婚約者マイケル・ポランスキーとの出会い
レディー・ガガと婚約者のマイケル・ポランスキーは2019年、彼女の母シンシア・ジャーマノッタを通じて知り合った。ジャーマノッタはガガとともに設立した、主に若者のメンタルヘルス支援を目的とする非営利団体ボーン・ディス・ウェイ財団を運営するなかで、ポランスキーと知り合ったという。ポランスキーはナップスターの共同創業者で、Facebookの初代CEOであるショーン・パーカーの長年の仲間だ。
「マイケルに会った母が『あなたの夫に会ったみたい』と連絡をくれたのですが、私は 「未来の夫に会うのはまだ早い!」と答えました。母が私にぴったりな相手を見つけるなんて、想像もしていませんでしたから。(2019年12月、パーカーの40歳の誕生日パーティーがロサンゼルスにある彼の自宅で開かれたとき)私も招待されて『マイケルも来るの?』と母に訊くと『イエス』と言うので行きました。そこで彼と話したいと言い続けていたら、ついに私のところに来てくれて、それから3時間ずっと話し続けたんです。忘れられない会話でした。(その後何週間も電話で話し)それから最初のデートをして、恋に落ちたんです」
コロナ禍に恋人と過ごした、かけがえのない時間
「10代の頃から自分のキャリアを優先してきましたが、パンデミックの間、マイケルと同棲していた期間は2人の関係に集中できました。彼はレディー・ガガではない私を知りたいと言ってくれたし、すごく大きな支えとなってくれる愛情深い人です。パンデミックが世界にどれほど大きな影響を与えたかを目の当たりにするのは、とてもつらいことでした。多くの人が深刻な症状に苦しんだだけでなく、亡くなりました。それに多くの人が孤立しました。私はひとりきりにならなかったことに深く感謝しています。
マイケルのような人には、これまで会ったことがありませんでした。彼はとても賢くて、優しいです。彼の人生と私の人生はまったく違います。彼はとてもプライベートな人だし、お互いに気が合うという理由だけで、私と一緒にいるんです。ファンのみなさんに知ってもらいたいのは、今、私はすごく幸せだということ。それに健康です。こんなふうに私がメッセージを伝えるのは、『クロマティカ』のときが最後だったような気がします。あのアルバムは、自分のメンタルヘルスにとても苦しんでいた時期のものです。本当に暗い場所にいました。その前も、何年ももがき苦しんでいました。
でも、すべてが変わり始めたのです。心から信頼できる人ができて、その人は私がどのように不幸で、なぜ幸せだと思えないのかを見抜いてくれました。そして私の手を握ることを恐れなかった。そして私を知ることも──しかもとても奥深いところまで」
レディー・ガガであり続けることの苦悩
「(レディー・ガガでいるという)この冒険には、たくさんの苦悩が伴います。でも、その苦しみを掘り下げていくと、自分の表現に違う側面が生まれたりもする。このスタジオ(リック・ルービンが所有するマリブのレコーディング・スタジオ『シャングリ・ラ』。ガガはここで『ジョアン』や、初の主演映画『アリー/スター誕生』のサウンドトラックをレコーディングした)にいるとリラックスできるし、自分の中の悪魔と向き合うことができます。すると驚くことに音楽が聞こえてくるんです。
こんな(レディー・ガガとして生きる)ことをひとりでずっと続けていかなければならないんだ。しかも永遠に、と思っていました。それが本当に怖かった。大変な人生を背負っていますから。経験したことがなければ、それがどんなものかわからないと思います。でも、もうひとりでやらなくていいんです」
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』で描かれた狂乱
『アリー/スター誕生』(2018)ではブラッドリー・クーパーと、『ハウス・オブ・グッチ』(2021)ではアダム・ドライバーと、そして最新作『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ではホアキン・フェニックスという名優と共演しているレディー・ガガ。DCコミックのキャラクターをゆるやかにベースにしている今作でも、コミカルで悲劇的な世界が描かれている。
「私たちはよく(ジョーカー役の)ホアキン(・フェニックス)のトレーラーに集まり、時には脚本を破って最初からやり直すこともありました。本当にクールで解放的なプロセスでしたね……この映画はこれまで参加した中で、最大の作品となりました。
劇中には、私が少女のように歌う場面が何度かあります。演じたリーという女性は大人ですが、そうした未熟さをもって世の中を渡っていく。そこが面白いと思いました。この物語にまつわるイメージは、今回の映画の衣装デザイナー、アリアン・フィリップスの才能にインスパイアされたところもあります。幼い頃に母からもらった祖母のワンピースが、大人になっても私にぴったりなのは、少女のときから“成長”していないからだというヴィジョンが頭の中にあったんです。この映画における私と音楽との関係は、子どもが幸せの究極の形として音楽を見つけるのに似ています。
普通の人のように歌うことに関しては、かなり真剣に取り組みました。これまで培ってきた自分なりのテクニックをすべて解き放つような感じでしたね。『アリー/スター誕生』で演じたアリー・メインは歌手でしたし、作品自体が音楽を作る人々についての映画でした。ですが、今作はまったく違いますから」
