さようなら、オムプリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)。来る年も来る年も、心躍るルックを展開してくれたブランドを、今季からパリ・メンズウェア・コレクションのショー枠から外すことを発表した三宅デザイン事務所。でもそう嘆く必要はない。ランウェイで見られることはもうないだろうが、廃止されたわけではなく、近い将来、ショールームで展示会が行われるという。
そのオムプリッセに取って代わり、今シーズンからファッションウィークに参加するのが、三宅一生が生前最後に立ち上げたアイム メン(IM MEN)だ。2019年に三宅が河原遷、板倉裕樹、小林信隆の3人を中心としたデザインチームを組織したことがきっかけで誕生し、2021年に本格始動。2024年には全世界で販売が開始された。
「本コレクションのテーマには、自由な精神から生まれる発想によって、あらゆる垣根を越え、多くの人々に新しい視点と自由をもたらすプロダクトの創造を目指すブランドの意志が込められています」。そう綴られたプレスリリースを片手にゲストたちは、ショーが開催されたパリ6区のレフェクトワール・デ・コルドリエに集った。会場に足を踏み入れてまず目についたのは、2台の巨大なロボットアームを用いた、吉岡徳仁によるインスタレーション。かつてマックイーン(McQUEEN)のショーでモデルにスプレーペイントを施したロボットとよく似た2台の先端には、それぞれ黒い正方形のパネルが取り付けられており、モデルが歩き出すと優雅に動き始めた。その動きは、よく見るとシンクロしているのがわかる。
服には、ブランドならではの技術と豊かなボリュームが光っていた。ミリ単位で異なるドットによって生み出されたテクスチャーやコントラスト、ファスナーやドレープで変形するシルエット、ボタンの留め方ひとつで多様な着こなしが叶うアウター。軽やかな布地や立体的なフォルムは、無限の可能性を秘めている。
アイム メンの原点にあるのは、「一枚の布」というシンプルなアイデアだが、この日打ち出されたルックは、複雑な魅力を織りなしていた。一見、ミニマルなようなオーバーコートも、緻密な手仕事と計算による賜物で、決して単純な構造ではない。その繊細な複雑さを武器に、アイム メンはこれからも軽やかに世界に羽ばたき続けるだろう。