最近、UK版『VOGUE』に登場するリアル花嫁たちがこぞって身につけているブライダルブランドがある。それが、2019年に創業したロンドン発のジ・オウン・スタジオ(THE OWN STUDIO)だ。スタイリストのジェマ・ソート・シルヴァースは同ブランドが手がけたドロップウエストのミカドシルクガウン(スタイル075)で晴れの日を迎え、その後、ピンクに染め直してお呼ばれドレスにリメイク。友人の結婚式で再着用した。ジュエリーデザイナーのハナ・ローレンスはザ リッツ ロンドンでの挙式でエレガントなコラムタイプの1着(スタイル111)を纏い、タレント・リレーションズ・マネージャーのエラリー・ロマンコは、バックレスのホルターネックドレス(スタイル116)をブライダルルックに選んだ。
彼女たちのようなミニマル派の花嫁たちの人気を独占するのが、まさに当初からの狙いだったという創業者のジェス・ケイとロージー・ウィリアムズ。「ブランドを立ち上げるきっかけとなったのは、私の結婚です。かれこれ10年前の話ですね。洗練されていてモダンなウエディングドレスを探していたんですが、市場に出回っていたドレスはどれもクラッシックで、あまり選択肢がなくて」とケイは当時のことを振り返る。
だが、その時点で勢いに任せてブランドを立ち上げることはしなかった。もともとPRとして働いていた2人は、まずデザインに専念。「かなり時間をかけて初のコレクションを制作したので、自分たちのブランドを持つことを思いついてから実際に創業するまで、3、4年くらいかかりました」とケイは説明する。「デザインの多くは、私たち自身が好きなものから生まれました。そして私たちだけのはっきりとしたスタイルがあるからこそ、ジ・オウン・スタジオは成功したんだと思います」
実際、ジ・オウン・スタジオの人気のシルエットは、何年もかけて完成させた初コレクションのデザインに由来するものが多い。ケイが自身の結婚式のために制作した、キャロリン・ベセット=ケネディにインスパイアされたスリップドレスも、スタイル008として今も評判だ。「工場のライン作業みたいに、次から次へと新しいものを作るようなことはしないように心がけています」と言うウィリアムズ。そしてたとえアーカイブモデルであっても、クライアントの要望に応じて、過去のデザインを再現することもできると付け加えた。とはいえ、ブランドは既存のシルエットを積極的にアップデートしており、最新のコラムドレスにはオーガンジーのディテールがプラスされ、バックレスのホルターネックスタイルには新たにパールの装飾が追加。「自分だけの一点ものを手に入れたと感じられるように、すでに展開しているシルエットをアップデートさせて、ひねりを加えるのが好きなのです」とケイは続けた。
作りたいのは、繰り返し着用できる特別なドレス
ケイとロージー・ウィリアムズの2人は、当初から主にシルクといった天然素材をあえて使用してきた。その一番の理由は、品質を何よりも重視したいということだが、式後にウエディングドレスがリメイクされることを見越して、ほかの色に染め直しやすい天然繊維を採用している。「ウエディングドレスの再着用は、私たちが立ち上げ当初から掲げていることです。ブライダルを手がけるファッションブランドはほかにないと感じたからこそ、そこに着目しました。生地にしてもシルエットにしても、本当に何回でも着られるドレスを作っているんです」とウィリアムズは語る。
そして昨年、ジ・オウン・スタジオはオケージョンウェアのラインをローンチ。ほんの少し手を加えるだけでイブニングウェアに変身する、シンプルかつエレガントなブライダルルックを得意とするブランドとしては、ごく自然な成り行きだ。出だしも好調で、すでにマリサ・アベーラやオリヴィア・ディーン、ジェシー・ウェアなどがレッドカーペットで着用している。「私たちのカッティングやシルエットはブライダルというジャンルに縛られていないので、自然な流れでオケージョンウェアを展開しました。反響の大きさに圧倒されています」とケイは言う。
ジ・オウン・スタジオがここまでの成功を収められた理由のひとつは間違いなく、日常使いのワードローブにも溶け込むウエディングドレスを打ち出してきたことだ。「お客様にお会いすると、皆『タイムレスで主張の激しすぎない、自分らしいものが欲しい」と言うんです」とケイは続ける。「それが、花嫁たちが本当に求めているものなのです」
Text: Emily Chan Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.CO.UK
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