BEAUTY / EXPERT

vol.6 女性器のダイバーシティ——美しさの鍵を握る歌舞伎町のストリッパー【連載・内なるエロスの高め方】

今回のテーマは、ずばり「女性器」。美容編集者歴30年の麻生綾がエロスを追求するこの連載、2023年を締めくくるシークレットゾーンの話をお届け。秘めた美しさの極意を探ります。※前回の記事はこちら。

プロのアンダーフェイスを見てみたい

Photo: kobchaima/123RF

先日「アンダーフェイス卿」という二つ名を持つ友人Mから唐突にLINEが入った。曰く「C先生と女3人でストリップを観に行きませんか?」。Mはこの連載でも既出、超のつく美容マニアである。20代からスパ&エステ美容医療を訪ね歩き、顔も体も美容的に遊び尽くしたというわけで、現在は「よりお手入れの成果が視覚化されやすい」フェムケアに夢中。こっそり彼女の秘部を(写真で)見せてもらったこともあるのだけれど、「も、桃ですか?」レベルに整っているので、思わずパーツモデルになれば? と勧めてしまったくらい(がしかし、よく考えると需要が……ない。笑)。おそらく50代では日本一、二を争う美しいアンダーフェイス=秘部の持ち主なのではないだろうか。

映画『素顔のままで』(1996)のデミ・ムーア。フェミニズムの側面も持つ多角的な作品。Photo: ©Columbia Pictures/Courtesy Everett Collection

ゥColumbia Pictures/Courtesy Everett Collection

そんなMが「プロのアンダーフェイスを見てみたい」とのたまう。わかる! それだけお金も時間もかけているわけだから、そりゃ見比べてみたいでしょう。そして私も、連載というよりもはやライフワーク(?)かもしれないエロス研究の観点から興味津々。もっとも3人目の同行者、C先生は日々人様のアンダーフェイスを覗き込むお仕事(婦人科医)なので、休みの日にまで何が悲しくて……という気がしないでもなかったが、「プロの」となれば話は別とのお返事。というわけで嬉々として予定を合わせ、3人3様の思惑の下にいざ、新宿・歌舞伎町へ。

360度どの方向から見ても、ビューティフル!

アメリカのドラマシリーズ「Pバレー: ストリッパーの道」(2020)、シーズン2より。Photo: ©Starz / Courtesy Everett Collection

©Starz! Movie Channel/Courtesy Everett Collection

まず、結論から言ってしまおう。「なぜもっと早く観に来なかったのか」。いやあ面白かった! FUNという意味でも、INTERESTINGという意味でも。会場こそ昭和を色濃く残すかなりのアングラっぷりだったが、フレッシュな6人のお嬢さんのステージを約2時間半ぶっ通しで、飽きるどころかむしろ前のめりに観てしまった。てか、推しもできたし、また是非、是非とも行きたいんですけど!

映画『ショーガール』(1995)のワンシーン。筆者が観たショーではショーツは無くなる。Photo: ©Everett Collection.

©United Artists/Courtesy Everett Collection

ストリップというと、世代的にどうしてもドリフターズの懐かしのバラエティ番組『8時だョ!全員集合』におけるカトちゃんの「チョットだけョ♡」を思い出してしまう。つまりは怪しい音楽の下に、扇情的なポーズを取った女性が(って加藤茶なのだが)まとっている薄布をもったいぶって一枚ずつ脱ぎ捨てていくイメージ(その後もれなくいかりや長介に「バカ!」とメガホンで叩かれる。ここまでがギャグのワンセット)。

ジェニファー・ロペスがストリッパー役に挑んだ『ハスラーズ』(2019)。フェミニズムの側面も持つ多角的な作品。Photo: © 2019 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

がしかし、とんでもございません! “昭和”で止まっていたのは、ステージの設え以上に私の頭の中だった。踊り手は皆アイドルみたいに可愛いし、その四肢は引き締まりちょっとしたアスリートのよう。さらにはそれぞれに工夫を凝らした衣装や振り付け、ダンサブルなイマドキの音楽。そう、令和のストリッパーは「しかたなく裸を人前にさらす人」ではなく、“伝統芸能”ストリップに芸術性を付与する誇り高きアーティストであったのだ。

1983年公開の映画『イージー・マネー 一獲千金』。Photo: ©Orion/courtesy Everett Collection

©Orion Pictures Corp/Courtesy Everett Collection

ステージは1人ずつ、オリジナルの衣装でオリジナルのストーリーを紡ぎ、踊り、進んでいく。ダンスは正直、人によってレベルに差があるが、これは好き好きだろう。ショーの後半でほとんどの服を脱ぎ、下着を取り去り(最初からノーパンの女性もいる)、ステージの中央に寝転んで脚を高く上げるなどの開脚ポーズを決める。ここで拍手がマナーなのだが、その瞬間ステージが回り出し、スポットライトの中、360度どの方向からも踊り手のアンダーフェイスが拝めるように。まーさーに、ご開帳状態。わぁ……

