ーセックスとオーガズム
- オーガズムに達しない
ーセックスと快感/性欲
- セックスに対して積極的になれない
- セックスのパターンがマンネリ化問題
- パートナーとセックスをしたことがない
- セックスレスでの離婚
- 妊活中のセックス
ーセックスと年齢
- 年上パートナーの性機能
- セックスと認知症の関係
中イキと外イキは全く別物ではなく、つながっている
女性のオーガズムは、膣での中イキとクリトリスでの外イキと分けて考えられがちです。しかし、20年前に、クリトリスは表に出ている一部ではなく、膣入口を挟むようにGスポット付近まで伸びている器官だと認知されました。つまり、中イキと外イキは全く別物ではなく、つながっているのです。
この相談者の方のように「中イキが未経験」という声をよく聞くのですが、前戯の時間が短いなど女性の体の準備が十分でないと、挿入時にオーガズムに達することは難しいです。外陰部が十分に刺激されて充血して膣内がきちんと潤った状態で挿入するから、膣の中も感じてくるからです。相手に十分な前戯をしてもらう必要があるでしょう。
とはいえ、相手任せではなく、セルフプレジャーをすることも大切です。セルフプレジャー=オーガズムの修行。相手の経験値やテクニックはさまざまなので、まずは自分で、どんな体の角度でどこを触ったら感じやすいのか、把握しておくのです。そうすれば、セックスのときにどこを触ってほしいのか相手に伝えることができ、オーガズムに達しやすくなります。
セルフプレジャーは、プライバシーが確保された空間で行う方が集中できます。男性はトイレの中でという人もいますが、ムードも重視する女性は、身近な場所ではバスルームがおすすめ。防水のバイブレーターもあるので、使ってみては。
「特に女性は、セックスという言葉にポジティブなイメージを持ちにくいことが多いようです。母親や祖母など身近な女性からの、性に対する刷り込みがあるかもしれません。月経など性に関することを教えてもらうのが、身近な女性であることが多いため、その影響を受けやすいのです。もし母親や祖母がセックスに対してネガティブなイメージを持っていると、自然と自分も同じような考えを持つ傾向があります。
親が厳しかったから、性的なものに興味関心を持つと、自分がいけないことをしているような気になる、”セックスをしていると、お母さんの言葉みたいなのが頭をよぎってオープンになれない”、 “新しく恋人ができてセックスするときに、母親はこの人のことをどう思うんだろうと考える。そして、母親は彼のことをあまり好きにならないし認めないだろうなと思うと、性に積極的になれなくなる”などの相談が、実際に寄せられたことがありました。
体を安売りしてはダメ、などと直接言われることはなくても、例えば一緒に映画やドラマを見ていて、性行為を積極的に楽しむヒロインが出てくると、「こういう女性はね」と言っている。そういうのを見て、親の価値観が自然と植え付けられていくのだと思います」
「女性がもっと積極的にセックスを楽しむには、今までの価値観に縛られないのが大切です。そのために、まずは、自分が母親の時代の価値観の刷り込みを受けているかもしれないことを自覚する。そのうえで、「時代は変わったのだ」と自分に言い聞かせ、意識のアップデートを試みてください。セックスに積極的になりたいと思うなら、女性でも、その気持ちを抑圧する必要はありません。今の時代は、セックスに対してオープンで楽しんでいる女性は、男性から見ても女性から見ても魅力的だと私は思います」
「こうした悩みは非常に多いです。私はよく、セックスには良いマンネリと悪いマンネリがあるという話をします。確実に気持ち良くなれる触り方や体の場所を知っていて、「この触りをすればオーガズムに達する」とお互いに把握し、それを毎回繰り返すというのは良いマンネリです。こうした繰り返しはセックスの満足度を下げるどころか、むしろ上げることが多いです。だから「マンネリでも問題ない」と認識して、安心してください。
