長年、鬼才ティム・バートン監督とタッグを組んできたジョニー・デップ。その記念すべき第一弾となった『シザーハンズ』(1990)の主役を射止める前、トム・クルーズやトム・ハンクス、マイケル・ジャクソンといったビッグネームが候補に名乗りを上げていると知り、一時は諦めかけたそうだ。『ピープル』によると、バートン監督を取り上げるタラ・ウッドのドキュメンタリーに出演したジョニーは、『シザーハンズ』の裏話を披露。「トム・クルーズは実際、エドワード・シザーハンズを射止めるまでそう遠くなかった……真実のストーリーです」と明かしたそうだ。
当時、ドラマシリーズ「21ジャンプ・ストリート」のヒットによりティーンアイドルのイメージが強かったことから、脱却を図ろうとしていたジョニーは、『シザーハンズ』の脚本を読んでまさにこれだと感じたという。「あらゆるすべての強固なものをも通り抜け、僕という存在のまさに核心に迫りました。記述は美しく、キャラクターも美しかった。エドワードは僕自身だと感じ、感動したのでしょう。僕が演じるべき役どころでした」
しかし、すでにハリウッドを代表する有名俳優たちが候補になっていると知った彼は、「ハリウッド中が狙っているなら、自分がキャスティングされることはないだろう」と絶望したそうだ。「ティムはエージェントやスタジオ、皆からせっつかれ、多忙を極めていた。だから脚本を読んだ後で僕はエージェントに電話をして、『ミーティングをキャンセルしてください。僕は行きません』と頼んだ。彼女には『頭でもおかしくなった?』と言われた」
彼には当時、自分はテレビ俳優に過ぎないというコンプレックスのような思いがあったそうだ。こうした葛藤を経てバートン監督と面会したジョニーは、見事役を獲得。その後に『エド・ウッド』(1994)、『スリーピー・ホロウ』(1999)、『チャーリーとチョコレート工場』(2005)、『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』(2007)、『アリス・イン・ワンダーランド』シリーズと数々の作品でコラボレートしている。ウッド監督によるタイトル未定のドキュメンタリーはこの後、トライベッカ映画祭でお披露目される予定だ。
Text: Tae Terai