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「XGと見る未来」──JAKOPS(SIMON) x 竹田ダニエル スペシャルトークの全容をレポート

VOGUE ALIVEのコンテンツとして開催された、XGALXのエグゼクティブプロデューサーJAKOPS(SIMON)とカルチャー・ライター竹田ダニエルによるトークセッション。その白熱した対話を再録──「ガールズグループを作るっていう気持ちが実はまったくなかった」と、JAKOPS(SIMON)が語る真意とは?

セッション冒頭では、メンバーたちからのメッセージ動画も

VOGUE ALIVEの来場者向けにXGのメンバーたちが寄せてくれたメッセージ動画が冒頭で上映され、トークセッションがスタート。司会進行は、VOGUE JAPAN2月号のカバーストーリーでメンバーへのインタビューを担当した弊誌ビューティー・エディターの三谷徹が務めた。

JAKOPS(SIMON):ご挨拶が遅れました。サイモンです。よろしくお願いいたします。こんなかっこいい表紙、写真をありがとうございます。

竹田ダニエル:7月にXGにお会いしたときにも、メンバーのみなさんが本当にかわいく、そして(発散される)エネルギーがものすごくて、それがそのまま画面から伝わっていますよね。

三谷徹:今日は「XGとみる未来」というテーマでお二人にお話を伺っていきたいと思います。XGのプロジェクトを始めて6年ほどが経つと思うのですが、まずはサイモンさんが初めて彼女たちと出会ったときの印象などをお聞かせいただけますか?

出会いはメンバーが小学校高学年や中1のとき

SIMON:2017年から(の付き合い)なのですが、結構あっという間に6年が経ったという印象です。毎日のように一緒に時間を過ごしてきたんですけど、当時メンバーは小学校高学年や中1、本当に若い年齢でして。今考えると、いろいろな才能もちろんあったのですが、最も印象的だったのは、うまく言葉で表現するのが難しいんですけど「めちゃくちゃ良いエナジーを持っていた」ということ。それはすごく鮮明に覚えています。良い子たちでしたし、ピュアで、真面目で、ものすごいエネルギーを持っていましたね。

三谷:竹田さんも実際にインタビューされて、彼女たちからエネルギーを感じましたか?

竹田:私はメンバーのみなさんとほぼ同世代なんですけど、すごく良い意味で意外と“普通の子たち”だというのが大事なポイントかなと思っています。人気が出て有名になっても、セレブだからといって接しづらいということもなく、みなさんとても謙虚で、元気で、一緒にいると互いに手を繋いで歌を歌ったりもしていて。(取材を通じて)そういうかわいらしい一面や自然体の一面を見られたことに、個人的にはすごく感動しました。

三谷:今の“ファミリー”のような雰囲気が生まれるようになったのはどのくらい経ってからなのでしょうか?

SIMON:どうだろう? でも、選抜後、練習生として最初に取り組んだものがものすごい厳しい合宿だったんです。夢に対して諦めない精神力などを養うため、いろいろハードな試練を前にしても諦めずになんとかそれらを乗り越えて頑張ってもらおうとコミュニケーションを重ねて。そのなかで自然と絆のようなものは生まれましたね。とにかく、「もう一度やってください」と言われても「無理です」っていうくらいの密度の濃い時間、そしてとても長い年月を費やして、正解がない、前例のないことをイメージしながら、彼女たちも私も楽しく戦ってきたので。そうやって積み重ねてきたものを通じて、信頼関係は徐々に強くなったのかなと思います。

XGが持つ革新性の根源にあるもの

ステージでXGとのエピソードを披露するXGALXのエグゼクティブプロデューサーJAKOPS(SIMON)さん(右)。※竹田ダニエルさんはお顔出しをされていないため写真は非掲載。

三谷:竹田さんはXGのサウンド面や音楽性のどういった部分に新しさを見出していらっしゃるのでしょうか。

竹田サイファーのラップの動画を見て、「日本からこういうグループが出るとは」という感覚を抱いたのが第一印象でした。その後、毎回新しい曲を出すたびに世界観も全然違うのに、ものすごく説得力があると感じたんです。説得力というのは、例えば連帯感からなるものすごく揃ったダンスなのに、各メンバーに個性があるところだったり。この前もXGのダンスの動画を見ていたら、「どのメンバーを見ても面白い」というコメントを見つけて。確かに、踊っていても、歌っていても、ラップをしていても、メンバーそれぞれに個性があり、そしてその個性を引き立てるような振り付けだったり曲の構成になっているんですよね。トラックの構成にしても、さまざまなジャンルを横断してとても冒険的なことをされているし、リリックも、若い女の子だったら恋愛中心のかわいいものにしてもおかしくないところが、やっぱりずっとかっこいいものを貫いていたりだとか。宇宙的なテーマや新しいものを試す様子も見られますし、プロデューサーのセンスもすごいなとずっと前から思っていました。

