使われなくなったものに手を加え、新たな価値として循環させるアップサイクルは、環境問題に高い関心を持つ若手デザイナーを中心に広がりつつある。古いテーブルクロスや掛け布団などアンティークのテキスタイルから服作りに取り組むボーディ(BODE)のエミリー・アダムス・ボーディは、その動きをけん引する一人だ。
ジョージア州アトランタで生まれ育った彼女は、現在30歳。幼い頃から関係を築いてきたアンティークディーラーとのネットワークを通じ、世界中から集めた古布を使って、クラシックなアメリカンウェアを再現している。パーソンズ美術大学でメンズウェアのデザインを学んだ後、いくつかのブランドで経験を積み、2016年に自身のブランドを設立。以前の職場で目の当たりにした服の大量廃棄に衝撃を受け、アンティークのテキスタイルを使用した一点物で服作りをスタートさせた。
ブランド設立から約4年経った現在も、アンティークのテキスタイルの使用は全体の40%以上を占める。新しい生地に関しては、ザ・ウールマーク・カンパニーの協力を得て、トレーサビリティの認証を得た持続可能な糸からできた生地を使用。さらに、ダウンタウンのアトリエで働くアーティストらによる刺繍やアップリケ、ペインティングなどハンドメイドの作法を加えることで、類を見ない特別な作品へと昇華させている。
また、生産コスト削減のために国外生産を行うブランドが多いなか、ほぼ全てのアイテムが「Made in NY」だ。一着一着がローカルの熟練したテイラーたちの手で丁寧にカットされている。失われつつある職人技術を守っているだけでなく、サンプル発注・修正に敏速に対応でき、輸送費を省くことができるのもローカル生産の利点だ。
ボーディが考えるサステナブルなデザインとは、服や手仕事の歴史を守り、今あるものに新しい命を与えること。たとえ環境に優しい生地と謳っても、売れない服を過剰生産しているのでは環境に優しいとは言い難い。
そのため、昨年末にマンハッタンのチャイナタウンに小さなブティックをオープンし、ビスポークの服を販売している。多くの人が袖を通せるように20ものサイズレンジを扱い、ユニセックスで着用することも可能だ。スタイルアイコンと称されるハリー・スタイルズも、オンオフともにボーディのアイテムを愛用し話題を集めている。
アップサイクルのアイテムは大量生産が難しいが、人と被らないハンドメイドの限定品は長く大切に使いたくなる魅力を備えている。ボーディは、唯一無二のデザインとサステナビリティの重要性をこれからも発信していく。
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Photos: Courtesy of Bode Text: Maki Saijo Editor: Mayumi Numao