WEDDING / DRESS

一度しか着ないものから何度も着るものに。ウエディングドレスの新たな時代が幕開け

思い入れのあるウエディングドレスを、一度しか着ないのはもったいない。そういった考えから、あえてデイリーでも纏えるデザインを選んだり、ドレスをリメイクする花嫁たちが増えている。
Photo: Luke Fullalove

ウエディングドレスは、昔からその日一日だけ着るものだ。レンタルのものは返却され、購入されたものは着用後にクローゼットの奥に仕舞われ、来るかもわからない出番をひたすら待つことになる。しかし、昨今ではサステナビリティファッション業界の大量破棄や資源の無駄遣いに対する懸念が高まっており、一度しか着ないブライダルドレスを巡る考え方も徐々に変わりつつある。

ザ・オウン・スタジオのミニマルなドレスで晴れの日を迎えたジェマ・ソート・シルヴァース。

Photo: Elisabet Mateu

式後はドレスをピンクに染め、翌年の夏に友人の結婚式でお呼ばれドレスとして着用した。

Photo: Courtesy of Gemma Sort Chilvers

それに伴い、ウエディングドレスを式後に再着用する花嫁が増えている。ちなみに私もその一人で、天然染め職人のキャバン・ジェーン・マクファーソンの力を借りて、ガブリエラ ハーストGABRIELA HEARST)のスリップドレスを深いブルーに染め直し、大切な一枚に新たな命を吹き込んだ。スタイリストのジェマ・ソート・シルヴァースは、ザ・オウン・スタジオ(THE OWN STUDIO)によるミニマルなシルクドレスをベビーピンクに染色。1999年のアカデミー賞グウィネス・パルトロウが纏ったガウンにインスパイアされた一着を、彼女は挙式した翌夏に友人の結婚式に着ていった。「試着したとき、この先何度も着られるようなドレスだと思ったんです。一度きりのドレスにしないために、すでにいろいろと考えていました」と以前語った。

そしてウエディングドレスをアップサイクルする花嫁たちもいる。例えばファッション活動家のヴェネチア・ラ・マンナは、晴れの日に纏ったスリップドレスを裾上げし、日常着にリメイク。「今ではワードローブに欠かせないピースで、一年を通して着ています。長く愛用したいとは思っていますが、色々な場面で着て、できるだけ多くの思い出を作っていきたいです」

純白のドレスではなく、大好きなシモーン・ロシャによるフローラルプリントのドレスを選んだヒル。

Photo: Sophie Lake

ファッション・アワード2024で再び出番を迎えたウエディングドレス。

Photo: Joe Maher/Getty Images

一方、伝統的な白いドレスをはじめから候補に入れず、着まわしのきくデザインを選ぶ、進んだ花嫁たちも最近目立つ。2021年に挙式したファッション・エディターのレベッカ・ジェーン・ヒルは、シモーン・ロシャSIMONE ROCHA)のフローラルプリントドレスを纏って結婚。「クラシックなブライダルガウンには、昔から全く興味がなくて。憧れの大好きなデザイナーが手がけたコンテンポラリーな一枚にする、とずっと前から決めていたんです」と彼女は説明する。結婚式以外ではいつ、とこで着るかは決めていなかったが、「一度しか着ないものを買うという考えはばかげていて、かなり時代遅れにも感じました」と続けた。

そして昨年のファッション・アワードレッドカーペットで、ヒルはウエディングドレスをパーティードレスとして再び着用。「あれほど注目度の高いイベントで着られて、大勢の人の前で披露することができて、本当によかったです。思い出に残る一夜になりました。それに、結婚式とは違うスタイリングができて楽しかったです。スニーカーとかバレエシューズを合わせて、デイウェアとしてまたどこかで着ると思います」

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アーティストのローズ・エレクトラ・ハリスも純白のウエディングドレスの代わりに、デイリーに着られるガウンを2着選んだ。昨年4月にロンドンで執り行ったシビルウエディングでは、シモーン・ロシャの淡いピンクのドレスに身を包み、3カ月後のウィルトシャーでの挙式ではモリー ゴダードMOLLY GODDARD)による赤いチュールのドレスを纏った。「色が大好きで、白いドレスにしたら二度と着ないと思ったんです。クローゼットの奥に、ただただ眠らせておくのもなんだか可哀想ですし」と言う。その後、モリー・ゴダードのドレスはオーバーサイズのニットと合わせて自身の誕生日パーティーで着用し、シモーン・ロシャのドレスもホリデーシーズン中に活躍したという。「2着とも繰り返し着ながら、大切にしていきます。私にとっては、いつまでも特別なドレスたちですから」。ウエディングドレスに第二の人生を与える花嫁は、これからも増えていくことだろう。

Text: Emily Chan Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.CO.UK

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