問題なのは、セックスの悪いマンネリ。お互い、あるいはどちらかがあまり気持ち良さを感じていないのに、創意工夫をしていないパターンです。ここからどう脱していくのがいいのでしょうか?」
「気持ち良いセックスを目指すとハードルが高くなるので、まずはふたりにとって「確実に不快感のないセックス」を目指してみて。体を触ったときや性器を挿入したときに、とにかく痛くないことを目指すのです。そうすると、セックスが負担でなくなり、徐々に、確実に気持ち良くなる方法を積極的に探求していくことができ、良いマンネリへと変わっていきます。
ふたりが付き合った当時を思い出すような工夫をするのもおすすめ。例えば、付き合った当初に訪れたレストランでディナーをする、当時つけていた香水をつけるなど。そうしたことで新たな刺激が加わり、マンネリを緩和できるでしょう」
「未完成婚」という結婚の形もある
数が多いとは言いませんが、性交痛があったり、ふたりとも性欲が薄いなどの理由で「結婚して10年経つけれど、一度もセックスをしたことがない」という相談者の方もいます。結婚後、挿入を伴うセックスを一度もしたことがない夫婦を「未完成婚」と呼びます。性欲がないという人はいますし、カップルのどちらも性欲がなければ、未完成婚でも問題はありません。
相談者の方が悩んでいるのは、自分には性欲があるのにセックスに至らないからでしょうか?その場合は、勇気を持って自分のモヤモヤをパートナーに伝えてみるのがいちばんだと思います。性欲がない人なのかもしれませんし、もしかしたら相手も相談者の方に「性欲がない人なのかな」と心配しているのかもしれません。もしお互いに恥ずかしいのだったら、裸で抱き合う、洋服のままマッサージし合うなど、性的なスキンシップを徐々にステップアップしてみては。
「性的な魅力があると評価されたい」という欲求を大切に
相談者の方もあまり性欲がなく、ただ「女としての自分に自信をなくしている」ケースもあります。その場合は、パートナーに「かわいいね」と褒めてもらうなどで解決する可能性も。「性的な魅力があると評価されたい」という気持ちは、女性の場合、40代以降に出てくることが多いように思います。20代30代のときは、何もしなくても性的な対象として見られることが多いため、あまり欲求が生まれないのかもしれません。「性的な魅力があると評価されたい」という欲求は当たり前のものであり、その気持ちを変なものだと思わずに肯定するのも大切です。
自分と相手がしたいことがマッチしているか?
まず、セックスの相性について。男性のペニスのサイズと女性の膣の形状が合うといった“体の相性”だと思われがちですが、私はもっと総合的なものだと考えています。体の形状も多少はありますが、もっと大切なのは、「自分と相手がしたいことがマッチしているか」です。例えば、「女性はクンニリングスをしてほしいけれど、男性はしたくない」、「女性は積極的に攻めたいけれど、男性はリードされるのが嫌」などの不一致の悩みが多いですね。
ふたりの性欲の強さが合っているかどうかも、相性の一つと言えます。片方の性欲が薄く、もう片方が旺盛な場合、ギャップが生じることがあります。
セックスの話ができる相手を選ぶことが重要
セックスレスで悩む多くのカップルは、コミュニケーションレスだという印象があります。「性交痛があるのでセックスを拒んだらレスになった」、「ED(勃起障害)なのが恥ずかくてセックスを控えたらレスになった」というケースが多いのですが、いずれもお互いの悩みを相手にきちんと話していないから起こったことだと言えます。
「セックスを重視して次の結婚相手を探した方がいいのか?」という質問の回答はYES。ただし、体の形状云々よりも、セックスの話をきちんと話せるかどうかを重視することをおすすめします。前述のように体の形状が合わない場合でも、コミュニケーションが取れていれば、痛みを軽減する工夫や、より気持ち良くなる方法を見つけるなど、何らかの解決策が見つかるでしょう。「自分と相手がしたいことがマッチしているか」や性欲の違いも、話し合うことで解決の糸口が見つかる可能性があります。
