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ジョルジオ アルマーニ、新複合ビルのオープンを記念してニューヨークでショーを開催──「私にとって大切な節目となった街への永続的なオマージュ」【2025年春夏コレクション】

10月17日(現地時間)マディソン アベニューの新しい複合ビルのオープンを記念し、ニューヨークで2025年春夏ウィメンズ コレクションを発表したジョルジオ アルマーニGIORGIO ARMANI)。ミラノ ファッションカレンダー外初のショーで、ニューヨークという街にオマージュを捧げるとともに、ブランドの「旅路」を辿る幻想的な物語を展開した。
Photo: Alessandro Lucioni/Courtesy of Giorgio Armani

ニューヨークの何が一番好きかというと、街のスピード感、絶え間なく革新し続ける姿勢、そして本質を保ちながら全く違う姿にもなれるところです」とジョルジオ・アルマーニはショー前、『VOGUE』に語った。彼があげたこの街の魅力は、そっくりそのまま彼自身にも当てはまる。

御年90歳を迎えたアルマーニはこの日、ブランド創業から49年の間に探求してきた幅広いテーマやスタイルを追憶する90のルックを披露した。そのどれもがフレッシュで、ただの回顧コレクションではないことは明白だった。

Photo: The Washington Post/Getty Images

メインラインのジョルジオ アルマーニGIORGIO ARMANI)がミラノ以外の街でショーを開催するのは今回が初。2013年の「One Night Only」に続き、2025年春夏ウィメンズ コレクションの舞台としてここニューヨークが選ばれた表向きの理由は、マディソン アベニューに立つ新複合ビルのオープンの祝賀だ。1930から40年代の美学からインスピレーションを得ている新しいビルは12階建て、総面積9,000平方メートルの広さを誇り、マンハッタンのアッパーイーストサイドの歴史的景観に溶け込むように設計されている。ジョルジオ アルマーニおよびアルマーニ / カーザ(ARMANI / CASA)のブティック、アルマーニ / リストランテ(ARMANI / RISTORANTE)、そしてラグジュアリーなジョルジオ アルマーニ レジデンスが入っていて、噂によるとオープンから3日間で、1日100万ドル以上を売り上げたのだとか。

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しかし、ミラノ ファッションカレンダー外で特例として初めてコレクションがニューヨークで発表された理由は、新ビルのオープン記念以外にもある。1975年から1982年かけて、無名のスタートアップから世界有数のファッションデザイナーへと上り詰めたアルマーニの躍進は、この地での活躍と密接に結びついている。ミラノに次いで、ニューヨークはアルマーニが世界的な成功を収めるための重要な出発点となった場所なのだ。

「画面越しでしか見たことがなかったニューヨークを1970年代後半に初めてこの目で見て肌で感じたときは、大いに刺激を受けました。この街にとってもアメリカにとっても胸が高鳴るような時代で、自分もその活気の一部になれたような気がしました」とアルマーニは当時の訪問について語っている。

ルックとともに巡る、さまざまな時代やビジョン

Photo: Alessandro Lucioni/Courtesy of Giorgio Armani

ショー会場となったのは、同じくアッパーイーストサイドにあるパーク アベニュー アーモリー。集まったゲストたちが雑談に興じていると、壁に2台の蒸気機関車の映像が映し出され、ショーの始まりを合図した。そしてカーテンが落ち、グランドセントラル駅を模した巨大な展示スペースが出現。半円状に長椅子が並べられた空間は、駅の待合室さながら。ここからアルマーニの旅が始まる。

Photo: Isidore Montag / Gorunway.com
Photo: Isidore Montag / Gorunway.com
Photo: Isidore Montag / Gorunway.com

最初にランウェイを飾ったのは、クロップド丈のトレンチコートとハーフブーツにプリーツパンツをたくし込んだモデル。クラッチバッグを携え、ベルトにはグレージュのレザーポシェットを留めていたが、数歩後ろにはスーツケースを両手にさげたポーターの姿が。その後、小物やスタイリングでモデルたちが演じるキャラクターを細部にわたって表現したルックが要所要所に登場。あるモデルはどこかへ急いでいるのか、ニットのネクタイが風に吹き飛ばされ、テーラードスーツの肩にかかっている。またあるモデルはシルクのブルマパンツにジャケットドレスという全身ブラッシュカラーで統一されたルックに身を包み、小脇には子犬を抱えていた。どこかの令嬢だろうか。それぞれの旅路を歩むさまざまな登場人物がランウェイを闊歩する。

しかし、今回のショーはただの空想の旅ではなく、広い意味でアルマーニというデザイナーを形作った主要な時期やビジョンを巡る旅だ。オープニングには華やかでありながらはつらつとしたウィメンズのトラベルウェアが披露され、世界各国の文化からインスパイアされた衣服は東洋の風をはらむ。平織りのチェックやジャカード織のシルクは視覚的にも質感的にも刺激をもたらし、ショルダーを強調したチュニック風のシャツ、ウエストコートをアレンジしたトップ、優しい色合いのオーガンジー製ロングスカート、柄も製作法もいかにも複雑な生地のシャツパーカなど、さまざまなスタイルや着こなしが融合しながらピュアなエレガンスを表現する。

Photo: Isidore Montag / Gorunway.com
Photo: Isidore Montag / Gorunway.com

アルマーニにしては少なめだったウィメンズのテーラードアイテムは、その分メンズウェアで展開された。「服は着る人の個性を引き立たせるものであるべきで、テーラーリングはタイムレスだからこそ、個性を完璧に引き立てることができるのです。過去に縛られているように見えるかもしれませんが、テーラーリングこそが未来だと私は思います」とアルマーニはショー前に語った。特に印象的だったのは、さまざまな色味のセージグリーンに染色されたストライプ柄のシルクスーツやアルマーニ流のベースボールシャツの上からアンコンストラクテッド・ジャケットを羽織ったルック。テーラードジャケットをボタンアップのレインコートに替え、スリーピーススーツをゆるく準えたデザインも見られた。

Photo: Isidore Montag / Gorunway.com

後半に展開されたのは、波打つ縞模様をふんだんにあしらったウィメンズのシルクアイテムやシアーなスカートやトップ。やがて流れるようにソフトなシルエットのイブンニングウェアが夜の訪れを告げ、ルックはデイウェアからイブニングウェアへ、カラーパレットは都会的なグレーから、ベージュ、ブロンズ、ブラッシュ、パウダーブルーといった麗かなものへ移り変わった。そしてフィナーレではオープニングを飾ったモデルが再びランウェイに登場。光輝くドレスを纏い、ベルベットのイブニングジャケットを着た3人の男性モデルを両脇に現れ、夜のとばりをおろした。

「着想から創造までの道は予測不能なものです。でも、だからこそ刺激にあふれているのです」とアルマーニ。この日を新たな起点に、彼はこれからも物語を紡ぎ続けることだろう。

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