黒いショートヘアの男性モデルが、ミッドヒールの黒いシューズ、アイボリー色のシルクカラーレスシャツ、白いパンツに白シャツという装いで、ランウェイに登場した。アンサンブルをまとめ上げていたのは、「AK」の文字が刺繍された、イタリアのトリコロールカラーのベルト。それはただのルックではなく、ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)のこれからに関するヒントだ。「またぜひミラノでメンズウェアを発表したいです。準備が整えば、早くても6月にはコレクションに参加できると思います」とアンドレアス・クロンターラーはバックステージで語った。
メゾンが最後にメンズ単独のショーを行ったのは、2016年6月。それはかつてのウィメンズライン、ヴィヴィアン・ウエストウッド レッドレーベル(VIVIENNE WESTWOOD RED LABEL)と統合される前のヴィヴィアン・ウエストウッド マン(VIVIENNE WESTWOOD MAN)のショーで、2019年以降、メンズウェアはミラノではなくロンドンから、ルックブックや映像などの形式で発表されている。「メンズウェアをもっと披露しなければと思っています」とクロンターラーは言う。
紳士服のコードを分解し捧げる、イギリスへの小さなオマージュ
伝統的な英国紳士服のコードは、地位や身分を示すものとして進化してきた。そしてそのコードをウィットに富んだ表現で積極的に打ち壊すことは、昔からウエストウッドの反骨精神あふれる創作アプローチの重要な一部をなしていた。また彼女は、再解釈したメンズウェアのコードをしばしばウィメンズウェアへ落とし込み、今季はクロンターラーもそれに倣った。コレクションに取り入れられたメンズの要素は、“イギリスらしさ”への小さなオマージュでもあると言うクロンターラーは、ロングネクタイ、裾が吊り上がったスカート、極限までタイトなモールスキン素材のパンツを展開し、典型的なイギリスらしさを探求した。
「CHAOS」と象られたチョーカーがあったように、今回のコレクションは文字通り混沌としていたが、熟考されて作り上げられたものでもあった。ハリスツイードといったヘリテージ生地から仕立てられた型破りなテーラードピースに、手編みに見せかけたニット、ビビッドなプリントのスキーウェア、クリノリンを合わせた豪勢なドレス、ブロケード生地のミニドレス、インパクト大のシャギーなガウンとお揃いのロングブーツなど、私たちが慣れ親しんだウエストウッドらしさを感じる、傑出したコレクションをクロンターラーは送り出した。ミラノのメンズコレクションに向けて、メゾンがどう進化するかに注視したい。
ヴィヴィアン・ウエストウッド 2025-26年秋冬コレクションをすべて見る。
Text: Luke Leitch Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.COM
READ MORE