オーストラリアでは、毎年1.7万トンもの砂がビーチから消えているという。多くのビーチ利用者が気づかないうちに、ブランケットやタオル、水着やサンダルなどに砂を付けたまま持ち帰っていることが原因とされ、その量は平均で1人当たり約170g、手掴みで3回分にも及ぶ。砂は私たちの生活に欠かせない水に次ぐ最も重要な原料だ。コンクリートは当然ながら、ガラス、歯磨き粉、飛行機のエンジン、マイクロチップといったありとあらゆるところに使われており、輸入に頼る国や違法採取が行われるほど、世界的な砂不足に晒されている。
現在、フィリピンの人気ビーチでも同じ現象が起きており、美しい景観が損なわれ始めているという。そんな深刻な砂不足問題を改善させるために誕生したのが、フィリピン生まれのブランド「Lagu(ラグ)」だ。2012年にケンドリック・C・コーによって設立され、世界初の砂が付かないビーチブランケットを中心としたビーチフレンドリーなアイテムを展開している。
オリジナルに開発された素材は、ポリエステルにリネンを織り込んだ特殊リネンで、リネンの混紡によって砂が付かない構造になっている。フィリピンで実用新案権の特許を取得しており、砂が付かない点に加えて、速乾性にも優れ、洗濯機で丸洗いが可能。さらに、軽くて持ち運びに便利と海のレジャーに最適な機能性が揃っているマルチ素材なのだ。
また、アレルゲンの主な原因であるホルムアルデヒドといった化学物質や、アレルギーを引き起こしやすい染料が不使用なので肌にも優しい。
ビーチブランケットには、ブランドと同名の「Lagu(ラグ)」と2019年にリリースされた最新作「Pintados(ピンタドス)」がある。「Lagu」はレッドやグリーン、ブルーなどヴィヴィッドな10色展開で、大小2タイプあり、用途別に何枚も揃えたくなるアイテムだ。
一方の「Pintados」は、フィリピンに生息するイルカやクジラなどのモチーフ、ルソン島、ビサヤ諸島、ミンダナオ島などの島々からインパイアされたデザイン、トロピカルフルーツなど、カラフルで南国らしいデザインが豊富で選ぶのに迷ってしまうほど。コンパクトなサイズ感が魅力で、ヘッドドレスとして纏うことも可能だ。
ラグが開発した特殊リネンは、ビーチブランケット以外にもトートバッグ、サンダル、水着、サンバイザーなどにも使用されており、ビーチグッズとして全アイテム揃えたくなる。
売り上げの一部は、フィリピンの海に生息するザトウクジラをはじめとする海洋生物の保護活動を行う団体「Balyena.org」に寄付され、海の砂を守るだけでなく、海の生き物を救うためにも役立っている。大量のプラスチックによって海が汚されていくのと同時に、地上では砂が奪われている。自然がもたらす天然の資源は永遠ではないことを知り、美しいビーチを自らの手で破壊していることに気づかなくてはならない。
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Photos: Courtesy of Lagu Text: Kana Miyazawa Editor: Mayumi Numao