5月10日(現地時間)、ストックホルムで幕を開けたビヨンセの「ルネッサンス」ワールドツアー。約5年ぶりということもあり、全57公演の最初の地で繰り広げられた圧巻のパフォーマンス、そして唯一無二のオートクチュールピースの嵐がインターネットを席巻中だ。
シオナ・トゥリーニがスタイリングを手がけたステージコスチュームには、ホログラフィックやリフレクティブ加工を通じて“光”と“色”が巧みに表現されている。これはダンスミュージックとクィアカルチャーへオマージュを捧げ、テクノとボールルームのサウンドを取り入れたアルバムの世界観を見事に体現するもの。パフォーマンスの衣装において、彼女の右に出るものはいない。
紫外線を当てると色が変化するドレスはアンリアレイジ(ANREALAGE)による一着で、2023-24年秋冬のショーでも話題となったデザインだ。一方、ジョナサン・アンダーソンがデザインしたロエベ(LOEWE)のビジュー付きボディスーツは、2022-23年秋冬コレクションで発表されたルックをアレンジしたもので、赤のネイルをアクセントにした芸術的なハンドモチーフが目を引く。
オリヴィエ・ルスタンがデザインしたバルマン(BALMAIN)のカスタムピースは、パールだけで飾られたコルセットが彼女の美ボディを引き立てていた。このルックは、ルスタンとビヨンセが今シーズン初めに発表したコラボレーションと同じく、ボールルームを意識したものだ。過去にテニスボール柄のイエローガウンを制作したことで注目を集めたロンドン発のデヴィッド・コーマ(DAVID KOMA)は、美しく光を反射するホログラムドレスを手がけた。
そしてこの夜一番のアクセサリー的存在だったのが、ショーの壮大なフィナーレに登場した一頭の馬。ビヨンセはこの煌めくスパンコールで飾られた馬から飛び立ち、宙を舞った。ミュグレー(MUGLER)のケイシー・カドワラダーがデザインしたカスタムボディスーツと、1997年春夏コレクションにインスパイアされたヘッドピースにも熱視線が注がれた。
また、このアルバムの革新的なヴィジュアルでは、アヴァンギャルドなオートクチュールの数々をフィーチャーしており、2分弱の「I'm That Girl」のティーザーでは、スキャパレリ(SCHIAPARELLI)やバレンシアガ(BALENCIAGA)などによる十数種類のカスタムルックを目にすることができる。ビヨンセのファッションの快進撃は留まるところを知らない。
ビヨンセはツアー衣装に自ら手を加えるのが好きで、ある都市で行われる公演のためだけにルックを特別に用意することもある。9月27日のニューオリンズでのツアー終了まで、彼女がどんなコスチュームとパフォーマンスを見せてくれるのか、しばらく目が離せなさそうだ。
Text: Andé-Naquian Wheeler Adaptation: Motoko Fujita
From VOGUE.COM
昨年7月に、6年ぶりのスタジオ・アルバム『ルネッサンス』をリリースしたビヨンセ。そのアルバムをオリヴィエ・ルスタンがヘビロテして聴いていたことから始まったというクチュール・コレクション。大胆かつ官能的でエンパワメントなルックをご覧あれ。