SIMON:(そうおっしゃっていただけて)もう本当に感謝しかないです。実はXGのプロデュースを決めた瞬間、まずガールズグループを作るっていう気持ちがまったくなかったんです。性別的には女性であるものの、世界で一番かっこいいグループを作るっていうことが目標だったので。もちろん女性ならではの魅力という部分はちゃんと研究して、メンバーのみんなが持つ美しさを打ち出すのは当たり前なのですが、ガールズグループという固定観念に囚われたくはなかったというか。なによりも(リスナーを)驚かせるという点を理想としていたので。トレーニング期間はとにかく音楽に向き合う姿勢を磨くために、文化に対する勉強というとちょっと固くなりますが、過去の音楽やアーティストと向き合うことに比重を置いていました。あらゆる情報を楽しくオタクのように互いにシェアし合ったりっていうところは常にやってきたことでした。

三谷:僕もXGをインタビューさせていただいたときには、クリエイティブかつハイセンスな7人がたまたま女の子だったという印象を受けました。もしかしたら竹田さんも同じように感じていらっしゃるかなと思うんですけど、いかがでしょうか。

竹田ドキュメンタリー映像などを見ると、ダンスの練習の選曲からして、Ciaraの「Level Up」や、Ariana Grandeの「God is a woman」など、すごく強い女性性を感じさせるパワフルなディーバの楽曲を練習させているところがとても印象的で。一方で、インタビューなどでは、メンバーたちが好きなアーティストとして、BeyonceMichael Jacksonの名前を挙げています。アイコニックなジェンダーに囚われないっていう言い方は違うかもしれないんですけど、人間として、パフォーマーとして圧倒的な存在感を放つ人たちへの憧れ、というのを抱いているのかなと感じます。

三谷:いろいろな音楽をサイモンさんは彼女たちに届けていらしたと思うんですけど、具体的にどんな方法で新しい音楽を伝えてきたのでしょうか。

SIMON:自分もアメリカで生まれて、お父さんが韓国人でお母さんが日本人で……。多様な文化に恵まれていたなと今改めて強く感じています。そして本当にたくさんの音楽を聞いて育ったんですね。当時自分が聴いていた素敵な音楽って(若い世代にも)伝えたいじゃないですか。リアルに自分が感じた音楽の素敵なところだったりストーリーだったり、そういったものを身近にいるデビュー前のメンバーたちに伝えていきたくて。なので、いつもスタジオとかでも、BGMに流す曲がそういった(※当時サイモンさんが聴いていた)曲だったりしたので、幅広く時代とか空間とか関係なく、音楽に向き合って。たまにジャズやクラシックとかも聴いたりしていました。歌やダンスを続けているとやっぱり疲れてくるので、そんなときは「ボサノヴァかけると落ち着くよね」とか。そういういろんな音楽のサウンドの周波数を感じながら生活をしていたっていうのが日常でしたね。

XGがアメリカのZ世代と共鳴する理由とは?

XG - TGIF (Official Music Video) - YouTube

三谷:いろんな栄養素を得て、新しい音楽をつくっているXGですが、さまざまな世代に人気ではあるものの、特にZ世代がどこに共鳴しているのかっていうのを竹田さんにお伺いしたいと思います。

竹田:主にアメリカのZ世代の話をしますと、例えばTikTokってアプリ上にそもそも自分の好みに合ったものが流れてくるわけですよね。そうすると、K-POPが好きな人、R&Bが好きな人、HIPHOPが好きな人、Y2Kの雰囲気が好きな人の、すべてのフィードにXGのTikTokが流れてくる。そして、細かいところで言えば、英語で書かれているキャプションが、すごい今風の面白いものだったりとか、SNSも作られた感じのかっこつけたいわゆるアイドル像じゃなくて普通のティーンがつくっているインスタみたいな要素があったりだとか……親近感があるっていうのがアメリカのSNSを駆使するZ世代にとってはすごく大事なので、そういう意味でも安心して応援できるグループだなって思う人が多いのだろうと感じます。

