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夢を現実に変え続けるスーパーグループ、BLACKPINKのパワーの秘密。

世界中にファンを広げ、レディー・ガガとコラボ曲を発表し、YouTubeでのヒット曲のMV視聴回数12億回を超える韓国発のガールズグループ、BLACKPINK。個性あふれる4人のカリズマティックなメンバーからなるドリームチームの魅力に迫る。
BLACKPINK──夢を現実に変え続けるスーパーグループのパワー。

BLACKPINKが踊り出すのに最も有効な方法がある。そっと近づいてセクシーな雰囲気の音楽を流すこと。セレーナ・ゴメスやショーン・キングストン、あるいはキャシーの音楽が効果的だ。いきなり大音量で鳴り響かせてもかまわない。写真を撮りながら、靴を履きながら、将来に対するまじめな話をしながら、なにをしているときでも、していたことを止めて体を揺らし始めるBLACKPINKを見ることができる。その場にメンバーが2人以上いれば、R&Bのジャンルがコミカルに変わることもある。撮影現場で12時間、BLACKPINKを観察して導き出された結論だ。ジェニーも認めている。(彼女の母いわく)子どものころから、どこからか音楽が流れてくると踊り出したそうだ。

ピンク色のトルネード、その世界的威力。

〈ジェニー〉メンバーそれぞれのエネルギーが結合することで、BLACKPINKの調和が完成されるのだと思う。

五大陸・六大州に不足しているフィーリングを伝えるべく地上に舞い降りたかのようなBLACKPINKは、世界の音楽シーンの中心を韓国へシフトさせているピンク色のトルネードのようだ。ヒップホップをベースにしたデビュー曲「WHISTLE」、「BOOMBAYAH」を発表した後の「PLAYING WITH FIRE」、「AS IF IT'S YOUR LAST」、「DDU-DU DDU-DU」、「Kill This Love」まで、“BLACKPINKのポップミュージック”という言葉でしか表現し得ない音楽を発表してきた。BLACKPINKが特別なのは各自が際立っているが、BLACKPINKとして調和しているという点にある。メインボーカル、ラッパーなどの担当はあるものの、どのパートにも偏っていない。隙のないスタイリングで武装し、SWAG(クールなスタイル)を伝えるBLACKPINKの音楽は、ポップミュージックの肯定的な効果を生み出す。心拍数を軽やかに高めてくれる、活発なエネルギーがほとばしる。デビュー5年目。BLACKPINKは、「DDU-DU DDUDU」のミュージックビデオのYouTube再生回数1,045,989,715回(8月下旬現在では12億回超え)が示すように、後ろから一つずつ数えることでようやく数字を確かめることができる記録製造者となった。本人たちもこのような桁数の多さに驚いている。数字を見たジスは「ワー!」、リサは「アメージング!」と反応した。

K-POPにエンターテインメント会社の専門的なシステムが作動しているのは事実だが、BLACKPINKのカラーを作り出しているのはやはりメンバーたちだ。ジスには中心を担う凛とした歌声がある。ジェニーには目が離せなくなるSWAGがある。フォークを聴いて育ったというロゼには感性を刺激するボーカルがある。ダンスチームをやっていたほどダンスが好きなリサもいる。しかし、単純にその集合体がBLACKPINKというわけではない。ジェニーはこう切り出した。「私たちは自分の役割を全うできるように全力で取り組んでいます。このメンバーがボーカルを補って、このメンバーがダンスを補う、ということではないんです。それぞれのエネルギーが結合することで、BLACKPINKの調和が完成されるのだと思います」

〈ジス〉信頼できる頼もしい仲間と一緒にいるという実感があって、自信が湧いてきます。

練習生時代にさまざまなジャンルをトレーニングしてきたジスは、どんなジャンルであってもBLACKPINKのカラーで表現されることを望んでいる。「BLACKPINKが表現することでこんなふうに変わるんだ、というのを見せたいと思っています。私たちならではのカラーに仕上げていくことにも面白みを見出しています」。“一度も見たことがない人はいても、一度しか見たことがない人はいない”と言われるほど吸引力のあるステージで知られるが、その評価に対してジスはこう語った。「“カッコいい”」と思って見始めて、見ているうちに“え!? これはもっとカッコいい”と思ってもらえたらうれしいですね。最初から最後まで一つも見逃したくないと、誰もが思ってくれるようなステージを作りたいです」

BLACKPINKは年内のカムバックを目標に作業中だ。外部からの刺激を一切シャットアウトした状態で作業に没頭している(6月26日に待望のニューシングル「How You Like That」がリリースされ、ビルボードトップチャート入りを果たした)。「やってみたかったことにすべてチャレンジできるのがアルバム作りの時間です。それぞれが持ち寄ったアイデアをもとに全体的な画を作り上げていきます。ミュージックビデオの各シーンには全員の意見がすべて盛り込まれています。例えば、“こんな映画を観たのだけど、こんなシーンを演じてみたい”というふうに意見を出しながら進めていくんです」とジスは言う。一方、ジェニーにとって最も楽しくもあり、熾烈でもある過程はヴィジュアル作業だ。「音楽作業がある程度完成すると、ミュージックビデオに関する打ち合わせをします。そのとき、歌の明確なカラーが決まるんです。抜かりなく、納得がいくまで繊細に作業します。その時間は最も頭を使いますね」

