プラダのバッグの歴史
数学者や建築家に話を聞けば、三角形は最も力強くパワフルなシェイプだと答えるだろう。また、ファッションに敏感な人に尋ねても、同じようなことを口にするはず。とりわけ、それが逆さまになっていて「dal 1913」と刻印され、プラダ(PRADA)のハンドバッグを飾っていたりすればなおさらだ。
プラダに言わせてみれば、三角形は「明確で直感的、象徴的で言葉がなくても心に響く形」。このトライアングルロゴを初めてバッグに用いたのは創設者であるマリオ・プラダだが、世界的なプレタポルテからパティスリーまで広く根付かせたパイオニア的存在は、紛れもなくマリオの孫にあたるミウッチャ・プラダである。
投資するならどれ? 定番人気バッグ8選
- プラダ バックル - 2024年春夏コレクションでデビュー
- プラダ アーケ - 2023年にデビュー
- プラダ ガレリア - 2007年にデビュー
- リナイロン バックパック - 1984年にデビュー、2019年にリナイロンで再登場
- プラダ クレオ - 2021年春夏コレクションでデビュー
- ナッパアンティーク トート - 2023年春夏コレクションでデビュー
- プラダ リエディション 1995 - 1995-96年秋冬コレクションでデビュー
- プラダ リエディション 2005 - 2005年にデビュー、2019年に再登場
- プラダ ムーン - 2002年春夏コレクションでデビュー
そもそもプラダの歴史は1913年に遡る。マリオと弟のマルティーノは、ミラノのアーケード、ガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレ2世で、「フラテッリ・プラダ」という名の皮革製品専門店を開業。イタリア製のバッグとイギリスから輸入した旅行用トランクを扱っていたこの店は、イタリアの貴族を含む地元の富裕層から評判となり、開業から数年で「イタリア王室御用達」の名誉を得た。
その後、1978年に3代目のミウッチャが事業を引き継いでから、プラダは今日の姿に生まれ変わることに。ブランドの成功は、ミウッチャが提唱する「アグリーシック」とミラノの大学で政治学の博士号を得たデザイナーのフェミニズム哲学によるところが大きいだろう。
「私はいつも、決して陳腐な方法で男性を喜ばせるようなことをしようとしているのではありません」と、ミウッチャは2013年の『WWD』のインタビューで語っている。ミウッチャがシルクやレザーよりも実用的な用途に使われることの多いナイロン生地を好むようになったのは、まさにこのような考え方があったからだ。1984年、ミウッチャはナイロン生地を使ったバックパックを発表し、不朽の名作として男女問わず幅広い層に愛され続けている。
さて、ここからは進化し続けるそのバックパックから最新作ハンドバッグまで、プラダのアイコンバッグを一つひとつ掘り下げていこう。
プラダ バックル
これまで繰り返し使用されている象徴的なバックルに光を当てた2024年春夏コレクション。そのランウェイでデビューした「プラダ バックル」は、クラフツマンシップの結晶ともいうべき台形フォルムの曲線美に、ベルトとバックルでモダンな表情を添えたバッグだ。ハンドルを固定するミニサイズのそれらもさりげないツイストを効かせている。
22Kゴールドの金箔でホットスタンプされたロゴによって引き立つ、上質なソフトグレインカーフレザーを使用。マチが広くしっかりとした素材なので、床に置いても自立し、ミーティングやディナーでもエレガントな立ち振る舞いを約束する。機能性とエレガンスが同居した「プラダ バックル」は、プラダの美学を物語る新たなアイコンバッグとしてこれから愛されていくだろう。
定番のブラックやキャメルに加え、同コレクションを象徴するシルバースタッズで描かれたサークルモチーフのデザインも見逃せない。
プラダ アーケ
2023年に新しく登場した「プラダ アーケ」は、2000年代のアーカイブピースを再解釈した、優美なカーブを描く半月型のフォルムが特徴的。皮革製品専門店として誕生したブランドの伝統に裏打ちされた、しなやかなレザーの魅力を湛えたミニマルなバッグだ。トライアングルのエナメルメタルの金具はゴールドトーンで統一され、モダンに仕上げられている。
さらに特筆すべきは、2本のストラップが付属しているところ。調整&付け替えによって、ハンドバッグ、クロスボディバッグ、ショルダーバッグとして簡単にスウィッチすることが可能だ。モードなアクセントとしてシンプルな装いこそ魅力を発揮し、人を惹きつけるだろう。
プラダ ガレリア
2007年に上品な質感の「サフィアーノ」レザー(マリオ・プラダが特許を取得した素材)で作られた長方形のバッグとしてデビューした「プラダ ガレリラ」。名前の由来は、1913年に創業者のマリオが初のストアをオープンした、ミラノのアーケード「ガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレⅡ世」に由来している。
「プラダ ガレリア」の83のパーツは手作業によって仕上げられ、クラフツマンシップが存分に発揮されている。無駄を削ぎ落とした端正なスクエアフォルムは、時代を超えて愛される証だ。豊富なサイズで展開されるラインナップはいずれも、取り外し&調整可能なストラップ付き。ドレッシーなファッションにはもちろん、オフィスやデイリーユースにも欠かせない相棒バッグになるはず。
