百害あって一利なしの前屈み姿勢を、「胸椎伸展」ストレッチで強制リセット
食器を洗う、ドアノブを触る、パソコンを打つ、自転車に乗るetc.、私たちが日常的に行なっている姿勢のほとんどが、腕を前に出し顔を下に向けて行なう前屈みの動作だ。しかしこの姿勢こそが猫背やぽっこりお腹、巻き肩など、くたびれて老けた印象に見せる外見的要素の元凶。それだけだなく、自律神経の乱れや頭痛、肩こりといった健康状態にも大きな影響を与える。この前屈みの姿勢による悪影響を改善するのが、バレエダンサーの石井久美子の考案した「胸椎伸展」というストレッチだ。
8歳でバレエを始め、17歳でロシアに渡った彼女が直面したのが、現地のダンサーたちの動きのダイナミックさ。日本人の踊りは「平たんで深みがない」と言われ、また多くの日本人ダンサーが10代で腰を痛めるのに対し、ロシアのダンサーたちは腰痛とは無縁......。根本的な違いを探し、試行錯誤しながら生まれたのがこの「胸椎伸展」なのだ。
「胸椎」と聞いて、たいていの人は乳房があるあたりの骨のことを想像するが、これは不正解。実際には背骨の一部で、頭蓋骨から下の7個目までの「頚椎」(首の骨)、その次に続く12個の骨を「胸椎」、残りの5つを腰椎(腰の骨)、その下に仙骨・尾骨と分けられる。首や腰のように広範囲の可動域を持つ骨と異なり、胸椎の可動は一説によると、たったの30度。現代の日常生活では前屈みの姿勢をとる時間が長くなり、胸椎や筋肉が固まったままの状態に。そのまま姿勢を良くしようとして胸を張ると腰が反り、これが腰痛につながる原因となっていたのだ。この状態を劇的に改善させる「胸椎伸展」の正しい実践方法を、ビギナー向けに解説する。
How to 胸椎伸展?
Step 1
ヨガマットを敷いてその上に仰向けになる。この時、足はヨガマット幅に広げる。
Step 2
腰を浮かせて肋骨の一番下にフォームローラーを当てる。
Step 3
ゆっくりお尻を落とし、息を吐くことに集中し全身を脱力。約10分間この姿勢をキープしましょう。
Step 4
余裕のある人は、両手を上に上げることで更にストレッチ効果を高めて。
辛い、痛いのその先にある、悩み知らずのボディを目指して
10分あればできる手軽さが魅力のこのストレッチだが、初めてチャレンジする人にとっては、痛みや辛さを感じて、とても10分間も持続できない、と感じてしまう人が大半。しかし石井さんはこう語る。
「私の祖母は98歳なのですが、全然フォームローラーが入らないところから始めて、今では問題なく10分できています。できるだけリラックスして取り組むのがポイントで、音楽をかけたりスマホを見たりしていると、あっという間に時間が経ってしまいますよ」。まずは1カ月継続して、その効果を実感してみて。
話を聞いたのは……
石井久美子
バレエダンサー。1994年東京生まれ。8歳でバレエを始め、2011年ロシアの国立ワガノワバレエアカデミーに留学。2013年に同校を卒業後、マリインスキー・バレエ団にアジア人女性として初めて入団し、数多くのソリスト役を演じる。主宰するバレエ学校では、アマチュアから世界のトッププロダンサー、教師までがレッスンを受けている。2023年にはオンラインバレエスクールも開校。著書に『胸椎伸展 10分寝るだけストレッチ』(主婦と生活社)。@kumiko_ishii_ballet_project @kumikoishii
Photos: Shoko Takayasu Text: Naomi Mori Editor: Makiko Yoshida
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