BEAUTY / EXPERT

vol.4.5「セックスの余生」をどう過ごすか?【連載・内なるエロスの高め方】

あらゆる角度でビューティーを分析してきた、美容編集者歴30年の麻生綾が「エロス」を語り尽くすこの連載。今回は、前回の「家族とセックス」に続く、人生100年時代においてのセックスの継続方法について。※前回の記事はこちらより。

50代の男性に本音を聞いてみた

映画『ビフォア・ミッドナイト』。長年連れ添った夫婦と子どもたちと、熟年の恋。Photo: Despina Spyrou/©Sony Classics/courtesy Everett Collection

少し前に放映されていたフジテレビ系「あなたがしてくれなくても」というドラマ、ご覧になっていただろうか? まさしく“レス”を扱ったドラマだったのだが、問題が解決されないままふんわりした最終回を迎えて、当時ちょっと炎上していた。詳細はこれから視聴される方のために伏せておくが、解決しきれなかった番組スタッフの気持ちもわかるし、一方で解決を待ち望んでいたのに肩透かしを食った感じの番組ファンの「なんだよー。時間を返せ!」もわかる。でもそれだけいろんな意味でリアル。そもそも万人が腑落ちする「正解」なんてないものだし、だからこそ皆が息を詰めて物語の行方を見届けようとしていたのだろう。何かしらの「スッキリ」を期待して。

レスの件、後輩の男性にも聞いてみた。結婚して20年数年になる妻が今も可愛くて仕方ないと堂々のろける50代だが、子ども二人をもうけた後はかれこれ10数年レスだそうだ。理由は「無理だから」。はあ? 曰く「前にえらく腹落ちした話があるんですよ。男のセックスは攻撃衝動が不可欠と言う説。それは人類を近親相姦から遠ざけるためにインプリされており、だから一部のイカれた男を除いて、攻撃衝動を向けようがない実の娘に性欲は抱かない、抱けないと。納得しましたよ! そう思うと、僕にとって妻の可愛さはもはや娘に感じるものとたぶん同質、とてもじゃないけど性欲なんか向けられません」だそうなのだ。つまり、身内になればなるほど、攻撃とは真逆の守りたい存在になっていくということらしい。なるほど、それじゃあ妻には性欲はぶつけられないわな……。ちなみに「家庭外で」なら問題ないとのこと。ううむ、かつては妻こそが一番の「ヤリたい」対象だっただろうに、この変わり身ってば、どうなのよ? 前述の「あなして」の“陽ちゃん”は、まさにこのパターンだったのかしら。

Photo: 映画『RABBIT WITHOUT EARS』(原題・2007)Photo: ©Warner Bros./Courtesy Everett Collection

「じゃあさ、おいてきぼりにされている妻のほうはどうしたらいいの? 別に性欲を持て余しているわけじゃないのよ。自信喪失しちゃうの。大事な唯一のパートナーに女として求められたいだけなのよ。性欲解消以前に、これってある種の気持ちの承認欲求なんだけど」と私。「あのね、そんなの男だって分かってないわけ、ないじゃないですか。申し訳ないと思うし、このまま年取らせてしまって可哀想とも思ってますよ。これ、妻のことが大好きな既婚男性のほとんどが抱えているジレンマなんじゃないかなあ。なんだったら外でやってきてほしいくらい。嘘、それは嫌だけど(笑)。でも、さっき言ったようにできない。どうしようもないんです。だから僕の場合はなるったけ手をつないだり、ほっぺにキスしたり、軽いスキンシップを欠かさないようにしていますよ。ちゃんと君に関心があるよ、好きだよ、大事にしているよって」と件の後輩。ううむ……。全レス妻の皆さん、どう思います?「そうだったのね」と穏やかに受け入れるか、はたまた「はあ? 何言ってるのよ」と憤るか。