リナイロン バックパック
当時のミレニアル世代の多くは、1999年公開の映画『恋のからさわぎ』の「スケッチャーズも好きだけど、プラダのバックパックも好き」というセリフで、このバッグを初めて知っただろう。実用的なナイロン生地を取り入れるというミウッチャの発想は実に画期的で、1984年に発表されるやいなや90年代に一大ブームを巻き起こすことになった。
また、進化し続けているところもアイコンバッグと呼ばれる所以。もともと「ヴェラ」として知られていたこのバッグは、2019年には再生可能な新素材「ECONYL®」が採用され、「リナイロン」として再登場を果たすことに。ガブリエル・シャネルがジャージーで試みたことをミウッチャはナイロンで実現し、現在ではプラダのすべてのカテゴリーでリナイロンが扱われている。ラグジュアリーブランドらしい上質な艶感を放つナイロンとベーシックなデザインの融合は、名作品として投資する価値あり。
プラダ クレオ
プラダのアイコンバッグに比較的新しく加わった「プラダ クレオ」は、若々しいスピリットと生き生きとした曲線のラインを併せ持つサッチェルスタイルのバッグ。ラフ・シモンズが共同クリエイティブ・ディレクターに就任して一年目の2021年春夏コレクションのショーでデビューし、大きな注目を集めた。
長く愛用できる理由は、小脇に抱えたときにフィットするコンフォートな使い心地。上質なレザーとシンプルなデザインも手伝って、オンからオフまで幅広く活躍してくれそう。「プラダ クレオ」はフラップの有無による2つのシルエットで展開され、どちらもマグネット式でスムーズに開閉できる。知的な大人にふさわしい品格を備えた機能美は、時代を経るごとに魅力を増すはず。
ナッパアンティーク トート
万能なトートバッグはいつの時代もエッセンシャルアイテム。喜ばしいことにミウッチャは2、3シーズンごとに、目新しいテキスタイルを使ったトートバッグを発表する傾向がある。パッド入りの「リナイロン」の素材やカラフルなクロシェを世に送り出し、2023年春夏にはシボ感のあるナッパレザーを使用したバージョンが登場した。
かっちりとしたスクエアフォルムとは対照的に、手作業によるシワ加工が施されたこのバッグは、通常は敬遠されがちなものをラグジュアリーなものへと変貌させるプラダの流儀が表れている。普段の生活に寄り添う万能性を備えながらモードな洗練も与えてくれる。多様なレザーの染料を使用した「ナッパアンティーク トート」は、スモール、ミディアム、ラージがラインナップされている。
プラダ リエデション 1995
華奢なトップハンドルを備えたバッグは、プラダの1995-96年秋冬コレクションで初めて登場した。「プラダ ガレリア」と同様のスクエアの構造だが、永遠のファッションアイコン、キャロリン・ベセット=ケネディが愛用していたことで再び脚光を集めている。
90年代を物語る極限まで装飾を抑えたスタイルをモダンに解釈し、2019年に「プラダ リエディション 1995」として復刻。ハンドルには「PRADA Re-Edition 1995」と刻印されたキーホルダーが加わった。さらに、内側は3つのコンパートメントに分かれ、中央には貴重品を収納するためのファスナーが施されている。非の打ちどころのないスマートなその佇まいは、ミーティングや華やかなレセプションなどの場でひと際品格のある存在感を放つ。
プラダ リエデション 2005
すでにお気づきのように、ミウッチャは私たちと同じようにインスピレーションを求めて自身のアーカイブを掘り起こしている。2005年にデビューしたナイロンのショルダーバッグを2019年に「リエディション 2005」として復刻させたが、その時採用されたのは、リサイクルされた海洋プラスチック、漁網、繊維廃棄物から紡績された素材「ECONYL®」だった。そして現在は多様なレザーもラインナップに加わっている。
チェーンストラップ、ショルダーストラップ、「PRADA Re-Edition 2005」と刻印されたキーホルダー、ファスナーポーチはいずれも取り外しができるので、気分やシーンによってさまざまな表情にアレンジできるのも「プラダ リエディション 2005」の魅力。落ち着きと軽やかさを兼ね備えた大人のバッグは、ヘイリー・ビーバー、カイリー・ジェンナー、ソフィア・リッチーなどイットガールを虜にしている。
プラダ ムーン
2002年春夏コレクションで初披露されたスタイルをアップデートした「プラダ ムーン」。丸みを帯びたフォルムに加え、大ぶりのセンターベルトがユニークな個性を放つハンドバッグだ。そこに、ヨットの世界から拝借したというシルバーのバックルとグロメットがエッジィなアクセントを効かせている。
小さすぎず大きすぎないサイズ感に加え、取り外せるショルダーストラップも付き、ワードローブの一軍として活躍すること間違いなし。カジュアルなコーディネートにもラフすぎずほどよく引き締める役割を果たしてくれる。ナッパレザーをパフアップしたポップなカラーバリエーションも目を引くが、リナイロンをベースにしたブラックにも注目したい。
問い合せ先/プラダ クライアントサービス 0120-45-1913
www.prada.com
Photos: Courtesy of Brand, GoRunway.com Editors: Lilah Ramzi, Maki Saijo, Mayumi Numao
