FASHION / TREND & STORY

アナ・ウィンターが贈る、カール・ラガーフェルドへの大いなる賛辞──「過去と未来を同時に見つめる、これこそが彼のやり方」

メットガラ(MET GALA)の開催を間近に控えた今、US版『VOGUE』編集長のアナ・ウィンターが、今年のテーマであり偉大なデザイナー「カール・ラガーフェルド」へのトリビュートを綴る。

2013年、テキサス・ダラスにて。シャネルのドライブインシアターで、カール・ラガーフェルドの隣に座るアナ・ウィンター。

Photo: Courtesy of Daniel Martensen

カール・ラガーフェルドという人物を、一言では言い表すことはできません。彼は私の友人であり、完全無欠な芸術家であり、パラドックスそのものでした。彼は注目を浴びることに歓びを感じるデザイナーでありながら、極めてプライベートな生活を送っていました。博識で読書家、そしてポピュラーカルチャーの華やかさを愛する人でもありました。彼の机は本と紙で覆われていながらも、その手もとには常に最新のテクノロジーがあったのです。

彼は「ファッションは博物館には展示されるべきではない」という名言を遺したことでも知られます。そんなカールのことを、今回メトロポリタン美術館の展覧会を通じて回顧するのは一見矛盾しているかもしれません。でも、私は自分のささやかな役目を果たせたことに、ほっとしています。なぜなら、彼はこのように称賛されることを喜んだでしょうし、何より、彼ほど称賛にふさわしい人はいないと思っているからです。コスチューム・インスティテュートの優秀なキュレーターであるアンドリュー・ボルトンは、展覧会のタイトルを『Karl Lagerfeld: A Line of Beauty』と名付けました。画家のウィリアム・ホガースは、まっすぐな線よりも、刻々と変化する線の方がエネルギーや生命力を感じられると信じていたそうですが、まさにそれを連想させます。カールがファッションに与えた革命的な影響について、これより完璧なメタファーはないでしょう。

カールのように輝き、常に手を動かし、人々の前に立って、紆余曲折と変貌に満ちた人生を歩んだデザイナーは祝福に値します。だからこそ、私たちはこの一連の企画を立ち上げたのです。『VOGUE』ではカールの軌跡を振り返り、シャネルCHANELクロエ(CHLOÉ)フェンディFENDI、そして彼自身のブランド、カール・ラガーフェルド(KARL LAGARFELDの作品を紹介しています。ラファエル・パヴァロッティがこれらのデザインの撮影を手がけ、カールの友人でミューズ、そしてコラボレーターであるアマンダ・ハーレックがファッションエディターとして参画しました。この写真に添えて、アマンダはカールの記憶を鮮明に蘇らせる魔法のような回想録を書き上げてくれました。これ以上ないほど感謝しています。

過去と未来を同時に見つめること──これこそがカールのやり方。そして、2つ目の記念すべきポートフォリオは、彼が築いたヘリテージを未来へと受け継ぐものです。10人のデザイナーたちにカールにインスパイアされたルックを作ってもらうという、カールも認めたであろう、複雑さと野心に溢れたプロジェクトでした。私たちはその素晴らしい作品の数々を、カールがシャネルのコレクションを何度も発表したパリのグラン・パレに持ち込みました。大規模な改修の最中にありましたが、壮麗なボザール様式の建築美の前に、写真家のアニー・リーボヴィッツとファッションエディターのアレックス・ハリントン、そしてシャローム・ハーロウナオミ・キャンベルケンダル・ジェンナーなどのトップモデルたちが集ったのです。

アニーは、一度見たら忘れられないファッション、ドラマティックさ、過去と未来がぶつかり合う感覚など、カールのすべてを写真に収めました。彼女の写真には映画のようなスケールがありながらも、同時に親密さもあり、私はただただ感動しました。なぜなら、彼らはカールをよく知るモデルやデザイナー(そして一匹のとても有名な猫、シュペット)であり、他の多くの人と同じように、彼の友情、メンターシップ、歓びと好奇心、彼を取り巻く世界へのあくなき関心から恩恵を受けた人たちだからです。カールへの賛辞は、人生そのものへの賛辞のように感じられ、最もピュアな形でのセレブレーションとなりました。私たちは皆、彼をとても恋しく思っています。

Text: Anna Wintour Adaptation: Motoko Fujita
From VOGUE.COM