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家族を作る選択肢。スピード婚、そして不妊治療の果てに選んだ幸せ【アラフォーの恋愛術】

アラフォーの女性が自分の幸せを見出すまでをリポートするこの連載。介護老人福祉施設で働いていた38歳のTさんは、そこで出会った認知症の患者と家族の交流を見て、自分の家族を持ちたいと強く願うようになる。婚活を始めて3ヶ月で理想のパートナーにめぐりあい、結婚。次は子どもを産もうと不妊治療を始めるが、なかなか上手くいかない。そんな中、認知症の患者から言われたある言葉に心を打たれ、新たな決断を下すことに……。

家族のチカラの素晴らしさに触れて、婚活スタート

─ 婚活をしようと思ったのは何がきっかけですか?

T :高齢者の介護老人福祉施設で、作業療法士の仕事をしたことがきっかけです。重度の認知症の方がスタッフの呼びかけには反応しないのに、家族が訪れると手や足を動かしたりする。家族のチカラってすごいな、家族だからできることがあるんだな、と改めて思い、私も自分の家族がほしくなったんです。20代の頃には婚活パーティや合コンに参加し、30代前半でマッチングサイトに登録するなど、婚活を試みたことはありましたが、なかなかステディなパートナーができず。結婚は諦めていたんですよね。でも、急に火が付きました。

── 具体的にはどんなアクションを?

T: とにかく早く結婚できるお相手を見つけたかったので、入会金をきちんと払う結婚相談所に登録しました。38歳のときです。入会の時に20万円ほどお金を払い、3ヶ月たつと追加料金が発生する仕組みでした。それもあって、絶対3ヶ月で決めるぞ!と気合いを入れまくりました。

── マッチングアプリなどは併用しなかったのですか?

T :他のツールに手を出す余裕はありませんでしたね。結婚相談所で毎月10人ぐらいにアプローチして、マッチングが成立したら仕事のない週末に会って、と結構忙しかったので。あと、過去にマッチングアプリで出会った人にいい思い出がなくって。デートをして人混みを歩くときに、まるでボディガードのように私の方を向きながら後ろ向きに歩く人とか。スーパーで「どの食パンを買う?」と聞いてきて経済観念を試す人とか。自分には合わないなと。

── 結婚相談所の良いところは何だと感じましたか?

T :知人の紹介やアプリなどと違い、デートや交際をお断りするときにストレスがないのがいいと思いました。同時に複数の人とデートをしてだんだん一人に絞っていくのは暗黙の了解ですし、お互い様なので、特に揉めないんです。普通の恋愛だと、別れる時に一悶着あったりしますよね。

── 相手にどのような条件を設定しましたか?

T :最初に、「喫煙しない人、お酒をたくさん飲まない人」という条件を出していたのですが、相談所の方に「もう少し間口を広げた方がいいですよ。タバコもお酒も今嗜んでいても、結婚したら変わるかもしれません」とアドバイスされて、それは解除しました。年収も最初は少し高めに設定していたのですが、38歳の女性が高収入の男性を求めてもなかなかマッチングしません。その現実を受け入れて、また結婚しても仕事を続けるつもりだったので、お相手の年収は自分の年収と合わせて生活できるレベルにまで下げて設定しました。条件で譲れなかったのは、ある程度学歴があることと、自分がしたい仕事に就いていること。私自身、一度社会人になってから大学に再び入りキャリアを考え直したりしていたので、相手にも同じように仕事を楽しんでほしかった。そのほうが価値観が合うと思ったんです。どの条件は譲れて、どの条件は譲れないのか。自分もパーフェクトではないなか、その最適解を常に考え調整していましたね。

初めて会ったときからフィーリングが合い疲れなかった

── 目標としていた3ヶ月で、パートナーは見つかったのでしょうか?

T :はい、見つかりました! 計3人の男性とお会いして、夫はそのうちの一人です。夫とは初めて会ったときからフィーリングが合い、長時間一緒にいても全く疲れない。また会いたいな、と思いました。他の方とは会ったときに緊張してしまい、散歩してもカフェでお茶してもリラックスできない。帰宅したらどっと疲れが…という感じだったのですが、夫は唯一、疲れなかったんですよね。11月に出会って、次の年のお正月くらいに私の方から結婚の話をほのめかしたら、すぐに応じてくれました。見ている方向が一緒だと話が早いな、って思いましたね。ちなみに、夫は会社の福利厚生で結婚相談所に入っていたそうです。

── なかなかのスピード婚ですが、不安はなかったですか?

