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「陳情令」で大ブレイクのワン・イーボー、初主演作『無名』が公開へ──その人気の秘密を探る

2019年にブロマンス時代劇ドラマ「陳情令」が世界中で大ヒット。一躍時の人となったワン・イーボー(王 一博)が、初主演する映画『無名』が5月3日から日本公開される。中国での圧倒的な人気はもちろん、今やアジアでもっとも注目を集める若手俳優の一人となったワン・イーボーが愛される理由を探る。

初主演映画『無名』では、1940年代を生きたスパイ役に挑戦

ワン・イーボーのクールな佇まいとポーカーフェイスに痺れる初主演映画『無名』は5月3日公開。

Photo: Copyright2023© Bona Film Group Company Limited All Rights Reserved

1990年代の香港映画ブームを牽引した中国映画界のスター、トニー・レオンの静かな熱演にも注目したい。 Photo: Copyright2023© Bona Film Group Company Limited All Rights Reserved

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『無名』はワン・イーボー(王 一博)の念願の映画初主演作。1940年代の上海を舞台に、激動の時代を生きる登場人物たちが、自身の任務と思いを全うしようとするスパイアクションサスペンスで、イーボーは中国映画界の重鎮トニー・レオンとダブル主演をはたしている。

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本作でワン・イーボーが演じるのは中国国民党のスパイ、イエ。しかし、そこに中国共産党から送り込まれたスパイたちも参戦し、壮絶な騙し合いが行われる。ピシッとセットされた黒髪と、抜群のスタイルでスーツを着こなすワン・イーボーの姿はうっとりするほどにスマートだが、一方で、生きた海老を食べたり、葉巻を吸ったり、日本語のセリフにも挑戦するといった、これまでにない彼の姿を観ることができる。

映画の後半にはトニー・レオンとの壮絶なアクションシーンが待ち受けているが、実はワン・イーボーは大先輩であるトニー・レオンに手を出すのは、たとえ演技とはいえ、ありえないほどのプレッシャーだったそうで、アクション指導者からのアドバイスを受けて、やっと拳を振り上げることができたという。礼儀正しいことで知られる、いかにも彼らしいエピソードと言えるだろう。物語は過去と現在が頻繁に交錯するため、やや難解な構成ではあるが、話が進むにつれて徐々に伏線が回収されていくのでご安心を。ラストでパズルがぴたりとはまる快感が味わえる。

身体能力の高さと真面目な性格でTVトークショウのMCの座を獲得

2015年、北京で開催されたイベントに出席したUNIQのメンバーたち。

Photo: VCG/Getty Images

現在26歳のワン・イーボーの才能が、世の中に初出しされたのは彼が13歳のとき。中国でヒップホップのダンスバトルに出場してベスト16に入賞。その後、15歳でYUE HUA Entertainment(2009年に中国・北京で設立された芸能プロダクション)にスカウトされる。15歳から17歳までの2年間を練習生として韓国で過ごしたのち、イーボーは2014年にアイドルグループUNIQのメンバーとしてデビューをする。

しかし、2016年に「限韓令」(中国政府が韓国への団体観光客の渡航、韓国のドラマやアーティストの公演を禁止する措置)によって中国での活動が制限されたことから、ソロ活動に転向。同年の4月、若手男性芸能人15名の中からレギュラーMCを選出する公開オーディションで、バラエティ番組「天天向上(原題)」のレギュラーメンバーに抜擢される。

2017年、ビルボード主催のイベントに出演。

Photo: AFLO

中国の湖南省の衛生チャンネルで放送されているこの番組は、当時同国のバラエティ番組の中で圧倒的な人気を博しており、数名の司会者たちで繰り広げるトークがウリだった。ところが、ワン・イーボーはシャイな性格で、口下手。正直すぎるため、その場を取り繕うようなコメントを言えず、トークに詰まってしまうこともしばしば。しかし、そんな嘘をつけない正直なイーボーの姿が逆に愛され、ファンたちは彼が言葉に詰まる姿を切り取った動画を、SNSに多数投稿している。

ではなぜ、口下手な彼がオーディションで選出されたのか? その理由として、身体能力の高さと(アスリートなどがゲストに登場した際に、彼が一緒に実演できるため)、収録前にほかのオーディション出願者たちがふざけている間、イーボーだけは一人振付の確認をしたり、収録後のスタジオ掃除を手伝うなどその真面目さが認められたからだという声が多い。2021年に彼が番組を去ってから、番組の視聴率が下がっていることも話題になった。

ダンスにスケートボード、そしてバイクレースなど趣味はとことん極める派

2018年には、日本でJO1やINIを誕生させたことでも知られる「PRODUCE 101」の中国版「創造101」に、女性グループのダンスメンターとして参加。40憶回という視聴回数を誇った同番組で、イーボーは自身がダンサーとしてトレーニングをしていた初期に胸の痛みや動悸を伴う心臓の炎症である心筋炎を患い、入院を余儀なくされた過去を激白。退院するや否やダンススタジオに戻り、遅れを取り戻すために1日6時間の練習をしたという。メンターを務めていた同番組で、女の子たちと踊ったダンスは爆発的人気を博し、彼のファンがさらに激増したそうだ。

また、幼いころからスケートボードにも夢中で独学で練習を続け、2019年にはスケートボードのバラエティシリーズ「極限青春(One more Try)」に出演。空き時間には練習を欠かさず、空港などでもスケートボードを手にしている姿がパパラッチされていた。2022年には中国最大のスポーツウェアメーカーのアンタ(ANTA)のブランドアンバサダーを務め、スケートボードのドキュメンタリー「Be Bold, Go Skate」にも出演している。

2020年のレースでは2位につけていたものの、途中で転倒するアクシデントに見舞われてしまった。

Photo: VCG/VCG via Getty Images

さらに2017年にはバイクと出会い、2019年の1月にはプロレーサーの資格も取得。ヤマハ・チャイナ・レーシング・チーム(Yamaha China Racing Team)に所属し、アジアロードレース選手権(AARC)の新人部門で優勝をはたしている。趣味を趣味で終わらせず、高いパフォーマンスを追求するのがワン・イーボーなのだ。

過激なファンの行為に反応。キャリアは絶好調

シャオ・ジャン(肖 戦)と共演したファンタジー時代劇ドラマ「陳情令」で、その人気を不動のものにした。

Photo: © Netflix/Courtesy Everett Collection

2022年にはファンに向けて、「ホテルのドアをノックしてきたり、車に位置追跡装置を仕かけたりするのをやめてほしい」というコメントをWeiboで発信したワン・イーボー。人気が高まるにつれて、ファンの行動もエスカレートしてしまったようだが、そんなハプニングにも折れることなくキャリアは絶好調だ。

2024年3月、パリで開催されたラコステの2024-25年秋冬コレクションにて。

Photo: Stephane Cardinale - Corbis/Corbis via Getty Images

2023年には、『無名』と『ボーン・トゥ・フライ』で第20回映画チャンネルメディア大賞にて主演男優賞を受賞。主演3作目となるサクセスストーリー『熱烈(原題)』も第36回金鶏賞で観客賞を受賞するなど、役者業の評価も高まる一方だ。ファッションではラコステ(LACOSTE)のアンバサダーにも就任。マルチな活躍を続けるワン・イーボーからますます目が離せない。

Text: Rieko Shibazaki