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大切な「腸」の働きと重要性。腸内環境を改善する5つのヒント

私たちの健康と密接なかかわりを持つ腸。その鍵を握るのは、腸に存在する何十億もの細菌からなるマイクロバイオームの質と多様性だ。UK版『VOGUE』から、今すぐ取り入れられる腸内環境の改善法を紹介しよう。

すべての健康にかかわる「腸」

Photo: Maria Korneeva/Getty Images

免疫力や気分、消化機能、エネルギーと、私たちの健康と密接にかかわる腸。その腸に存在する、何十億もの細菌からなるマイクロバイオーム(人の体に共生する細菌・真菌・ウイルスなどの微生物のこと)の質と多様性が、私たちの健康と幸福を左右することがわかっている。ここ数年、細菌を増やすプロバイオティクスやコンブチャなどの製品が大ブームになっているが、腸の健康に必要なのは実はそれだけではない。

2023年に放映されたイギリスのテレビ番組「Know Your Sh*t:Inside Our Guts」は、腸の健康の複雑さと、腸と身体や脳がいかに結びついているかを探求する番組だ。プレゼンターを務めるのは、双子のリサとアラナ・マクファーレン。二人は20代前半の頃はジャンクフードが大好きなDJだったが、マイクロバイオームの研究に没頭する疫学者、ティム・スペクター教授が率いるTwinUKによる腸内細菌叢(「腸内フローラ」とも言われる)に関する研究に参加して以来、その嗜好が変わった。

研究に参加してすぐに、二人は遺伝子的には同じであるにもかかわらず、腸内細菌叢に大きな違いがあることに気づいた。「同じ腸内細菌が30%しか存在しないことを知って、健康とウェルネスについて考える大きな方向転換になりました。研究に参加する前は決まったライフスタイルを送っていたため、私たちの細菌の多様性は非常に低かったんです」

二人はスペクター教授の研究対象として、大腸内視鏡検査を含む厳しい検査を受けた。「教授の指示で、最初の1カ月はアルコールと加工食品だけ、2カ月目は食物繊維の多い植物性の食事をとりました」と二人は話す。そして自分たちが運営するウェブサイト『The Gut Stuff』だけでなく、前述のテレビ番組でも研究から学んだことを発信するように。

意外と知られていない腸の重要性

Photo: Tanja Ivanova/Getty Images

二人は「腸とは何か、そして腸がいかに重要であるかを、この番組で理解してもらいたいんです」と言う。「腸は単に胃のことだと思っていましたが、実際は口から下に向かって果てしなく広がっています。マイクロバイオームの生態系はこの道に沿って存在し、私たちの健康に大きな役割を果たしています」。番組では、便秘、腹部膨満感、腸内ガスなどさまざまな腸の問題を抱えたゲストが、症状の発生原因、最適な治療方法を求めて専門家たちを訪ねる。

ゲストのなかには、消化器専門医のラビア・トパン博士や栄養士のソフィー・メドリンだけでなく、心理学者や免疫学者を訪ねる人も。メンタルヘルスと免疫力は、腸と密接にかかわっているのだ。「食事療法だけでなく、呼吸法や催眠療法のようなホリスティック・アプローチを視野に入れることもあります」とアラナ。私たちの多くが毎日感じているストレスが、腸、ひいては私たちの健康に影響を及ぼす可能性があることがわかるだろう。

健康な腸内細菌叢を実現するのに、極端なダイエットや高価なプロバイオティクスのサプリメントは必要ない。その代わり、日々、健康とウェルビーイングに取り組み、食事に植物性食品をたくさんとり入れることが必要だ。「腸に大きな影響を与える睡眠も大事にして、ストレスに対処しましょう」とリサ。「そもそも私たちは、ウェルビーイングなんて夢のまた夢の話で、瞑想的なものだと思っていたので特に興味もありませんでした。でもこの番組で紹介しているヒントは、誰でも実践できて、お金もかかりません。ここが一番重要なポイントです」

スペクター教授の指導のもと、自分たちのマイクロバイオームの構成を変えることに成功した二人に、今すぐできる腸内環境の改善法を紹介してもらった。

1. 食物繊維をたくさんとる

「この番組では食物繊維の重要性を度々取り上げています。便をかさ増しするだけでなく、腸内の善玉菌のエサにもなります。10人中9人は、食物繊維を十分に摂取できていないのが実態です」

2. 便の状態をチェックする

「便に問題があるのは、自分の体があなたに対して何かがおかしいと訴えている証。番組ではさまざまな種類の便を取り上げ、チェックすべき点、正常な状態、医者に行くタイミングなど、あらゆる角度から説明しています」

3. 腸の健康状態を記録する

「二日酔いや病気、何か問題が起こるまで、自分の腸の状態を気にする人はいません。でも、いざ問題が起きてお医者さんに診てもらったら、最後にトイレに行ったのはいつですかと聞かれるでしょう。日頃から自分の排便記録をとり、生活習慣の改善に努めるといいでしょう」

4. 積極的に運動する

「運動は腸の働きを助けます。微生物は動くのが大好きなんです。運動の頻度を変えた人々を対象にしたある研究では、運動をやめた人々の持つ微生物の多様性が基本レベルまで低下しました。動けば動くほど、微生物の多様性は向上し、健康状態もよくなります」

5. カラフルな植物性食品をとる

「アメリカの腸内環境プロジェクトによれば、週に30種類の植物性食品をとることが推奨されています。野菜だけでなく、果物、ナッツ、種子、ハーブ、スパイス、豆類も含み、色とりどりに『虹色を食べる』ことを意識しましょう。つい習慣で、いつも同じ種類の野菜や果物を手に取ってしまうかもしれませんが、一週間同じものを作り続けるのではなく、いろいろな食材を取り入れてみてください」

Text: Hannah Coates Translation: Moe Ideishi
From VOGUE.CO.UK