ファッションとヴィジュアルに対する徹底的なこだわり。

〈リサ〉二度と戻ってこない今日を思い切りチャレンジして楽しく生きよう、と私も思うんです。

ヴィジュアルディレクターであり、今回の撮影はもちろん、G-DRAGONからBLACKPINKまでスーパーミュージシャンたちのスタイリングを手がけてきたスタイリストのジウンも証言する。「ミュージックビデオの作業をするときは、各メンバーが自ら表現したいイメージに対して徹底して悩んできます。私はそのイメージを衣装で表す部分をサポートするだけです。自分が登場するシーンに対する彼女たちの責任感を感じます」

ヴィジュアルに対するメンバーたちのこだわりは自然にファッションへと繋がっている。実のところ、BLACKPINKの音楽の特別な要素はファッションだ。単にハイファッションをステージ衣装としてスタイリングしたり、グラビア撮影をしたり、私服で表現されるだけにとどまらない。BLACKPINKは自分たちの音楽を幻想的に見せられるファッションを選択してきた。“ファッションは自己表現の一つである”というあるデザイナーの言葉のように、ファッションと音楽で自分たちを表してきた。それは新しさを喚起させ、共感を呼び起こし、羨望の対象となり得るものであった。新しさを楽しむ姿勢は、BLACKPINKがハイファッションブランドに愛される理由でもある。ジェーン・バーキンエルメスジェニファー・ロペスヴェルサーチェの関係がそうであったように、メンバーたちにもインスピレーションを与え合うブランドがある。「適度な新しさと適度な私自身のカラーをミックスして、誰が見ても真似したくなるスタイルを持つのが理想です」。シャネルのショーに常に招待されているジェニーが語った言葉だ。「子どものころからオシャレが大好きでした。仕事をしながらファッションに関わることができて、とてもうれしいです。分野は違いますが、音楽とファッションは繋がっていると感じるんです」

スタイリングに関するメンバーたちのアイデアは、協力関係によって高められていく。お互いに似合うものをすすめ、鼓舞する。「リサにはよく“リサにしかできないものにトライしてみて”とアドバイスしています。リサのスタイリングについて話していると、次から次へとアイデアが出てくるんです。リサにしかできないスタイリングがあると思うからです。その甲斐あって、リサは新しいチャレンジをすることが多いのですが、本当に素敵だと思います」とジス。「“私たちのグループにはこんなメンバーがいるんです”と胸を張れるのは本当にうれしいことです」

去年、ロゼは“人生の一着”とも呼べる理想的なドレスと出会った。「(昨年4月に開催された)コーチェラ・フェスティバルでそのドレスを着たのですが、体にとてもよくなじんで着心地が最高でした。おかげでとてもリラックスして公演を終えることができたんです。風にもきれいに吹かれていました。私たちにとって衣装は本当に重要なものです。衣装のシルエットやフィット感が動作にインスピレーションをもたらし、ステージの上での自信も与えてくれるからです」

深い信頼で結ばれた4人の関係性が育むもの。

〈ロゼ〉私たちにとって衣装は本当に重要なものです。ステージで自信も与えてくれるから。

昨年1年間、BLACKPINKは海外ツアーに集中した。アジアからスタートしてロサンゼルスなど米国、次いでアムステルダム、ロンドン、パリなどヨーロッパを経てシドニーまで、世界一周のように大都市を巡回した。1年の時間は旅行であり、発展であり、証明だった。「体力は確実にアップしました」。ジスが笑いながら言う。「デビュー初期のことがいろいろ思い出されました。以前はステージで緊張のあまり、体のあちこちに力が入っていたんです。ライブを重ねるごとに余裕が生まれてファンの皆さんと楽しめるようになったので、ツアーの後半になるほど、さらに楽しむことができました」。北米ツアーの29位にランクインするなど、チケットのソールドアウトが続いた。コーチェラ・フェスティバルのステージはBLACKPINKにとって飛躍のチャンスとなった。「以前からコーチェラ・フェスティバルには本当にずっと行ってみたいと思っていました。雰囲気が最高だからです。普段は作り込まれた空間で、作り込まれた形でパフォーマンスすることが多いのですが、コーチェラは本当に自由でした。まさにアドレナリン全開の状態だったんです! 新しい友達にも出会えましたし、多くの刺激を受けました」

ロゼにとってコーチェラは最も強烈な記憶となっている。「ステージに上がったとき、目の前に練習生のころから今まで過ごしてきた時間がパノラマのように通り過ぎていったんです」。BLACKPINKはコーチェラ・フェスティバルのステージで原曲のまま、韓国語で1時間30分間公演を行った。「私たちのことを知らない方もいたと思います。友達がライブを見に来ていたのですが、隣にいる人が“BLACKPINK って誰?”と言いながらノリノリで楽しんでいたそうです。音楽とステージが通じたような気がして、本当にうれしかったです」。その瞬間を振り返るリサの表情がさらに明るくなった。「ステージに上がるたびに境界がなくなっていくような感じがするんです。コンサートに来られる方々は皆さん、年齢も国籍も違います。私たちの音楽とパフォーマンスを見るために多様な方々が会場に来て応援してくださるので、みんなで一つになれたような感覚でした」。ジスもやはりコーチェラの瞬間を鮮明に記憶していた。

