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日本三景・天橋立で開催、新感覚の音楽フェス「KYOTOPHONIE」で過ごすマインドフルな週末(Shunsuke Okabe)

「KYOTOGRAPHIE」の姉妹イベント、ボーダレスミュージックフェスティバル「KYOTOPHONIE」が、日本三景として名高い京都・天橋立にて開催。2日間に及ぶマインドフルなエクスペリエンスをレポートする。

ファッション関係者にもファンが多い京都国際写真祭、通称「KYOTOGRAPHIE」の音楽版が始まるらしい。そう聞いたのは今年の4月のこと。その名も「KYOTOPHONIE」。開催場所は、日本三景として名高い京都・天橋立。メインスポンサーはボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)。何とも興味そそられる見出しに釣られ、胸を高鳴らせながら品川駅から新幹線に飛び乗った。

傘松公園から臨む天橋立。展望台から前屈し、股の間から見ると天地が反転し、まるで龍が空に上っているように見えることから「股のぞき」と呼ばれる。

京都駅から約2時間、品川駅からカウントすると約5時間。日本海の宮津湾に面した天橋立は、3.6キロにもおよぶ湾口砂州、そして6700本もの隆々たる松が生み出す景観で古くから知られてきた。そんな歴史的はロケーションで開催される「KYOTOPHONIE」は「KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭の精神に基づき、新たに立ち上げた国際的なボーダレスミュージックフェスティバル」と公式ウェブサイトには説明されている。音楽フェスとはいうものの、「KYOTOGRAPHIE」の系譜を継ぐだけに、いわゆる“パリピ”的なフェスのそれとは一線を画す。

観光船からみた天橋立。カモメと鳶(とび)がエサを取り合う光景もまた一興だ。

共同創設者である仲西祐介とルシール・レイボーズ夫妻が今回ピックアップしたのは、シシド・カフカによる、ブエノスアイレス発のハンドサインによる即興演奏を取り入れたコンセプチュアルプロジェクト「シシド・カフカ directs el tempo」や、ショリーニョ(ブラジル音楽)、ファンク、レゲエ、など様々なジャンルを巧みに織り交ぜ、ブラジル音楽の新たなアプローチを見出してきた鬼才シコ・セザールなど、気鋭のアーティスト13名。

ソウルのこもったパフォーマンスで圧倒したシコ・セザール。ポルトガル語の歌詞が分からずとも、自然に身体が動くから不思議だ。

正直、これまであまり馴染みのないアーティストばかりで、最初こそ面食らってしまったが、それこそが「KYOTOPHONIE」の意図するところ。芸術としての音楽の深淵さと先鋭性、そして音楽の持つプリミティブなエモーションを味わって欲しいということだろう。最近Kポップと懐メロの洋楽ばかり聴いていた耳には、なんとも新鮮な体験だ。

フェスといえば音楽はもちろんだが、忘れてはならないのがフード。ハイライトは、今回のためにフランスから来日したミシュラン一つ星シェフのアルマン・アルナルと、知る人ぞ知る京都の名店「Farmoon」の船越雅代のコラボレーションによるコースメニュー。もっとカジュアルなビストロを楽しみたい人は、東京・渋谷の「pignon」のオーナーシェフ吉川倫平が海のレストランで腕をふるう。

心地よい音楽と波の音に耳を傾け、日本海の乾いた風に吹かれながらいただくオレンジワインとラグーソースのパスタ。これをご褒美と呼ばずしてなんと呼ぼう。

見事な景勝、音楽、食、アート、そしてファッション。五感をフルに研ぎ澄ませ、身体中をインスピレーションで満たすマインドフルなエクスペリエンスには、片道5時間をかける価値がある。来年はどんなアーティストが出演するのだろう。そんなことを考えながら、特別急行列車「はしだて」で帰路についた。

https://kyotophonie.jp/