。中でも、フェラガモのクラフツマンシップを最大限に表現したマキシラミネートレザーのスパンコールは、約24時間かけて手作業で施され、人魚の鱗のような模様と輝きを生んでいた。
シュルレアリスム的モチーフのスパンコールドレスは、デイヴィスによる新定番アイコンバッグ「ハグ」とマッチして提案され、ラストを飾るのにふさわしい圧巻のルックだった。
フェラガモのルーツであるシューズにおけるデイヴィスの使命は、ブランドの偉大な歴史を見つめ、新たな命を吹き込むこと。アーカイブを再解釈したTストラップのサンダルは、当時の面影を残しながらもモダニティを象徴するシルエットに生まれ変わっている。ほとんどのシューズには直線的で幾何学的なヒールが採用され、フェティッシュな雰囲気を醸している。
一見シンプルな方法のように見えて、デイヴィスのアプローチには繊細さがうかがえる。一年半前にファーストコレクションを発表して以来、新生フェラガモの基礎を築いてきたが、今シーズンはさらなる進化を示していた。
Photos: Gorunway.com Text: Maki Saijo