撮影のセットとして作り上げられたピンク色の雷が鳴り、青いカスミソウが咲き乱れる夢の世界で、メンバーたちはカメラを手に歩きながら、あちこちで写真を撮っていた。可憐な小さな小鳥のさえずりように、絶えず笑い声が響いていた。「メンバーたちの価値観が面白いんです。特にジスお姉さんはいつもふざけたりギャグを言ったりするので、本当に面白いんですよ」と、リサが青いカスミソウよりもさらに明るい笑顔で話した。「海外ツアーの間は、メンバーと一緒にたくさんの時間を過ごせたのがよかったです。4人で遊んでいると最高に楽しいんです。4人でステージに上がると本当に心強いですね。信頼できる頼もしい仲間と一緒にいるという実感があって、自信が湧いてきます」。ジスの顔に満足げな表情が浮かんだ。撮影現場でも見せてくれたように、BLACKPINKは写真を撮って過ごすのが最も好きな時間だという。「美味しいお店巡りが好きですね。それから、“これ流行っているんだって!”と誰かが言うと、みんなでそれをチェックしに行ってみたりします」。リサの大きな瞳がさらに大きくなった。

想像していたことを現実に変えていく4人の未来。

ツイッターにはBLACKPINK語録のアカウントがある。“信念のあるインタビュー”と呼ばれる、心に響く言葉の数々が連なっている。夢に向かって歩むこと、やりたいことをやり続けること、時代はそんな努力を流行遅れの価値観として扱いがちだが、BLACKPINKのインタビューを読んでいると、彼女たちの現在の成功が、方向性なくして一朝一夕に成し遂げられるものはないということが伝わってくる。全世界から注がれる関心の大きさをメンバーたちもよくわかっている。誰かにとって、BLACKPINKは“ある可能性”なのかもしれない。「昨年、海外ツアーをまわりながら、いろいろな新しい経験をすることができました。想像していたことが現実になったんです。とてつもなく高い階段を上がりました。こんなふうに楽しみながら、素敵にやり遂げられるということをお見せできるのはうれしいですね。これからも弛まず想像を現実に変えていきたいです。そして、音楽を通じて、素敵なステージで多くの方々にお会いしたいです」。何事に対してもはっきりしているジェニーが、やはり明確な意見を述べた。

「メンバー同士で“自信を持とう。私たちにはお互いがいるのだから、やりたいことをしながら生きていこう”という話をよくします。私たちのことを見ているファンの皆さんにも自信を持って、堂々と生きてほしいです。私は小さいころから両親に“自分が本当にしたいことをしなさい”と言われて育ちました。こうするべきだということは言わずに、私が自分で判断して決められるようにしてくれたんです。これからも自分で物事を決めて生きていきたいです」。これはミレニアル世代の特権を満喫しているジスの言葉だ。ロゼは、「歌手としては音楽が最優先ですが、人間としての共感や癒しも大事にして届けていきたいです」と力強く語った。すると、「最近、チェヨン(ロゼ)が“今日という日は二度と戻ってこないから、思い切りチャレンジして楽しく生きよう”、と言ったんです。私もその意見に同意しました」とリサがそばで言葉を添えた。

BLACKPINKを撮影するためニューヨークからソウルに来た写真家のペトラ・コリンズは、幅広い女性を提示すべく、少女たちを主体的な眼差しで記録してきた。BLACKPINKはペトラ・コリンズの写真をSNSで見たと言う。エモーショナルでとても良かったとつけ加えた。

自分は少女だと思うかという質問に、ジェニーはこう答えた。「私はまだ少女だと思っています。少女らしいものが好きですし、ここから抜け出したいとも思いません。少女らしさを保ち続けたいですね」。とはいえ、依存的でか弱い少女は“夢の園”にはいなかった。ペトラ・コリンズのレンズに映し出されたBLACKPINKのメンバーたちは皆、自由で正直だった。彼女たちの“今日”は写真となり、SNSに記録された。もうじき1回のタッチで、瞬時に全世界へと広がっていくだろう。

Profile
BLACKPINK/ブラックピンク
2016年8月に韓国でデビュー。翌17年7月に日本武道館でデビューショーケースを行い、20万件以上の申し込みが殺到し話題に。18年には米大手レーベル・インタースコープと契約し、本格的に米国進出を果たす。19年にはワールドツアーを開催、世界各地にファンを広げ、20年4月現在のMV総再生回数は42億回以上を記録。レディー・ガガとのコラボ曲も話題に。6月26日には待望の最新シングル「How You Like That」がリリースされた。

Photos: Petra Collins Stylist: Gee Eun Fashion Editors: Kihoh Shon, Hyunji Nam Text: Sohyun Cho