BEAUTY / WELLNESS

「セクシー」は誰のため!? ジェネレーションZの回答。

女性ならばセクシーであれ。でも、それって誰のため? 自分のため? ボーイフレンドのため? 社会が女性にそう求めるから? ジェネレーションZの女の子たちは、それまでの女性たちが疑問に思いながらも仕方なく受け入れてきた「セクシー」要請に対し、真っ向から抗いはじめた。このアンチ・セクシーの潮流について、英『インディペンデント』紙のライフスタイルライター、オリビア・ペッターが寄稿する。

ジュリア・ロバーツの脇毛に、ハリウッドは震撼した。Photo: Tony Kyriacou/Shutterstock

1999年、ジュリア・ロバーツが『ノッティングヒルの恋人』のプレミアに脇毛を剃らずに現れた時、周囲の人々は言葉を失った。彼女ほどの女優が、「手入れを怠った」では済まされないほどに脇毛を「放牧」していたという事実に、ハリウッドは震撼したのだ。しかし今、彼女が同じ事をしたとしても誰も驚きはしないだろう。それどころか、少しでも驚いた仕草を見せようものなら「時代遅れ」と揶揄されるかもしれない。なぜなら2019年現在を生きる若い女性たちは、脇毛を伸ばすだけでなく、体毛用のオイルを使って毛を柔らかく保ったり、一本眉のモデルが数々のランウェイを歩いたり、うっすらと毛の生えているビキニラインの写真をインスタグラムに投稿することで賞賛を得たりすることが、当たり前になりつつあるからだ。

これらはすべて、ジェネレーションZがもたらした社会変化だ。彼らはセクシーという言葉の意味を再定義しつつあり、体毛を生やしたままにしておくことが、特に驚くべきことではなくなってきているのだ。

ジェネレーションZとは、1996年から2006年の間に生まれた人々を指す。彼らは思春期にインスタグラム(2010年にサービス開始)に触れた最初の世代であり、ミレニアル世代とは異なり、従来の大手広告代理店がかつての権勢を失い、ボディ・ポジティブのハッシュタグや、ダイバーシティやジェンダー・フルイディティを擁護するSNSキャンペーンが存在する「セルフキュレーション」の世界で育ってきた。

インスタグラムの光と陰。

Photo: Courtesy of Billie

現代の女性は、これまでとは異なる美のあり方を求めている。男性の目を喜ばせるための美でもなく、時代遅れのマーケティング担当者や企業リーダーによって歪められていない、自分たちのための美のあり方だ。

Generation Z: Their Voices, Their Lives』の著者であるクロエ・コンビは、ジェネレーションZにとっての「魅力」とは、実在の人が投稿するリアルな画像によって形成されており、それが女性の美の基準にもよい作用を及ぼしていると語る。

「インスタグラムは、過剰な承認欲求や、それが満たされないことに起因する大きな不安を生み出しているとして、多大な非難を浴びています。確かに、行き過ぎた画像加工や『最高の瞬間』自慢が及ぼす悪影響は深刻です。けれど一方で、インスタグラムのようなプラットフォームによって、私たちは誰でも自分の『メディア』を持つことができた。これによって、これまで一方的に押し付けられてきた美ではなく、より多様で豊かな美が生まれていることは確かです。

Instagram content

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もちろん、フェイスチューンのような写真加工アプリによって、偽りの美が横行していることは事実だ。1億4千万人を数えるカイリー・ジェンナーのフォロワーが、何もないところから突然現れたわけではない。しかし、世界的なトレンド調査会社のスタイラスで消費者製品部門を率いるエミリー・ゴードンが言うように、カイリーのような人たちも、ジェネレーションZの影響を受けてSNSの使い方を改める日が来るだろう。

「一部のセレブリティやインフルエンサーたちの知名度を上げるためなら何をも厭わないというような態度、自己顕示癖は、確実に時代に沿わなくなってきていると感じます。これまでとは異なる方法でSNSと付き合い、有名になるために自らを『性の対象化』することを拒否する新しい世代には、間違いなく響かなくなっているからです」

美しさとは自分らしさである。

こうした変化は、ジェネレーションZとブランドとの関わり方にも影響を及ぼしている。シンクタンクのイレギュラー・ラボの最近のレポートによれば、ジェネレーションZの考える「クール」なブランドとは、「本物」であることだという。つまり彼らは、しなやかな手足のヴィクシーモデルたちを唯一の美の規範として崇めたりはしない。代わりに彼らは、多様な体型や肌の色、身体能力を讃えるリアーナのランジェリーブランド「Savage X Fenty」や、アメリカンイーグルのライフスタイルブランド「Aerie」のようなブランドに共感を寄せている。マーケティングコンサルタントのナンシー・ネセルによれば、ジェネレーションZの定義する美とは「自分らしさ」なのだ。

「ジェネレーションZは、各個人に対してもっとも自分らしくあることを求め、もっとも自分らしく振る舞うことをクールだと認める世代なのです」

Photo: Courtesy of Billie

女性用カミソリブランドのBillieは昨年、「Project Body Hair」と題したキャンペーンを実施したが、その裏にはこうした考え方が存在していたのだ。同社は先月、キャンペーンの一環として『Red, White and You Do You』という短編映画を公開。これは、水着からアンダーヘアを覗かせる自然体の女性をフィーチャーした作品だ。

自分のための選択肢。

この社会通念への挑戦は、当然ながらジェネレーションZのファッションにも影響を及ぼしている。17歳の超人気ポップスター、ビリー・アイリッシュを例に取ってみよう。彼女はステージ上で、ほぼいつもオーバーサイズの服を着ている。その理由は「体型が想像できない服を着ることで、誰からも意見されない」からだ。長らくのあいだ、まことしやかに若い女性の理想とされてきた服装から脱却することで、ビリーのようなセレブたちは、同世代のファンたちに向けて「自分らしいスタイルを確立しよう!」とエールを送るのだ。トレンド調査会社WGSNのエディター、ハンナ・クラッグスは、彼らジェネレーションZが、ストリートウェアブランド興隆を支えていると見ている。

ジェネレーションZが「セクシーさ」という既存価値を拒んだことは革命的に見えるかもしれないが、そもそもセクシュアリティとは、誰かに課される「役割」ではなく、自分たちが自ら決めるものだ。そしてそこには、多様なカタチがあって然るべきだ。ビッグサイズのトラックスーツを着ることも、カミソリを捨てることも、あるいは赤い口紅をつけて官能的なランジェリーを着けることも、自分のためにある選択肢なのだから。

Text: Olivia Petter