エンジェルになるということ。
ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)の壮大なランウェイは、トップモデルにとっても、その後のキャリアを左右する重要なイベントだ。彼女たちにしてみれば、自らの「ウィング」を獲得することは、ただランウェイを歩くのとはまったく次元の異なる目標だからだ。新人だけでなく、目標を果たせぬまま去っていく名だたるスーパーモデルもいる厳しい世界において、エンジェルたちにとっての最大の名誉は、羽で飾られたウィングを「繰り返し」身に纏うことなのだ。
約20年間にわたってヴィクシー・エンジェルを務めてきたアドリアナ・リマが、ついに引退を発表した。今回のラストショーでは白のルックに身を包み、感無量の表情でフィナーレの前のトリを飾って皆を感動させた。
昨年は、リマと同じく長きにわたってヴィクシーで活躍していたアレッサンドラ・アンブロジオが引退。エンジェルになると、ショーが終わってからも世界を飛び回り、ブランドを代表するモデルとして多忙を極める。ショーのオープニングやクロージングを飾るチャンスにも恵まれ、さらには、非常に貴重で高価な「ファンタジーブラ」を身に着けられる可能性も。「ファンタジーブラ」が初めて制作された2014年には、リマとアンブロジオが、それぞれルビーやダイヤモンドで彩られた1点200万ドル(約2億2千万円)のピースを纏った。
ベテランたちにとってのヴィクシー。
一度はショーから姿を消したものの、再び舞台にカムバックしたベテラン・エンジェルもいる。 2007年から出演していたベハティ・プリンスルーは、妊娠を機に最近のショーを2度欠席したが、今年遂に復帰する。アドリアナ・リマも、2009年に妊娠した際、1年間休業した。11回ものショーに出演し、2016年に第1子出産のため休業していたキャンディス・スワンポールは、その後、無事復帰を果たしている。
2009年のデビューから連続出演していたリリー・オルドリッジは、第2子妊娠中のため今年のショーは欠席。一方、 2000年にヴィクシーデビューを果たしたカロリナ・クルコヴァは、長男の誕生から1年後の2010年に、新しい活躍の場を求めて完全に卒業した。
新人とベテラン、それぞれにとって大きな意味を持つヴィクトリアズ・シークレットのショー。アドリアナ・リマはじめ、モデルたちの思いが、今年のショーにも込められていた。
Photos: Getty Images Text: Ellen Burney