健康長寿がウェルネスコミュニティで重要なテーマとなっている。南デンマーク大学による、双子調査から寿命に対する遺伝的要因の寄与率を推定した研究によれば、私たちの寿命に関係する遺伝的要素はわずか20%であり、健康的な生活習慣が大きな違いを生むという。また欧米社会では、都市に住み、長時間座り続け、パソコンやテレビ、携帯に向かう生活が寿命を縮める要因になっているが、専門家はこうした座りがちな生活を「新しい喫煙」と表現している。
また、都市部で蔓延する孤独もメンタルヘルスの観点から、健康長寿に悪影響を及ぼす。ドイツ・ベルリンでは一人暮らしの割合が急上昇、アメリカでも特に18歳から24歳の若者が孤立感を強めているとの報告がある。今や他人と関わり合うライフスタイルは、当たり前ではなくなっているのだ。
一方、世界でも健康な長寿者が多く暮らし、且つ100歳を超える人々が突出して多い「ブルーゾーン」と呼ばれる地域のライフスタイルは、一般的な都市部の生活とは大きく異なる。探検家で「ナショナル ジオグラフィック」のジャーナリストであるダン・ビュイトナーは、著書『ブルーゾーン 世界の100歳人(センテナリアン)に学ぶ 健康と長寿のルール』の中で、沖縄(日本)、サルデーニャのバルバジア地方(イタリア)、イカリア(ギリシャ)、ニコヤ半島(コスタリカ)、そしてカリフォルニアのセブンスデー・アドベンチスト教会について取り上げて検証している。医師や人類学者、人口統計学者、疫学者とともに、ビュイトナーは「パワーナイン」と呼ばれる9つの生活習慣を特定した。
パワーナイン〜健康長寿を実現する9つの法則〜
1. 自然に体を動かす
「自然に体を動かす」という原則では、ジムに行かなくても運動を取り入れることが可能。長寿コミュニティでは、日常生活の中に自然な運動が組み込まれていて、たとえば、アムステルダムでは多くの人が自転車を利用している。車での通勤を徒歩に切り替えたり、エレベーターの代わりに階段を使うなど、日常生活に自然な動きを意識的に取り入れることが大切だ。
2. 人生の目的を明確にする
「生きがい」とは、人生の目的を見つけるための日本の概念であり、コスタリカのニコヤ半島の住民が実践する「プラン・デ・ビダ」に似ている。ビュイトナーは、「私たちもこの技術を取り入れるべきだ。人生の目標を持つことは寿命を7年延ばすことができる」と述べる。生きがいを見つけるためには、自分の内面を見つめ直し、自分が情熱を持っていること、得意なこと、社会に貢献できること、そして人生に価値を感じるものを見出すことが大切だ。
3. ストレスを減らす
私たちは常にプレッシャーを感じる社会に生きており、そのストレスは慢性的な炎症を引き起こし、最終的に病気に繋がることがある。ビュイトナーは、ブルーゾーンの住民のように、日常生活にストレス軽減のためのルーティンを取り入れることが大切だとしている。イカリア島の住民が昼寝をし、沖縄の人々が亡くなった家族を偲ぶように、私たちも瞑想的なヨガや散歩、友人との会話などを日常に取り入れることで、ストレスホルモンであるコルチゾールを減少させることができる。
4. 満腹度80%ルール
食事に関して、医師や栄養士は「80%ルール」を推奨している。これは満腹になる前、約80%のキャパシティに達した時点で食事をやめるという考えで、長寿に役立つと考えられている。このルールを実践するには、食事をゆっくりと注意深く取ることが大切だ。デスクやコンピューターから離れて食事をし、一口あたり20~30回噛むことで満腹感を脳に伝えるのが効果的。特に夕食は少なめにすることも勧められている。
5. プラントベースの食事スタイルに挑戦
栄養士によると、プラントベースの食事を取り入れることは、心血管疾患などの慢性疾患を予防する効果がある。ノルウェーのベルゲン大学の最近の研究では、全粒穀物、豆類、ナッツ、新鮮な果物や野菜を豊富に含む植物ベースの食事を採用すると、寿命が10年延びる可能性があると結論付けられている。ブルーゾーンの100歳以上の人々の食事は、主に黒豆、小豆、大豆、レンズ豆、そら豆などの豆類で構成されており、肉は月に5回ほどしか食べることはない。
6. 地元のワインを程々に嗜む
ブルーゾーンの人々は地元のワインを適度に飲んでいる。特にサルデーニャの長寿者たちのように一日に数杯程度のワインを嗜むことは、全くアルコールを飲まないよりも長生きにつながる可能性があるようだ。
7. コミュニティに属す
宗教的なコミュニティに属し、定期的にセレモニーに参加する人は、全くコミュニティに属さない人よりも4年から14年長生きする可能性がある。チームスポーツに参加したり、クラブに入ることも同様だ。重要なのは、集団に属しているという感覚や、グループの一員であるという意識。
8. 家族を優先する
ブルーゾーンに住む人々は、文字通り家族を大切にしている。高齢の親が近くに住んだり、子どもと一緒に暮らすことが一般的で、子どもたちは両親と祖父母の両方と一緒に成長することが多い。これは、年齢を問わず身体的にも精神的にも有益だ。ビュイトナーによると、祖父母と一緒に育った子どもは病気になることが少ないという。また、夫婦は生涯にわたって互いに忠実であることが多く、これも寿命を少なくとも3年延ばす要因になる。
9. 友情を築く
友情は植物のように、手入れをして育てる必要がある。友達には直接会うようにして、ソーシャルメディアだけに頼らないことが重要。なぜなら、ソーシャルメディアでは同じ健康効果は得られないからだ。ビュイトナーによると、沖縄の人々は「モアイ」というグループを作っている。これは、5~8人の親しい友人で構成され、生涯にわたって互いを支え合うことを誓う仲間たちだ。
Text: Alessandra Signorelli Translation: Makiko Yoshida
From VOGUE.IT
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