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B.ライヴリーも A.カッチャーも。児童性的虐待撲滅を訴えるセレブのスピーチ。

セレブたちが芸能活動を引退してでも続けたいと訴えるのが、児童性的虐待撲滅の運動だ。米『Variety』誌の授賞式では、ブレイク・ライブリーがあふれる涙をこらえながらスピーチを行った。彼らの言葉から見える、その深刻な状況とは。

「#MeToo」ムーブメントでかき消されてしまった児童性的虐待の現状。

『Variety』誌の「パワー・オブ・ウーマン(Power of Women)」での授賞式に出席したブレイク・ライブリー。Photo: Presley Ann/Patrick McMullan via Getty Images

2017年10月に起こったハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ・性的暴行疑惑に対する糾弾に始まった「#MeToo」ムーブメントでかき消されてしまった感はあるが、ハリウッドのセレブたちが積極的に喚起し撲滅を訴えているのが、児童性的虐待だ。児童性的虐待は世界的な問題であり、18歳未満の少年少女への性的搾取や人身売買・取引、児童ポルノ違法ファイルの交換シェア、性的虐待を目的とした世界各地へのツアーなど、あらゆる手段を使って児童が虐待を受け、深刻な問題になっている。

今から一年ほど前の2017年4月には、米『Variety』誌の「パワー・オブ・ウーマン(Power of Women)」での授賞式イベントの会場で、児童性的虐待を反対する啓蒙活動が認められて栄誉賞を与えられたブレイク・ライブリー。夫ライアン・レイノルズの妻で2児の母であるブレイクが涙ぐみ言葉を詰まらせながらスピーチし、話題と感動を呼んだ。

2011年、「性的虐待撲滅」イベントに出席したアシュトン・カッチャーデミ・ムーア。Photo: Getty Images

これに先駆けること2年前の2015年にはTV番組CNNで、「Children for Sale: The Fight to End Human Trafficking (商品化された子どもたち:人身売買撲滅への闘い)」という特番が放送された。自らも二人のティーンエイジャーを持ち、ウィル・スミスの妻である女優ジェイダ・ピンキット・スミスがこの撲滅運動に賛同。被害者と犯罪グループの関係者への対面インタビューを含めた番組ナビゲーターを務めている。

さらに今年2月に俳優アシュトン・カッチャーは、米議会の外交委員会の公聴会に出席し、児童虐待の防止の成果報告と、米議会への働きかけをした。元々デジタルテクノロジー会社の経営をしているアシュトンは、デミ・ムーアと結婚していた頃、共同で「THORN」という非営利団体を設立。この活動の中でビジネスネットワークやテクノロジーを駆使して児童の性的虐待撲滅を阻止する支援を行っている。「THORN」の下で、昨年は6000人の児童人身売買の被害者の救済にあたったという。

■ブレイク・ライブリー 「実際に被害を訴える子供は、10%に過ぎません」

『Variety』誌の「パワー・オブ・ウーマン(Power of Women)」での授賞式でスピーチをするブレイク・ライブリー。Photo: Shutterstock/AFLO

ブレイク・ライヴリーが『Variety』誌の「パワー・オブ・ウーマン(Power of Women)」での授賞式でスピーチをした時の一部を紹介しよう。

「私は、自分の子供のために今すぐにだって芸能活動を引退したっていいと思っています。子供の人生を考えた時、全ての子供たちの人生がかけがえのないものだと思うのです。

自分が母親になるまで、児童ポルノが何かということをよく分かっていませんでした。こういった画像や動画は、インターネットの普及でどんどんと過激になっています。なかには乳幼児を扱ったものもあります。乳幼児ですよ。

取締官からへその緒がついたままの赤ちゃんもいる、と聞きました。子供たちへの性的虐待、拘束、拷問は日常的に行われ、精神的にも肉体的にも傷つけられているんです」

「虐待者は、医師やコーチなど本来なら子供たちを守る立場の大人たちであることも珍しくありません。身近なところにいるんです。実際に被害を訴える子供は、10%に過ぎません。

世界中で1日に3000万から、5000万のファイルがシェアされています。もし誰かがシェアしていると知ったら、すぐに通報してください。児童ポルノは重罪です。虐待者は、平均して一人当たり50〜100人の子供を虐待するんです。そして閲覧している人間の55%〜95%が、実際の虐待者であり性犯罪者になるのです。今すぐ撲滅しなければなりません」
このブレイクのスピーチに大きな拍手が巻き起こったことは言うまでもない。

■アシュトン・カッチャーの運動に『アナと雪の女王』のアナ役、クリスティン・ベルもSNSで賛同。

米議会の外交委員会の公聴会で、スピーチをしたアシュトン・カッチャー。Photo: Paul Morigi/WireImage

アシュトン・カッチャーが米議会の外交委員会の公聴会で行ったスピーチは、以下だ。

「テクノロジーの開発には莫大な費用がかかるのです。ある日、僕の会社に国土安全保障省から連絡がありました。7歳の少女が性的暴行を受けてダークウェブ上で公開されている。このオーナーを探し出したい。あなたのところにはこれを発見できるツールはあるか、と。

彼女は3年もの間、性的虐待をダークウェブ上で受け続けていたんです。しかし僕たちの答えは“ノー”でした。それから3ヶ月の間、その少女がレイプされ続けているのかと思うと、悔しくて辛くて眠れない日が続きました。でも遂にツールを開発することができたのです。この仕事はむしろ僕の本職なんです。これからも本気で続けます」

アシュトンが胸につける赤いXのバッジは、児童のみならず成人男女も含めて強制労働・性的搾取の奴隷になっていて、その数は4500万人に上るという状態を撲滅する運動「END IT Movement(撲滅運動)」のマーク。グラミー賞受賞歌手キャリー・アンダーウッドや、映画『アナと雪の女王』(13)のアナ役で知られるクリスティン・ベルもSNSで啓蒙している。

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■ジェイダ・ピンケット・スミス 「私が何も知らなかったことに愕然とした」

人身売買・人身取引撲滅のイベントに参加したウィル・スミスの妻ジェイダ・ピンケット・スミスと娘ウィロー・スミス。Photo: Jerod Harris/WireImage

ウィル・スミスの妻ジェイダ・ピンケット・スミスも、人身売買撲滅のイベントの際に声を上げた。

「娘のウィローが11歳の時、『ママ、アメリカで私と同い年の女の子が売春して生活しているって本当?』って聞いてきたわ。私は『そんなのあるわけないわよ』と答えた。でもネットで調べたら、それは本当だった。私が何も知らなかったことに愕然とした」

ジェイダが取材し出演した番組で、アメリカ国内の児童性的虐待の実態が赤裸々に。アメリカの法律では、18歳未満の少年少女による性的搾取は全て「人身売買・人身取引」として扱われる。

■アヴィーチー 『For A Better Day』のPV に込められた想いとは!?

Photo: Rich Polk/Getty Images for Rolling Stone

2015年9月にリリースされたシングル『For A Better Day』のPVは、アヴィーチー自らが初の共同監督としてクレジットされた作品でもある。難民が多く人身売買の温床の一つともなっているハンガリーで撮影されたビデオでは、児童性的虐待目的の人身売買から逃れた二人が、数年後に金持ちで権力者である虐待者たちに“復讐”を遂げるというもの。最後の烙印はPedphile(小児性愛者)と書かれ、美しい映像と衝撃的な展開の中にアヴィーチーの静かな怒りに満ちたメッセージが溢れている。