BEAUTY / WELLNESS

Z世代との正しいコミュニケーション術とは(前編)【ヴォーグなお悩み外来】

誰もが抱えるものから人には聞けないものまで、あらゆるヘルス&ビューティーの悩みにその道のエキスパートが回答。気がつけば、「最近の若者は何を考えているかわからない」と自分もつぶやくように。そんな人に向けて、第76回は、Z世代がどんなことを考えているのか、その価値観や消費行動を中心に分かりやすくご紹介。SHIBUYA109エンタテイメント 代表取締役社長の石川あゆみさんに話を伺った。

消費で価値を置くのは、コミュニケーション

パンデミックによるオンライン化などで、若者と直接触れ合う機会が激変。Z世代(1990年代中盤から2000年代終盤に生まれた世代を指すことが多い)が何を考えているのか分からないというVOGUE世代も多いだろう。

たとえプライベートでは関わりがなくても、仕事で面接をしたり、あるいは若者世代のサービスや商品を開発するというときに、彼らの価値観を知ることは大切なはず! ということで、Z世代のトレンドや消費価値観に精通している、SHIBUYA109エンタテイメント 代表取締役社長の石川あゆみさんさんに取材した。

Z世代の消費動向を語るうえでまず忘れてならないのは、「コミュニケーションの重視」と石川さんは指摘。「Z世代はモノを所有するよりも、誰かと時間を共有すること、新しいコミュニケーションが生まれることに価値を感じています」

例えばファッションでは、「無機質なカフェに友達と行くから、モノトーンコーデにしよう」という風に、行く場所や会う人によって着るものを決める人が多いのだそう。

お揃いのY2Kファッションで、みんなに仲良しをアピール

最終的にSNSでどういう風にコミュニケーションするかも、Z世代がファッションを楽しむうえで大切なポイント。「友達とテーマパークに行ったことをInstagramに投稿する。そのときに、お揃いのY2Kファッションにすると仲良く見えそう……とか、計算しています。何を誰として、何を買った、だけでは終わらない。それをどういう風に発信するとフォロワーと楽しくコミュニケーションできるか、までが重要なんです。“リアルで楽しい”だけではなく、その楽しさをSNSでも表現したいと考えています」

一部がお揃いの柄や色のファッション“リンクコーデ”で「ホテル女子会」を楽しむのが人気だが、その理由も分かってくるのでは? また、どんな場所やサービス、イベントにもSNS映えを求めるZ世代の気持ちも理解できてくるのではないだろうか。

もちろん、Z世代より上の世代も、会う人やシーンに合わせてファッションを考える。だが同時に、「自分らしいスタイル」を重視し、「ファッションやメイクは自分の自己表現」と捉える風潮があった。

Z世代は「自分らしさ」をどう捉えているのだろう?

「多様性を重んじようという動きがあるなかで、Z世代も自分らしさにはとても敏感。そして、自分らしさを、SNSでの友達の評価から感じていくという側面があると思います。だから、周りの目をすごく気にしている印象がありますね」

失敗したくない、 間違えたくないという思いが強い。

SNS上でどう思われるかを強く意識する。加えて、使えるお金が限られていて、デジタルネイティブがゆえの高い情報収集スキルがある。そのため、「失敗したくない」という意識が非常に高いのも、Z世代の特徴だと石川さんは話す。

「ファッションやメイクにしても、スイーツを食べに行くにしても、インスタ映えして、みんなから確実にいいね! をもらえそうなものや場所を選ぶという人が多いですね」

加えて、下調べも抜かりない。

「例えば遊びに出かけるなら、行き先の情報を収集して『こういうことを体験する』と事前に細かく設定し、その答え合わせをしに行く、という傾向があると思います。場所を選ぶときも、このパン屋に行きたいというピンポイントの目的地が合って、そこにまず行こうと。そのあと、周辺にあるカフェにも行ってみようというフローです。上の世代が旅行ですることを、Z世代はもっと日常生活レベルでしている、と考えるとイメージしやすいかもしれません」

SDGsではジェンダー不平等に関心が高い

Z世代は環境問題など社会意識が高いとよく言われるが、それは本当だろうか?

「実際にインタビューをしていても、それは感じますね。東日本大震災が合って、リーマンショックが合って、災害などを通して気候変動を実感して、学校教育でもSDGsを学んでいるので、ごく自然にそういったことに関心を持つのだと思います。消費においても、どれだけ地球に環境を負荷をかけているのか、などまで考えていると思います」

SDGsでは、男女問わず、ジェンダー平等に特に関心を持つ人が多いと続ける。

LGBTQ+と、ジェンダーの不平等や差別に対して身近かつ解決したいと感じている人が多くみられます。​​『女子力高いという言葉がよく分からない』『自分が着たい洋服・メイクをしていたりすると、男の子ウケにはこっちの方が良いよ、と言われ疑問に感じた』など、親や周りが言っていることに違和感を持つという声もありました」

日本のジェンダー・ギャップ指数は先進国で最低レベルのままだが、Z世代とよく関わっている石川さんは希望を感じていると話す。

「ジェンダー平等に対する意識のアップデートは確実にできていると思いますね。それを彼らがどうアクションに移して行くのか、楽しみです!」

世界観やオタ活がキーワードのメリハリ消費

若い世代はお金を使わなくなったといわれるが、その点に関しては、消費の仕方が変わっただけだと思う、と石川さん。

「みんなであのブランドのバッグを持とう、豪華な車を買おう、パリに行こうとかではなく、自分の世界観に合うものにたくさんお金を使おうというのがZ世代。韓国のアイドルが大好きな人は、グッズを買うのにもコンサート代にもソウルに遊びに行くのにもお金を注ぎ込みます」

世界観というのはZ世代で大きなキーワードのようだ。

「以前は電話番号やLINEを連絡先として交換していましたが、今はまずInstagramでつながるのが主流。そこで投稿しているものやテイストを見て、『この子とは世界観が合うな』って確かめて、だんだん親しくなっていくのです。たくさんの友達を作るというより、自分の世界観を理解してくれるすごく気心の知れた子たちと、比較的狭いコミュニティの中で生きていく傾向が強いですね。だから自分が所属するコミュニティもアカウントも複数持っているし、人間関係を作るうえで自分がハマっているものをアピールするのは非常に大切なんです」

趣味の分野をオタク的に極める「オタ活」という言葉を聞いたことがあるだろう。ここでのオタクは、一昔前の秋葉原でアイドルを追いかける人たち、とは意味合いが異なる。活動の対象はアニメ・漫画から、日本のアイドル、インフルエンサー、音楽バンドと幅広く、もっと当たり前のものだ。若者マーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab」の調査では、15~24歳​​の女性525名のうち、約8割以上​​が「推しがいる、オタ活をしている」と答えている。

SNSで認められることや世界観の一致が大切で、なるべく失敗はしたくない……。Z世代の頭のなか、少しは見えてきただろうか。後半では、職場などで彼らとどのようにコミュニケーションを取るのがいいのか、引き続き石川さんに指南いただく。

話を聞いたのは……
石川あゆみ
SHIBUYA109エンタテイメント 代表取締役社長。通信事業者、出版系IT企業を経て、東急株式会社に入社。2021年より現職。SHIBUYA109のターゲットであるaround20(15歳~24歳)に特化した若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」を通じ、Z世代の生の情報に精通している。

Photos: Getty Images Text:Kyoko Takahashi  Editor:Kyoko Muramatsu