アメリカ人の旦那さまと暮らす友人にも聞いてみた。こちらも子どもをとっくに成人させている50代だが、レスどころかいまだに旦那は毎晩いちゃついてきて「正直面倒臭い」とのこと。断ると「夫婦なのになぜ!」と大変機嫌が悪くなるのだそうだ。ちなみに旦那さまのご兄弟、ご実家も似たような感じらしく、これはもう夫婦の在り方が違う、遡って家庭での教育が違う、もはやDNAレベルの刷り込みなのだろうと結論した。USAではレスは立派な離婚理由、それは間違いないようだ。

レス打破のための5つの道すじ(明確な回答は存在せず)

映画『ザ・リトル・デス』(2014)より。Photo: ©Magnolia Pictures/Courtesy Everett Collection

さて、どうしましょうか? いうなれば「セックスの余生」。前編の「セックスと家族」において、全ては自分軸、つまりは「ありたい自分」優先で考えるのが限りなく正解に近いのでは? と書いたが、それはここでも同じだと思っている。現在、近い未来、遠い未来。自分はどうありたいか、どのポジションが一番心地よいのか、 いま一度おのれに問うてみる。そして、それについて考える際に何より大事なのは、いちいち周りを見回さないことかもしれない。せめて余生くらいは自己中で! 日本人はともすると自分の意思より他人がどう思うかを優先するきらいがあるけれど、余生を迎えようとする&こんなことを真面目に悩む皆さんは、たぶん「周りを慮(おもんぱか)ること」はもう十分やってきているはず。そうではなく、繰り返すがホント余生くらいは自己中で! それに「ありたい自分」が定まってこそ、目の前のどの“道”を選ぶのかも迷いなく決められるのではと思う。

映画『ディラン・ドッグ デッド・オブ・ナイト』(2012)でのロマンティックなシーン。 Photo: ©Freestyle Releasing/Courtesy Everett Collection

一応、“道”の例を5つほど挙げておく。
その1 現状をリセットして、攻撃性を向けてくれる相手を新たに探す。ただ、これはおそらく一時凌ぎで、新たな相手がごく平均的なニッポン男子のマインドなら、また同じことが繰り返されるのだと思う。そうしたら永遠にパートナーチェンジを繰り返さなければならないドツボ。まあ、それはそれで刺激的な人生を求める向きにはありでしょう。
その2 現パートナー公認で、ほかに性的パートナーを持つ(場合によっては、セックスワーカーのサービスなどを利用)。ただし、メンタルおよび生理的に潔癖な人には不向き。
その3スポーツ化」する。これ、案外よいと思うのだがいかがだろうか? レスではあるが仲はいい夫婦関係の場合、「ヨガが流行ってるんだって」くらいのノリでお互いの健康・長寿のために日常化する。エロスを介在させないエクササイズ感覚での再スタート。この連載的には不本意だけれども(笑)。
その4 話し合う。それか、欧米人が大好きなプロによるカウンセリング。いやでもこれ、日本人が一番苦手とするパターンでしょう。んなものニコニコと話し合えるのなら、そもそも悩んでなんかいないという話。
その5 現在の「そこそこ幸せ」を大事にする。家族へと昇華したエロスもまた素敵だと前向きに観念して。これ、この前後編の長駄文の意味をなくす身も蓋もない選択肢かもしれないけれど、結果的に現状維持だとしても、一周回って考えた挙句のことなのだからそんなに悪手ではないように思うのだが。

そのほか、ありますか? この現代日本の大問題、なんなら国会で答弁してほしいくらいだ。

本日の“エロスな”リコメンド
森林浴そのもののようなルームミストで、自分軸にアクセスする

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Profile
麻生綾 美容編集者歴は30年越え。『25ans』『婦人画報』(ハースト婦人画報社)、『VOGUE JAPAN』ビューティー・ディレクター、『etRouge』(日経BP)編集長を経て、現在はエディター、ビューティー・ジャーナリスト、エッセイストとして数々のエディトリアル、広告にて執筆やディレクション等を行う。その豊かな発想力を求め、多くのブランドがラブコール。日々移り変わる美容を、かわりやすく噛み砕き、時に新たな発想をあたえる美の伝道師的存在。

Editor & Text: Aya Aso  Editor: Toru Mitani