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は、名声、ファン、精神病、モンスターなど、レディー・ガガがテーマにしていることを弄んでいるようにも思える。この作品、あるいは演じたリー/ハーレイ・クインは、彼女自身の人生とどのように関係しているのだろうか。
「ハーレイ・クインは、ポップカルチャーで知られているキャラクターです。私は彼女を作り上げていくとき、これまでとは違う方法を取りました。躁状態や内なる混沌は、私にとっては静寂を生み出すもの。時に女性は過剰に感情的だというレッテルを貼られることがあります。そして、なにかに圧倒されているとき、私たちは不安定になったり気が動転したりする。でも、物事が現実からかけ離れているように思えたときや、人生で過度に追い込まれたとき、それによって自分が……静かな気持ちになったら? と考えました。まさに感覚的な記憶をたどって役作りに取り組んだという感じです。世の中で徹底的に追い込まれるのは、どんな感じだろう? また、表面下の複雑さをすべて覆い隠してしまったら、どうなるのだろう?って」
ブルーノ・マーズとのコラボ曲「Die With A Smile」
レディー・ガガは、本作で演じるハーレイ・クインこと”リー”というキャラクターからインスパイアされ、オリジナル・アルバム『ハーレクイン』を9月27日にリリースした。だが、全米ジャズ・アルバム・チャートとトラディショナル・ジャズ・アルバム・チャートの両方で初登場1位を獲得する前にも新曲を発表していた。それが、ブルーノ・マーズとコラボしたソウルフルなバラード曲「Die With A Smile」だ。
「(マリブで自分のアルバムの最終仕上げをしていたら」ブルーノ(・マーズ)が突然電話をかけてきて、スタジオに来て何か歌ってほしいと言われたんです。スタジオに着いたのは真夜中で、私はただただ唖然としていましたが、それから2人で徹夜して曲を仕上げました。私たちは世界中の人にこの曲は必要だと思っています。本当にすごい曲ができました。愛についての、リアルな会話が曲になったようなね」
乗り越えた痛みとプレッシャー
レディー・ガガは2010年、ボーン・ディス・ウェイ・ボール・ツアー中に股関節を骨折し、それがきっかけで線維筋痛症(広範囲の筋肉痛として現れる慢性疾患)による長年の痛みが始まった。彼女が苦悩する姿は、2017年に公開されたNetflixのドキュメンタリー『レディー・ガガ: Five Foot Two』に記録されている。その10年後のクロマティカ・ツアーでは、ようやく痛みから解放された。
「マイケルと一緒にやり遂げたクロマティカ・ツアーでは、その間何の痛みも感じなかったんです! もう何年もマリファナを吸っていません。そう、私は変わったんです。しかも、すごくね。今回の新しいアルバムは、いろいろな意味でその時について歌った曲ばかりのように思います。悲しみではなく、幸せを感じながら歌った曲です。
今、マイケルと私は、これからの生活を本当に楽しみにしています。それから結婚についても。夫婦として、どのようなクリエイティブなことができるのか、ワクワクしながら考えているんです。それは音楽業界の人たちが私に望んでいることをするのとは、全然違います。長い間、キャリアの大部分において、私の人生は音楽業界に支配されていました。人に何を期待されているのか。どんなことを達成してほしいと思われているのか、どう走り続けていくのか……それは大きなプレッシャーになるし、怖いことでもある。でも、ようやくそこから抜け出せたような気がするんです。多くのポップスターが、この業界に飲み込まれてしまっていると思います。時には30代までキャリアが続かないこともある。でもその点、私はもうかなり遠いところまで来ました」
レディー・ガガはペルソナのひとつなのか?
「それは誰もが知りたがっていることですよね。ペルソナのひとつではなく、全部が私なんです。85000人の前でステージに立っているときの私も、私。これはマイケルとの関係から得た解放感とも言えるかもしれませんが、85000人の観客に見られていようが、たとえ犬に見られていようが、自分のことを大切だと思ってくれる人、自分のすべてを見てくれる人がそばにいるのは、本当に素敵です。
レディー・ガガは私そのもの。これまでの間、インタビューでわざとなまりを交えて話したり、嘘をついたりもして、実際パフォーマンスをしていた時期もありました。でも今は、真実味と幻想を入り混ぜた、より受け入れられやすいレディー・ガガになっています。この世の中は、過剰なくらいの二元論で動いているような気がします。本物か偽物か、純正か見せかけかというように。
私は、これまでうまくごまかしながらやってきました。アーティスティックなツールとして、ごまかすことにすごく魅了されていたのです。今でも、それは変わりません。ですが、今の私とアーティストとしての自分との関係は、もっと強固です。これが私。これこそが、私なんです。自分自身を2つに分けて、それをスイッチみたいにオフにしたりオンにしたりして切り替えるのは、あまりにも複雑すぎる。それよりも、私は超複雑な女性なんですと主張した方が、ずっと力になります。いつも一体、誰が私を支えてくれるの? と思っていたのですが、今は自分のことは自分で支えられると思っています」
Text: Miwako Ozawa
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