長きに渡り、ランウェイではスリムなモデルたちにスポットライトが当てられてきた。近年はボディインクルージョンの動きが広がりつつあるように思えたが、2023-24年秋冬シーズンにニューヨーク、ロンドン、パリ、ミラノで開催された219のブランドで、プラスサイズのモデルを起用したブランドはわずか17に過ぎなかったと『VOGUE BUSINESS』が報告している。この統計はファッション界におけるサイズの多様性と、女性のリアルな身体への配慮が未だ欠如していることを反映しているようだった。
中でも「カーヴ」または「ミッドサイズ」と呼ばれるモデルの多くは、より幅広い層の人々を代弁する存在でありながらも、コレクションのサンプルサイズにフィットできず、「プラスサイズ」にも該当しないため、表舞台に出ることがほとんどないという現実もある。しかしそれでも彼女たちは数々のチャレンジを乗り越え、前進することを諦めない。
アシュリー・グラハムはUS版『VOGUE』の単独表紙を務めた一方、パロマ・エルセッサー、プレシャス・リー、ジル・コートリーヴの3人はUK版で「新時代のスーパーモデルたち」と称され、ユミ・ヌーはアジア系モデルとして初めてアメリカのスポーツ月刊誌『スポーツ・イラストレイテッド』の水着特集号に登場するなど、カーヴィー&プラスサイズモデルたちの活躍は目覚ましい。しかし、いくら彼女たちの知名度が上がったとはいえ、真のボディインクルージョン実現までの道のりは遠い。
エルセッサーはUS版『VOGUE』2021年1月号の表紙を飾った後、インスタグラムを更新。ファッション界にこう強く求めた。「私のような身体や経験がもはやラディカルでもなく、変わったことでもなく、珍しいことでもなくなるまで、この勢いを決して止めないでほしい。私は、より大きな身体、黒い肌、障がい者など、メディアに無視され続けてきたすべてのアイデンティティを見たいのです」
ここでは、業界の美の基準に新風を吹き込み、ボディポジティブを推し進める18人をご紹介。ランウェイや雑誌の表紙などで見かけたことがある人も多いと思うが、今こそ彼女たちの名前を押さえておこう。
1. パロマ・エルセッサー/Paloma Elsesser
エージェンシー:IMG
出身地:カリフォルニア州ロサンゼルス
2020年のモデル・オブ・ザ・イヤーを受賞したパロマ・エルセッサーは、最も著名なプラスサイズモデルのひとり。すでに何度も『VOGUE』のカバーガールを務めており、フェンディ(FENDI)からアレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)まで、トップブランドのランウェイの常連にまでのし上がっている。
2. アシュリー・グラハム/Ashley Graham
エージェンシー:IMG
出身地:ネバダ州リンカーン
モデルとしての才能とTVパーソナリティとしての成長により、一躍有名になったアシュリー・グラハム。『スポーツ・イラストレイテッド』の表紙を飾った初のプラスサイズモデルとして話題をさらい、同年『フォーブス』の「30アンダー30」に選出された。
3. プレシャス・リー/Precious Lee
エージェンシー:IMG
出身地:ジョージア州アトランタ
エルセッサーと並んでその名を轟かせているのが、プレシャス・リー。メットガラからジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)のオートクチュールランウェイ、マーク ジェイコブス(MARC JACOBS )のフレグランス広告まで、今ではありとあらゆる場面で見かけるように。
4. ジル・コートリーヴ/Jill Kortleve
エージェンシー:The Movement、IMG、Muse、Women、Milk
出身地:オランダ・ヘールレン
アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)の2019年春夏ショーでデビューを果たしたジル・コートリーヴ。その1年後、2010年のクルーズショー以来、初めてシャネル(CHANEL)のランウェイを歩いたカーヴィーモデルとして脚光を浴びた。「今必要とされる変化が起きていて、その一部になれたことを誇りに思うし、ありがたく感じている」とインスタグラムに綴っている。
5. テス・マクミラン/Tess McMillan
エージェンシー:IMG
出身地:テキサス州ボーモント
レッドヘアと乳白色の肌が目を引くテス・マクミラン。グッチ(GUCCI)のランウェイ、バルマン(BALMAIN)、M・A・C(メイクアップ アート コスメティックス)、キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)、ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)のキャンペーンに参加している。
6. セリーナ・ラルフ/Celina Ralph
エージェンシー:The Society、Elite
出身地:イギリス・ヘイスティングス
プッチ(PUCCI)、アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)、マックスマーラ(MAX MARA)などトップブランドの最新ショーや、フランス版『VOGUE』、『ハーパース・バザー』、CRファッションブックのエディトリアル撮影など、多忙を極めているセリーナ・ラルフ。ニーマン マーカス(NEIMAN MARCUS)のプレフォール広告にもフィーチャーされている。
7. キャンディス・ハフィーン/Candice Huffine
エージェンシー:Next、Chic
出身地:ジョージタウン、ワシントンD.C.