T :お互い平日は働いていて週末しかデートできなかったので、会う回数も少なく、もちろん不安はありました。だから、年末に突然アポなしで家を訪れ、“素の彼”を見に行ったりしました(笑)。そしたら彼はものすごく慌てて、掃除機を床ではなく天井の方に向けたんです。何をしているの?って聞くと、蜘蛛の巣をはらっているって……。そんな彼の行動にも引かず、「笑える!」って楽しめている自分がいました。

── 最初に設定した「喫煙しない人、お酒をたくさん飲まない人」という条件は当てはまりました?

T :いいえ、夫はヘビースモーカーですしお酒も大好きです。結婚相談所のアドバイスがなかったら夫には出会っていなかったので、本当に感謝しています! それ以外は、夫は心から仕事にやりがいを感じていて頭が良いところが尊敬できるし、金銭感覚も合うし、そして繰り返しますが一緒にいてとにかく疲れない相手。それが結婚の決め手でしたね。

不妊治療を経て、養子縁組を決意。43歳で女の子のママになる

── 結婚されて養子縁組をされて、今は4歳の女の子のママです。養子縁組を決められたきっかけは?

T :ふたりとも子どもがどうしてもほしいというわけではなかったのですが、夫が長男だということもあり、家族や親戚からのプレッシャーがあって、私が39歳、夫が42歳のときに妊活を始めました。計3年ほど治療をしましたが身籠ることはなく、養子縁組をすることに決めました。

── 妊活のやめどきはどのように決めたのですか?

T :治療を始めるときに、かけられる予算と体外受精の回数を夫と話し合って決めていました。夫とは結婚してからずっと仲が良かったですし、二人で生きていくという道もあったのですが、婚活を始めた時と同様に、仕事先の認知症の方に言われたひとことで気持ちが変わったんです。施設の認知症の方は、挨拶代わりに「結婚しているの? お子さんは?」と聞いてくるんですよ。不妊治療がなかなか上手く行かなくてもうそろそろ予算的にも最後のチャンスだなという時に、「子どもは夫婦で望んでいるのですが、まだいないんです」って思わず涙目になって私が答えたんですよね。すると、認知症の方が「子どもは世界中にいますよ」っておっしゃったんです。その一言で、以前、職場の人に特別養子縁組の資料をもらったことを思い出して。私は自分と夫の子どもをどうしてもほしいのか? いや、私は生きている間に子育てをしたいから頑張っているのではないのか? と考え直し、自分で産まなくても子育てはできると思ったんです。

── 養子縁組にはパートナーもすぐに賛成しましたか?

T :はい、すぐに賛成してくれて、養子縁組を斡旋する事務所に登録しました。なんと5日後にはマッチングが成立し、あっという間に子育てが始まりました。43歳のときでした。自分で子どもを産んで母親になることは残念ながら叶わなかったですが、娘は毎日のように「パパママ大好き」と言ってくれますし、家族3人、ものすごく幸せに暮らせています。妊活中に特別養子縁組の資料をもらったときは、正直、少し傷ついたんです。でも、結果的に今の幸せな生活につながっているので、今は資料をいただいたことにものすごく感謝しています。

─ これから婚活をする人にアドバイスをお願いします。

T :多くの人が仕事と婚活を同時並行ですると思うので、結構疲れると思います。私も平日は仕事、週末はデートでどっと疲れ、マイナス思考になってしまうことがありました。疲れを少しでも感じたら、今日は自分のコンディションを整える日だと割り切って、無理にデートを入れないほうがよいと思います。私は「登録者のデータを検索する日にしよう」と自分に言い聞かせて、1日家で過ごしていました。 あと、婚活は第一印象が大切だと思いますので、いつも以上にファッションやメイクを楽しんでみたらいかがでしょうか。

Text:Kyoko Takahashi Editor:Kyoko Muramatsu