それに加えて、クィアカルチャーとか、アジア系アメリカ人のカルチャーとかそういうマイノリティの文化が隆盛してきている中で、やっぱりアジア系アメリカ人にとっても共感できるのがXGの音楽なのかなと。「TGIF」でもヴォーギングなどのダンスカルチャーも取り入れたりと、すごくクィアカルチャーに近い要素もあって。音楽性の面白さ、新しさ、アジア人の女の子だからといって弱いとかかわいいとかじゃなくて、全然新しいものに挑戦していたりとか、結構リアルなY2Kな世界観だったりとか、そういうところすべてが総合的に評価を得ていて、(Z世代に)広まりやすい理由なんだと思います。

三谷:「TGIF」ではヴォーギングを取り入れていたのが印象的でした。日本と比べてアメリカの方がその知識が高い人が多いと思うのですけど、「TGIF」で彼女たちの認知度がさらに上がったりとか、そういう温度感の変化も感じられましたか?

竹田:やっぱりリアクション動画とか見ているとすごいですよね。「TGIF」の動画をずっと見てただただ奇声を発している人の動画もありますし、そういうリアクション動画を見たり、メンバーたちのダンスの練習の動画とかを見たりした人たちの、「こんなに面白いフォーメーションの作り方のグループ、見たことない」とか「どのメンバー見ても面白い」とかそういうリアルな反応を通して、(ファン層が)どんどん広がっているイメージはありますね。

三谷:いろんなジャンルの音楽をXGは発信されていると思うんですけど、今後どんな展開をされるのでしょうか。サイモンさんに教えていただけたらと思います。

SIMON:まず、その前に竹田さん、ありがとうございます。ヴォーギングとか、実はそういう細かいところを狙っていたので、そこを指摘していただけてうれしいです。XGは多様な魅力、実力、コアな音楽を愛するすごく良いエネルギーを持っているので。今後の展開としては、若いメンバーが持つすごくいいパワーをみなさんに伝えていきたいと思っています。頭の中にも具体的なプランはありますし、実はもう準備しているところもあるんですけど……来年に限らず年内にも何か発表できるかもしれないので、ぜひこれからもチェックしていただけたらと思います(笑)。

デビュー曲「Tippy Toes」の知られざる裏エピソード

三谷:せっかくのこの貴重なトークセッションですので、会場のみなさんからも質問を頂けたらと思います。

質問者1:デビュー曲に「Tippy Toes」を選んだ理由を教えてください。

SIMON:実は事前にデビュー曲として決まっていた曲は「Tippy Toes」じゃなかったんです。今日ここで初めて言うんですけど。ただ、本当に突然、デビュー曲は絶対「Tippy Toes」だと思ったんです。私たちのエネルギーを保ちながらも、ある種のカリスマ性や余裕が出る「Tippy Toes」がデビュー曲として一番適切だって思って。今は、デビュー曲じゃなかったあの曲に直前で切り替えたことをまったく後悔していませんし、あの曲でデビューしてよかったなって思っています。いつかまた時間を経て、「Tippy Toes」ってすごいデビュー曲だなって未来でXGを知った方に思ってもらえたらうれしいですね。

XG - Tippy Toes (Official Music Video) - YouTube

三谷:竹田さんは今の裏話を聞いていかがですか。

竹田:自分もプロデューサーだったらあの曲にするかなって思いますね。歌詞からしても「みんなを爪先立ちにするほど楽しみにさせてあげるよ」って言う内容であることもすごいセンスだと思うし、そもそも振り付けとにしても、1サビ終わりのダンダンダンというところで、あの動画だけでもすごい回っていたし、すごいレジェンダリーなデビューだってすでに言われていると思いますね。

SIMON:ビートだったりウィスパーだったり、強く声を発していないといったアティテュードだったり……歌詞にしても「私たちが登場したので、みんな緊張してください」っていうかなりの自信満々なトーンなのですが、それが一番伝えたかったメッセージでもあります。そしてK-POPかJ-POPかで、私たちは偉そうにX-POPですなんて言ってはいるんですけど、この場を借りて、K-POPを築いた諸先輩方とJ-POPを築き上げた業界の方々にまず大きな尊敬の意を表したいです。

ただ、ガールズグループはお金にならないとか、そういった固定観念や公式みたいなものへの不満があったんです。なので、そうじゃないと証明するためにアウトプットで見せるっていうのが自分の中の原動力でした。リリックは英語で別にいいじゃないかとか、いろいろな固定観念を壊していきたいと。いつか絶対に時代はチェンジしていくし、やっぱりアーティストグループの市場は、今は大きく見えても、世界の規模で見ると正直まだマニアックなところがあるとも思うんです。それでもやっぱり、この産業でより新しいものをやりたい。X-POPと言うことで、あえてジャンルにカテゴライズにされないようにしています。そうしたクリエイティブな傾向が、XGのパフォーマンスやコンテンツにフレッシュさを感じていただける理由だったらうれしいです。引き続き頑張ります。