アプリで男性も排卵日を認識できる時代に
最近では、「KONOTOKI」などの妊活サポートアプリを活用する人が増えています。これらのアプリには、排卵日をカップルで共有できる機能があるため、女性が妊娠しやすい日をわざわざ男性に伝える必要がありません。かつては妊活は女性ひとりが頑張るものと思われがちでしたが、現在では、不妊の原因の半分は男性であることが知られるようになり、妊活はカップルで行うものという認識が広まっています。そのため、このような機能が搭載されるようになったのだと思います。まずは、このようなアプリを使ってみることがおすすめ。
不妊治療をしていてもセックスは大切に
病院で不妊治療を受けている方もいると思います。その場合は、「子作りは治療で行い、家でのセックスは排卵日や射精にこだわらず、スキンシップを楽しむ時間にする」というのがいいのではないでしょうか。
セックスには、子どもを作る以外にも、ふたりのコミュニケーションという目的があります。病院で妊活をしているからといって、セックスをしなくなってしまうのはもったいないこと。子作り以外のセックスも大切にすることが、夫婦仲を保つために良いと思います。
この質問者の方で気になったのは、一人で思い悩んでいること。本来、子作りはふたりで取り組むもの。相手の積極性が見えないのが気になります。お相手は子どもをどれだけ欲しいと思っているのか、一度きちんと話し合ってファミリープランニングをすることをおすすめします。
「勃起機能の低下や射精障害などで悩む男性は少なくありません。個人差がありますが、早い方だと30代半ばくらいから感じる人がいます。勃起して射精しないと男としてダメ、と考えてしまう男性は、少なくありません。でも、女性は実はそうでもないのではないでしょうか? その場合は、女性の方から、「最後までいかなくてもイチャイチャするのが好き」などと伝えて、相手のプレッシャーを少なくするようにするのがいいと思います。
男性が射精しないと満足できないという女性もいるでしょう。その場合は、毎回射精は無理なら、前戯や後戯を充実させて満足したい、などと折り合いをつけるようにするのがいいのでは。
そのためには、普段から性の話をできる関係を作っておくのが大切です。例えば、ご飯を食べながら、「今日はどうだった?」と話せる関係にすることが重要なのです。話すきっかけが掴めないという人は、インターネットなどのセックスに関する記事を引き合いに出すのもOK。
セックスに関して、「察して欲しい」はご法度。自分がしてほしいことは、相手にきちんと言わないと伝わりません。「本当はこうして欲しいけれど、なんか察してくれない」では、平行線のままです」
「アメリカとイギリス、そしてイタリアの研究チームが、比較的最近、性行為の頻度と認知症の関連性について調べています。それによると、男女共に、週1回以上のペースで性交渉している人は、認知症の進みが遅いということが示唆されています。
ただ、日本の医師がこのようなことをおっしゃっているのはまだ聞いたことがありませんし、セックスと認知症の関係については、研究中の段階だと思います。
セックスの頻度と閉経の関連性に関しては、明確なデータはありません。ただし、定期的にセックスをしてオーガズムを迎えたり男性器を入れることで血流が良くなりますし、女性ホルモンの分泌に何らかの影響を与える可能性はあります。また、性行為は膣の筋トレにもなり、膣の衰えや萎縮を予防できる効果は期待できると考えます」
「信頼できるパートナーとのセックスは、人生の豊かさやストレスケアにつながると感じます。ただし、心地良いセックスに限られます。強要されたセックスや痛みや不快感を感じる行為はNG。相手を一応受け入れて渋々とセックスを繰り返しても、ストレスは緩和せずに逆に募るだけです。信頼できるパートナーと満足度が高いセックスをすることがウェルネスにつながります」
Oliviaさんおすすめの、セックスシーンが美しい映画をご紹介。
