映画『ジョーカー』(2019)の続編にして、完結作となる『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』。興行収入10億ドルを記録した前作に比べると、今一つの成績となっているが、クエンティン・タランティーノ監督は大変お気に召したようだ。「本当に本当にものすごく気に入った」とポッドキャスト「The Bret Easton Ellis Podcast」で明かす。
「映画制作の手法に感心するだろうと期待して観に行った。感情移入するような作品じゃなく、知的好奇心を刺激するような作品だろうと思い、映画としては機能していなくても、それ自体を楽しもうと思っていたんだ。僕はニヒリストだから、映画として機能していない作品や、ある程度までなら壮大にめちゃくちゃな作品も楽しめる。だけど本作は、知的好奇心を満たすだけの作品なんかじゃなかった。本当に夢中になった。ミュージカルのシーンがすごく良くて、目が離せなかった。ありふれた曲であればあるほど、良さが際立った。『For Once in my Life』の歌詞をこんなに真剣に聞き入ったことはなかった」
連続殺人鬼カップルが次第にヒーローに祭り上げられていく様を描いたオリバー・ストーン監督の映画『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)の原作を手がけているタランティーノは、同作の主人公ミッキー(ウディ・ハレルソン)とマロリー(ジュリエット・ルイス)を、『ジョーカー2』のアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)とリー(レディー・ガガ)に重ねたようだ。
「前作が『タクシードライバー』の影響を受けているように、本作では僕が書いた『ナチュラル・ボーン・キラーズ』の影響があるみたいだ。むしろ本作こそ、僕が夢見た『ナチュラル・ボーン・キラーズ』だよ。ミッキーとマロリーを作り出した男として、本作で彼らがしたことが気に入った。方向性が良かった。映画全体が、ミッキーの熱に浮かされた夢みたいだ」と語る。
「ほぼ空席のIMAXシアター」で鑑賞したというタランティーノは、「何より本当におかしかった。周囲を気にせずに笑えたよ。他の人が笑っていないシーンでも笑ったね」と話すが、トッド・フィリップス監督の大胆さを何より称賛する。
「監督こそがジョーカーだった。コンセプト全体がそうだし、スタジオから引き出した金の使い方もそう。彼はまるでジョーカーがやりそうな具合に金を使った。そしてあのサプライズ、ハハ! びっくり箱だった。握手するように見せかけて、手を握った人は1万ボルトの電流を食らわせられる。コミックオタクに食らわせたんだよ。コミックオタクや観客、ハリウッドにクソくらえと言ってやったんだ。DCやワーナー・ブラザースの株主全員の鼻をあかしてやった。トッド・フィリップスこそジョーカーだ。つまり、これはジョーカーの映画であり、彼こそジョーカーなんだ」
Text: Tae Terai
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