2、3月に実施されたAW2022のファッションウィークからクリップしたビューティーの最新トレンドをここで総まとめしよう。ひと言で表すなら今シーズンのランウェイは、カタルシス的な変化と現実逃避のインスピレーションに溢れていたと言えるのではないだろうか。例えば、ケンダル・ジェンナーがカッパーレッドに髪を染めたり、イザベリ・フォンタナの90年代のスーパーモデル、リンダ・エヴァンジェリスタにインスパイアされたフレッシュなショートにカットがお目見えするなどヘアスタイルを大胆に変えるモデルが続出した。
ビッグチェンジという点において、髪以外に挙げられるのが眉毛だ。ヴェルサーチ(VERSACE)やバーバリー(BURBELLY)では、ブリーチしたアイブロウが大々的に復活。メイクアップの色使いとしては、エッジの効いたパステルカラーや深いミッドナイトカラーなど、衝撃的なカラーステートメントが数多く見られ、また、メタリックアイシャドウやクラシックと思われる艶レッドリップも新たな装いで個性的スタイルとして打ち出された。バーバリーやシモーン・ロシャ(SIMONE ROCHA)のきらめくクリスタルジュエリーを肌に貼り付けた装飾も特筆。見る人を異世界のファンタジーに誘うような、まるでアート作品のような完成度だった。ヘアも無視できない存在感を放った。彫刻的なフォルムに思わず見惚れるような三つ編みや、ジェリーな光沢のスリックバックなどが挙げられる。ここからはそのひとつひとつを振り返っていこう。
1. イメージを大胆に変えるなら、ヘアスタイルに革新を。
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NYコレクションを皮切りに、ヘアスタイルの大胆なチェンジが封を切った。まずブラジル人スーパーモデルのイザベリ・フォンタナが、マイケル・コースのショーために豊かなウェーブのロングヘアをバッサリカットし、エッジィなショートヘアに変身。このルックは90年代に一世を風靡したレジェンドモデル、リンダ・エヴァンジェリスタにオマージュを捧げたものなのだそう。またプラダ(PRADA)では、ケンダル・ジェンナーがカラーリストのマット・リズとジェナ・ペリーの手によってリアライズされたレッドヘアをキャットウォークで披露した。続いて、ジジ・ハディッドが腰まであるスーパーロングの髪と合わせて眉毛もハイトーンにブリーチ。インパクトのある変化を見せつけた。
2.ハイトーンな眉で非現実的な世界観に誘う。
グッチ(GUCCI)では、ビューティーラインのグローバル・メイクアップ・コンサルタント、トーマス・ド・クルイヴァーがコバルトブルーのラインストーンやグリーンのホイルで目もとを囲んだメイクを披露。ブロンズやパープルのメタリックカラーを幅広に入れたアンブッシュも注目株だ。サトルな感じのメタリックを楽しみたいなら、メイクアップ・アーティストのピーター・フィリップスがシルバーを目頭にひと塗りしたディオール(DIOR)を参考に。シャイニーなアクセントでは秋冬のメイクポイントになること確実だ。
4. ブレイズが織りなすアートな世界。
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今シーズンの三つ編みスタイルはとてもドラマティック。シモーン・ロシャを手がけた著名ヘア・スタイリストのHarveyは、スキャパレリ (SCHIAPARELLI)のバックステージでもかなりの存在感あるデザインをを披露。あるモデルは頭の中央を走る鋭いトゲがアクセントになったモヒカンを思わせる美しいコーンロウのアップスタイルで、パンキッシュに。ブレイズヘアといえば、ディオールも見逃せない。ヘアスタイリストのグイド・パラオは、ルネッサンス時代風の編み込みをアップデートし、ヘッドバンドのように仕立てて“宇宙戦士”的なニュアンスを表現していた。
5. 顔に貼り付けたジュエルストーンで、アクセに負けないインパクトを。
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シモーン・ロシャで見られた、パールとクリスタルでモデルの目もとを包み込むメイクは、幻想的なアイルランドの民間伝承へのオマージュを捧げたもの。パリのファッションウィークを締めくくったジバンシィ(GIVENCHY)においては、だまし絵のようなフェイスピアスや、額にあしらったメタルジェムストーンが登場した。ロンドン発、バーバリーのクリスタルジュエリーの装飾もインパクト大。ロゴを組み込んだラインストーンアートで顔全体が埋め尽くされていた。
6. フレッシュでポップ。新しい赤リップのステイトメント。
赤い口紅は時代を超えて愛され続けるアイコン。だからこそ、いかに個性を加えるかがレッドリップメイクを成功させる鍵となっている。NYからは、カイトKHAITとトリー バーチ(TORY BURCH)が深みのあるクールな色調のリップを披露。より抽象的でぼやけた色合いが、ボヘミアンな雰囲気を醸し出していたマルニ(MARNI)や、鮮やかなコーラルレッドのカラーに半透明のグロスを重ね、艶やかなエフェクトでモダニティを演出していたミュウミュウ(MIU MIU)なども参考に。
7. 単色のブライトカラーで潔く目元を飾る。
今シーズンは、さまざまなカラーが目元を彩った。NYコレからは、ガブリエラ・ハーストがぼかしこんだ色とりどりのパステルカラーを披露。メイクアップ・アーティストのファラ・ホミディがマリアム・ナッシアー・ザデー(MARYAM NASSIR ZADEH)にて採用したトープ、アシッドイエロー、ムーンパープルのくすみカラーも視線を惹きつけた。
一方で、パリはもっと鮮やか。ヴァレンティノ(VALENTINO)のフューシャピンクのウィングアイや、サンローラン(YVES SAINT LAURENT)で見られたバイオレットや画家イヴ・クラインのサファイヤブルーのような超高彩度のジュエルトーンが主流だった。
8. 水滴が滴るような、スリークなウェットヘア。
湿度の高い、ウェッティなヘアスタイルは、ピーター ドゥ(PETER DO)の“プールから上がりたて”のスリークバックが皮切りに。前髪をランダムにおでこに流したアルチュザラ(ALTUZARRA)のルックはスタイリストのジェームス・ペシスが手掛けたもの。フェンディ( FENDI)においては、ヘア界のレジェンド、グイド・パラウが艶やかなウェットヘアを提案。「軽くて簡単、でもマスキュリンな感じにしてほしい」というデザイナーからのリクエストを受け、深いサイドパートを施した。ジャンバティスタ ヴァリ(GIAMBATTISTA VALLI)のジェリーライクな濡れ艶も新しい。手がてたヘアスタイリストのシンディア・ハーヴィー曰く「ウェットにと言われたので、“水浸し”にしました」。
9. ダークファンタジーな雰囲気を纏って。
NYダウンタウンのナイトライフシーンからインスピレーションを得たのかのような、“夜行性”アシッドブラックのアイメイクを提案したのは、エコーズラッタエコーズ(ECKHAUS LATTA)。ヴァケラ(VAQUERA)のミッドナイトプラムな色使いやグッチ、ブルマリン(BLUMARINE) のインキーなオニキスリップといったムーディな黒リップも今シーズンの見逃せないビッグトレンドだ。
Text: Lauren Valenti Adaptation: Rieko Kosai
from VOGUE.COM