6月15日(現地時間)、フェンディ(FENDI)はブランド創立100周年を迎える最初のショーとして、2025年春夏メンズコレクションを発表した。同コレクションを手がけたアーティスティック ディレクター、シルヴィア・フェンディは「アーカイブを深く掘り下げ、フェンディが持つシンボルを再解釈したかった」と話した。この言葉を体現するかのように、今季のフェンディが打ち出した新たな紋章には、故カール・ラガーフェルドが製作した“FFロゴ”や、ブランドを象徴する“ペカンストライプ”、ローマ神話で物事の始まりと終わりを司る“ヤーヌス”、そして“リス”が描かれていた。
紋章をデザインしたのは、創業者の孫にあたるヴェントゥリーニ・フェンディ。「私はブランドにとって象徴になるようなシンボルをデザインしたかった。100周年を迎えるということは、今までフェンディがたくさんの人に支えられてきたという意味でもあり、私たちのブランドに携わった人はすべて“クラブの一員”であるということを表現したかった」と話した。
フェンディが持つ馬具の技巧を用いて
ショー全体を通して、1925年にローマの馬具職人からフェンディ家に伝授されたセレリアステッチの技巧を堪能することができた。これらのテクニックはテーラリングスーツやデニムパンツをはじめ、バッグ類にもあしらわれ、ジッパー付きのバゲットやチェス盤のようなレザーのパッチワークのバックにも採用されていた。
その他にも、今季のコレクションでは20世紀のクラシカルなメンズウェアをオマージュしたアイテムも多数登場。特大のペカンストライプが印象的なラグビーシャツやゴルフウェアを連想させるブルゾン、サッカーシャツなどもラインナップ。さらに、既存の服の概念を覆すかのようなディテールが散りばめられたアイテムも揃い、襟が捻れたポロシャツやアシメントリーなシルクニット、長くも短くも着られる袖に切り込みの入ったポプリンシャツなどもあった。
ディテールに落とし込まれたアーカイブの片鱗を映し出す会場
ショーの演出を手掛けたのは、昨シーズンに引き続きイタリア人アーティスト、ニコ・ヴァセラーリ。今回はミニマルなセットデザインが印象的で、可動式のミラーが時に回転しながら、服が360度見えるようにモデルの姿を映し出していた。この演出に対して、シルヴィア・フェンディは「今季のコレクションでは、細かなディテールにもアーカイブの片鱗を詰め込みました。様々な角度から見てほしい、という思いで鏡の演出を採用しました」と語った。
ブランドのヘリテージに思いを馳せて
ショーを振り返ると、ブラックのセットアップには故カール・ラガーフェルドへの愛着が感じられた。また、シルビアが「これは宝石箱です」と語るトランク型のバックには、ブランド創業当時の店舗の平面図がプリントされ、正面には5つのアーチが描かれていた。これは、1940年代後半にアデーレとエドアルドからフェンディを引き継いだ5人姉妹(シルヴィアの母を含む)を象徴しているそうだ。「私は数秘術がとても好きなんです。デルフィーナ(シルビアの娘)と新しい世代について考えていたこともあり、コレクションの中に宝石箱を入れたかったんです。それには秘密が詰まっているから」というコメントを残した。
Photos: Gorunway.com Text: Luke Leitch Adaptation: Atsutaro Ito, Saori Yoshida
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