三谷:この会場にも多様な方々が集まっていらっしゃるので、サイモンさんが作る音楽やメッセージが確実に伝わっているんだなと感じます。もう一問質問があれば。

質問者2:サイモンさんが一番影響を受けた音楽家というかアーティストを教えていただきたいです。

SIMONマイケル・ジャクソンです。ハーヴィーと一緒です。

三谷:最後にもう一問、どうでしょう。

質問者3:「XTRA XTRA」で、メンバーを育成していく中で一番うれしかったこと、そして一番苦しかったことを教えていただければと思います。

SIMON:うれしかったのは、多分明日になると思います。今日この後に(トークセッション の翌日に開催された「XG 'NEW DNA' SHOWCASE in JAPAN」の)リハーサルに飛んでいくんですけど、やっとXGっていうアーティストとしてショーケースライブをするっていうのが未だに現実感がないっていうのはあります。

三谷:奇跡的にチケットを取れた方はこの中にいますか? ほぼ全員ですね!

SIMON:(会場にむかって)明日、楽しみにしていてください。あと先ほどの質問に戻りますが、悲しかったのは、「XTRA XTRA」で一緒に汗と涙を流して頑張ってきた練習生の10名の中のXGのメンバーになれなかったメンバーたちに結果を伝えた瞬間ですね。

三谷:竹田さんはそのドキュメンタリーもご覧になっていたと思うんですけど、そのデビューできなかったメンバーに対してはどんな気持ちで見ていましたか。

竹田:すごい責任感のある質問じゃないですか(笑)。やっぱりあれくらいの年齢のときから運命が決まるとか思わされる世の中だと思うんですけど、彼女たちはそれはそれで才能があるし、サイモンさんやメンバーと出会えたことで切り開くことができた道もあるし。受験でこの学校落ちたら終わりとか、この大学落ちたら終わりとか、この就職先行けなかったら終わりっていうわけじゃない。その子たちもその後も好きなことをやっていけたらいいなって思いますし、今でも(XGのメンバーたちと)連絡を取り合ったりとか家族のように接しているっていうことは、今までのアイドル業界の状況とはすごく違うのかなって思いましたね。

三谷:お話を聞いているとXGというグループが、すごくポジティブなエネルギーにあふれているなと感じました。まだまだお話をうかがっていたいのですが、時間が迫ってまいりましたのでこちらで終了とさせていただきます。

XGのエネルギーの源はファンからのフィードバック

SIMON:なんか本当にすみません。緊張してみなさんに有意義な面白い話ができたのかなって心配なんですけど、またこういう貴重な機会があれば、たくさん面白い話ができたらと思います。最も大事なのは、今後もプロデューサーとしてXGをちゃんと支える人になって、引っ張っていく人になって、みなさんを常に驚かせて、楽しませてあげられる人であること。これからもXGをサポートし続けていくので、XGをよろしくお願いします。

竹田:ご存知の通り、サイモンさんは熱意もパッションもすごくある方で、楽屋でも面白いことばかりおっしゃってくださるので、これからもXGに関しても、サイモンさんに関しても、私の方からもいろいろとお伝えできたらと思います。そしてやっぱりXGをはじめ、いろいろなカルチャーのグループや文化が生まれてくるのは、リスナーやカルチャーを摂取する側の人たちのパッションがあるからだと思っています。「愛と連帯」という言葉を私はXGを語るときによく使っているんですけど、XGのファンの方々が「愛と連帯」を広めていくなかで、いろいろなカルチャーや音楽にも興味を持ってくれたらXGもうれしいと思うんです。XGを代弁するわけじゃないんですけど、そのなかでカルチャーがどんどん高まっていくと思うので。そのまま素敵なファンでいていただきたいなって思います。

SIMON:最後にいいですか。本当に、みなさんからのフィードバックを実は一つ一つちゃんと見ているんですね。すごくエネルギーになっています。インスピレーションにもなるし、勇気にもなるし、力にもなっていて。XGにはもちろんですけど、自分にも運営にもスタッフ全員にもすごいパワーになっているので、改めて応援ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。

Photos: Yuki Yamaguchi and Juria Ishi Text: Yaka Matsumoto