女性器のアイデンティティ

マギー・ジレンホール出演の映画『セレクタリー』(2002)。Photo: ©LionsGate/courtesy Everett Collection

©Lions Gate/Courtesy Everett Collection

男性と違って、鏡でも使わない限り自分では覗き込めない“構造”のせい? それとも「触っちゃだめ」「話題にしちゃだめ」の“日本の教育”のせい? 女性器は、我が身の一部でありながら大方の女性にとって、いまいち親しくなりきれない存在のように思う。私自身「グロくね?」と、特に用がない限り突き放し気味で、ヘテロ男性が何故あんなにも見たがり、こだわり、興奮できるのか、ずっと理解できないでいた。

『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(2003)の主演3人によるカジュアルなストリップシーン。Photo: ©Columbia/courtesy Everett Collection

©Columbia Pictures/Courtesy Everett Collection

がしかし今回、人生で初めて「女性器悪くないな」と思ってしまったのである。見本市のごとく次々と繰り出されたプロのアンダーフェイスは、それぞれに創意工夫があってなんだか可愛いらしく、妙に親しみが持てた。(おそらく医療の力を借りて)幼女のごとくふっくらまんまるに仕上げている人。V部分だけに煙るようなヘアをちょい残ししている人。逆に扇形というか、あえて幅広くワイルドに残している人。えらく色素が薄い人……などなど。「グロい」だなんてとんでもない! もちろん、「見られるのが大前提」ゆえの徹底したお手入れがなされているからとは思うが、照明とも相まってむしろ神々しくさえある。いやもうこの意識変革は、このたびの大収穫。

ちゃんと手をかけて、アンダーフェイスと向き合う

Photo: kobchaima/123RF

鑑賞後のディナーでは「ヘアは全取りよりちょい残しがエロいかも」「若さとはすなわち大陰唇の厚み」などと各々ダイレクトな感想を述べ合ったのだが、一番の謎は「なぜあんなに脚を開いても、小陰唇はピタリと閉じたままなのか?」。この件に関しては3人とも帰宅後にできる範囲での開脚を試み、自らのもので検証したが不可能と判明(脅威の膣圧を誇るMでも「普通に“具”が見えます……。ストリッパーのあそこはアメージング!」と敗北宣言)。うーん、なぜだろうなぜかしら? 耳たぶと同じでそもそも鍛えられない部位だと思うし、専用の糊でもあるのだろうか? ともあれプロはやはり徹底的にすごい。

というわけで入浴後はせめてもの気持ちを込めて、いつもよりゆっくり丁寧にクリームを塗り込んだ私。ちゃんと手をかけよう、向き合おう。C先生のところにも再度、上清液注射を打ちに行こう。大事な大事な「下の顔」なのだから。

後日談。ブラジリアンワックスサロンにて

Photo: alexrooss/123RF

10年近く通い続けている、ブラジリアンワックスサロンにて。「IとOはいつもと同じく全取りで。ただ、Vはちょい残しも考えているんです」とストリップに感化された旨を伝えたところ、「うーん、V部分はもはや数えるほどしかないので」。そうか……。私のあそこはすでに波平さんの頭なのか。抜き過ぎたものが再び生えないのは眉と同じというわけで、後に続く皆さま、アンダーフェイスにおいてもご利用は計画的に!

本日の“エロスな”リコメンド
ついにメジャーどころ、「トワニー」がフェムケアに参戦

弾力のある濃密泡がボディの凹凸にもぴったりフィット。トワニーアンドミー デリケートケアウォッシュ〈ボディ用洗浄料〉150ml ¥2,750、うるおいを守るのはもちろん下着の摩擦感を抑え、汚れの直接の付着も防ぐ処方。同 デリケートケアクリーム〈ボディクリーム〉60g ¥3,080/カネボウ化粧品(0120-108281)

カネボウ化粧品のカウンセリングブランド、トワニーからフェムケア専用ブランド「TWANY&me」が誕生した。第一弾は泡状のソープ(洗浄)とクリーム(保湿)というオーソドックスな製品構成だが、何より大手の歴史ある超メジャーブランドがついにフェムケアに乗り出した点が興味深い。デザインも香りも妙に“オンナオンナ”することなく、草木染めをイメージしたというシンプルな容器、気になるにおいを感じにくくさせることに特化したさっぱりとしたフローラル系であるところも、この分野の成長を感じさせる。

Profile
麻生綾 美容編集者歴は30年越え。『25ans』『婦人画報』(ハースト婦人画報社)、『VOGUE JAPAN』ビューティー・ディレクター、『etRouge』(日経BP)編集長を経て、現在はエディター、ビューティー・ジャーナリスト、エッセイストとして数々のエディトリアル、広告にて執筆やディレクション等を行う。その豊かな発想力を求め、多くのブランドがラブコール。日々移り変わる美容を、かわりやすく噛み砕き、時に新たな発想をあたえる美の伝道師的存在。

Editor & Text: Aya Aso Editor: Toru Mitani