「阿部定事件」を題材に、男女の愛欲の極限を描く。「女性がセックスに対して積極的で激しく求めている描き方は、この時代では珍しかったと思います。それが印象的で、とても好きな映画」。
海辺のバンガローで暮らすフランス人の青年ゾルグは、セクシーな美少女ベティと出会い、毎日のようにセックスに耽る。「二人が最高潮に惹かれあっているときの性の描写が、男女共に積極的なのが素敵だと思いました」。
舞台は、民主化要求の波がソ連軍の軍事介入で圧殺されていく1968年のプラハ。自由奔放に女性とつき合っている、脳外科医の若者の波乱の人生を描く。「鏡を使った有名な誘惑シーンが登場します」。
1920年代のフランス領インドシナ。貧しいフランス人少女と裕福な中国人青年の愛の日々を、官能的に綴った恋愛映画。「二人の小指が初めて触れるシーンに息を呑みます」。
田辺聖子の短編小説を、妻夫木聡・池脇千鶴主演で実写映画化。足の不自由な少女と平凡な大学生の恋の行方を描く。「手探りで行う初めてのセックスが懐かしい気分に」。
さまざまな愛のかたちとエロティシズムを、「純愛」「悪戯」「誘惑」の3つの視点描く、3話のオムニバス・ドラマ。「3人の監督が三者三様のエロスを描いていて面白いです。特に、ウォン・カーウァイ監督の『若き仕立て屋の恋』の、触れられない人物への熱視線がエロティック」。
ニューヨークを舞台に、恋愛カウンセラーでありながらオーガズムを感じたことがない女性が様々な性と愛のあり方に出会う物語。「オーガズムを得るために努力する様に、同じ悩みを抱える女性は共感するかもしれません」。
鬼才ラース・フォン・トリアー監督が、色情狂(ニンフォマニアック)のヒロインの性の冒険遍歴を赤裸々に描く。ヒロインを演じたのはシャルロット・ゲンズブール。「性を探究する女性の人生を描く物語。様々なセックス描写が出てきます」。
サラリーマン、女子大生、ニート...。六本木の高級マンションの一室で行われる乱交パーティに集う8人が、セックスに至るまでの過程を生々しく映し出す。「複数プレイの妄想を楽しむ人もいると思いますが、それを映像で擬似体験できます。セックスを通して見られる人間模様も面白い」。
第66回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。青い髪の美大生エマと出会い、運命的な恋に落ちた女性アデルの情熱的な人生を描く。「女性同士のお互いを求めあうセックスシーンが話題になりました」。
ベストセラーになったイギリスの官能恋愛小説を実写映画化。「恋愛未経験の女子大学生が大企業のCEOと主従契約を結び、ソフトSMに挑戦していく物語。シンデレラストーリーとフェティッシュな世界観の両方が融合した作品です」。
イギリスのミステリー小説「荊の城」を原案に、物語の舞台を日本統治下の韓国に置きかえた、サイコスリラー。「思わず笑ってしまいそうになる男性目線の独特な性描写があるなかで、女性同士のセックスが美しく輝いています」。
石田衣良の同名小説を、松阪桃李主演で映画化し話題に。ボーイズクラブで出会う女性たちと体を重ねる「娼夫」を描く。「性に悩む女性が登場して共感したり、様々な性描写を見て、自分がどんな行為にドキドキするかを探ることもできます」。
人間と不思議な生物の種族を超えた愛を描く、ファンタジーテイストのラブストーリー。「中高年女性のありのままの体や日常にあるセルフプレジャー、純愛が描かれた作品。人間外の生物との性描写が独特で、引き込まれます」。
OliviA(オリビア)
ラブライフアドバイザー。2007年より、性に関する総合アドバイザーとして本格的に活動開始。日本と台湾で書籍を出版し、国内外のメディア取材も多数。近著に『愛され女子は知っている 世界でいちばん幸せなおうちセックス』(マガジンハウス) など。http://olivia-catmint.com
Text: Kyoko Takahashi Editor: Kyoko Muramatsu
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