再始動したヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)の「エンジェル」として、広告のいくつかに出演しているキャンディス・ハフィーン。写真家のスティーブン・マイゼルがイタリア版『VOGUE』のカバーで彼女を撮影し、2015年のピレリ・カレンダーでも彼女を指名。ハフィーンは、彼のサポートによってキャリアをスタートさせることができたと語っている。
8. ユミ・ヌー/Yumi Nu
エージェンシー:The Society、Elite
出身地:ニュージャージー州エングルウッド
日本人の血を引くユミ・ヌーは、アジア系アメリカ人として初めて『スポーツ・イラストレイテッド』水着特集号の表紙に登場。2021年のブレイクアウト・スター候補である弱冠24歳の彼女は、サイズ展開が豊富でサステナブルなブランド、ブルーキー(BLUEKI)を手がける傍ら、他にも数多くの功績を挙げてきた。US版『VOGUE』2021年9月号ではベラ・ハディッド、プレシャス・リー、カイア・ガーバーらとともに、『VOGUE JAPAN』2022年4月号では単独でカバーを飾った。
9. デヴィン・ガルシア/Devyn Garcia
エージェンシー:DNA
出身地:フロリダ州マイアミ
ジャックムス(JACQUEMUS)のランウェイで存在感を示したデビン・ガルシア。たった1年の間に『ハーパーズ・バザー』、『i-D』、『ポーター』のカバーガールを務め、これからの飛躍に期待が高まっている。
10. ホリー・ローズ・エメリー/Holly Rose Emery
エージェンシー:Next、Milk、pavé、Priscilla's、Red Eleven
出身地:ニュージーランド・オークランド
雑誌とランウェイの両方で成功を収めているホリー・ローズ・エメリー。ヴァレンティノ(VALENTINO)のオートクチュールショーを歩き、ジェマ・ウォードとともにオーストラリア版『ハーパース・バザー』の表紙に出演。また、2022年のカルバン クライン(CALVIN KLEIN)の広告など、注目度の高いキャンペーンにも起用されている。
11. アルヴァ・クレール/Alva Claire
エージェンシー:IMG
出身地:イギリス・ロンドン
2020年ブレイクアウト・スター候補のアルヴァ・クレール。今年だけでも複数のUK版『VOGUE』に登場し、マーク ジェイコブス(MARC JACOBS )のカプセル型フレグランス「デイジードロップス」の広告にも起用された。また、ジル・コートリーヴとプレシャス・リーとともに、ヴェルサーチェ(VERSACE)のランウェイを歩いた初のプラスサイズモデルとして歴史に名を刻んだ。
12. ローレン・チャン/Lauren Chan
エージェンシー:JAG、IMM、LaDrew
出身地:カナダ、オンタリオ州ブラントフォード
クリスチャン・シリアノ(CHRISTIAN SIRIANO)やピーター ドゥ(PETER DO)のランウェイで見かけるローレン・チャンは、元『Glamour』のエディターでアメリカ雑誌編集者協会賞を受賞した経歴の持ち主。自身がプロデュースするプラスサイズファッションブランド、ヘニング(HENNING)の設立と同時に、モデル業に復帰した。その他にも、全米摂食障害協会(National Eating Disorders Association)のアンバサダーや、モデルの権利擁護団体「Model Alliance」のメンバーとして、アドボカシー活動にも精力的だ。
13. エヴァ・ハリリ・キア/Ava Hariri-Kia
エージェンシー:Next
出身地:ニューヨーク州ニューヨーク
幼い頃からファッションが好きだったエヴァ・ハリリ・キア。スコットランドのセント・アンドリュース大学に在籍中、キャサリン皇太子妃がウォーキングを披露したことでも知られるチャリティファッションショー「Don't Walk」を企画した。Z世代向けアンダーウェアブランドのパレード(PARADE)のモデルを務め、『i-D』のエディトリアルに登場するなど、活動の場を着実に広げている。
14. ジョージア・プラット・ホリバー/Georgia Pratt Holiber
エージェンシー:IMG
出身地:ニュージーランド・オークランド
イタリア版『VOGUE』の表紙に登場し、クリスチャン・シリアノ(CHRISTIAN SIRIANO)やピーター ドゥ(PETER DO)のランウェイを歩いたジョージア・プラット・ホリバー。2021年にはスローファッションを基軸とした自身のブランド、ヒルダ エロート(HILDA EREAUT)もスタートさせている。
15. アジョク・ダイン/Ajok Daing
エージェンシー:The Industry、Oui、Milk、Fabbricia、Uno
出身地:イタリア・ミラノ
シャネル(CHANEL)、ニナ リッチ(NINA RICCI)、マックスマーラ(MAX MARA)のランウェイを闊歩し、フランス版『VOGUE』のカバーガールともなったアジョク・ダイン。その勢いは加速するばかりで、業界の新星として注目されている。
16. ジョセリン・コロナ/Jocelyn Corona
エージェンシー:Muse、Milk、Mad
出身地:メキシコ・グアダラハラ
ランウェイとエディトリアルの両方で成功を収めているメキシコ人モデルのジョセリン・コロナ。クリスチャン・シリアノ(CHRISTIAN SIRIANO)やピーター ドゥ(PETER DO)などのショーを歩き、最近ではフェンティ ビューティー(FENTY BEAUTY)のキャンペーンでデビューした。
17. レスリー・シドラ/Leslie Sidora
エージェンシー:Ford、Milk、Natural
出身地:フランス・パリ
スウェーデン版『ELLE』からブラジル版『ハーパース・バザー』まで、グローバルに躍進するレスリー・シドラ。リアーナによるサヴェージ X フェンティ(SAVAGE X FENTY)のショーに出演したことでも知られる。
18. デニース・ビドー/Denise Bidot
エージェンシー:Muse、TESS、CAA
出身地:フロリダ州マイアミ
クロマット(CHROMAT)の2015年春夏ショーでブレイクして以来、同ブランドのランウェイで馴染みの顔となっているデニース・ビドー。他にもリーバイス(LEVI’S®)、オレイ(OLAY)、サヴェージ X フェンティ(SAVAGE X FENTY)などのキャンペーンにも出演している。
Text: Hannah Jackson Adaptation: Motoko Fujita
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